“いい記事”をストックして未来へ投資。「採用力の底上げ」を担うフィードフォースnoteのコンテンツ力
社内情報を発信しているのに、社外の人も「おもしろそう!」と読みにくる——そんな理想を実現しているのが、株式会社フィードフォース(以下、フィードフォース)が採用広報を目的に運営する公式noteです。
「現職年収に頼らないオファー金額の決め方」、育休中の社員向けお手紙「育休中のみんなへ。ここ1年間のフィードフォースの変化をお知らせします」など斬新な切り口の記事を月に4本というハイペースで更新するのは、運営担当のなべはるさん。同社で採用広報と労務に携わるかたわら、公式note立ち上げ当初から現在まで3年間運営を担当。同社のnoteは今年で4年目を迎えます。
ここでは2022年8月23日に開催された「ミートアップ」の内容をもとに、社内でネタを見つける秘訣や工夫、記事作成において気をつけるポイント、KPI設定に対する考え方などについて紹介します。
ポイントは2つ。
noteは採用力向上のため。「この会社、なんとなく知っている」層を増やすための中長期的な取り組み。
自社を知らない人に興味を持ってもらうには、読者目線が大事。読まれる切り口は、他社と“ズレているところ”を探すとみえてくる。
note開設の経緯などはこちらの記事にまとめています。
併せてごらんください。
noteは支援魔法。中長期的に効いてくる
フィードフォース公式noteの運営目的は「採用力の底上げ」です。底上げである以上「記事を一本書いて応募が増える」といった即効性はありません。即効性を求めるなら、候補者にスカウトメールを書くなどの短期的な施策のほうが効率的でしょう。
採用活動は中長期的なアクションこそが重要になります。なべはるさんによると、ゲームに例えるならnoteは“支援魔法”のようなもの。採用活動の全体にわたって長期的に効いてくるコンテンツ、発信の基となるもの、という位置づけです。
採用力を底上げした先のゴールのひとつは、「応募増」。より正確にいえば「転職潜在層に対する知名度を向上し、将来的な応募につなげること」にあります。
「フィードフォースのnoteやTwitterを見ていて、なんとなく知っているという方が、将来転職を考えたときに応募してくれる……そんな土壌を耕すイメージです」(なべはるさん)
想定する読者層は、転職希望者だけでなく、転職検討前の人々も含んでいます。いまの世の中の雰囲気として、転職希望者が“知らない会社”に応募するときの心理的ハードルがどんどん高くなっているとのこと。そのような背景も、noteによる“支援魔法”を重視する理由となっています。
なお、現在のフィードフォースのnote運用体制は、編集長のなべはるさんとデザイナーさんの2人。いずれも他業務と兼任し、業務時間の約半分をnoteも含めた採用広報に充てています。
社内のおもしろいネタ 発見の秘訣
記事作成には「ネタ集め/企画」→「執筆」→「チェック/公開」という3つのフェーズがあります。まずは「ネタ集め/企画」段階について。フィードフォースさんの、鋭い切り口のバラエティ豊かなネタは、どのように集めているのでしょう?
「最初からこれ! と決めているわけではなくて、フワッとしたネタを思いついたらメモをしておきます。そういうものが数十くらいあるんです」(なべはるさん)
ときには社員との何気ない会話からヒントを得ることも。こうしたネタのストックから、だんだんと内容を具体化していきます。しかしネタ集めには、社内のできごとを記事にできるかどうかの「気づき」や「見極め」が必要になります。
「実は他社さんのnoteを月に50本から100本は読ませていただいています。他社さんのことを知ると、相対的な自社の特徴に気づくんです」。note pro公式の「note proの新しい仲間」(月ごとにnote proを始めた法人を紹介する記事)も、毎月チェックしているそうです。
「自社と他社のズレ」に気づくことはとくに重視しており、記事の企画書に「普通だったらこう」「フィードフォースが異なっているのはここ」という項目を作ってチェックしています。『毎日50件・年間1.4万件の日報を読む社長に、その理由を聞いてみた』の記事もその視点から生まれました。
「社長が毎日、全社員の日報を読んでいるのは当たり前だと思っていたけれど、よく考えたら他社ではまずやってなさそうと気づいて、記事にしました」(なべはるさん)
採用担当者と連携し、「記事にしてほしいネタ」から記事を制作するケースもあります。例えば『現職年収に頼らないオファー金額の決め方』もそのひとつ。これは、採用担当者が候補者にいつも同じ説明をしていたことで記事化にいたりました。記事にしたことで採用面接の効率がグッと向上。また、待遇などの情報をオープンにしたことで、採用候補者に間接的に会社の姿勢を伝える効果もありました。
なお、現在なべはるさんはネタを50本以上ストックしつつ、10本の記事を同時並行で執筆しているとのこと。執筆はなべはるさんだけではなく、業務委託のスタッフ数名にもお願いしています。
執筆のときに意識しているのは、「読者はフィードフォースにまだ興味はない」と念頭におくこと。読者が興味を持てる切り口を見つけて書くことで、フィードフォースに興味のない人にも読んでもらえるよう工夫しています。
「若手社員の失敗、どこまで許せる?取締役に聞いてみました」がいい例です。なべはるさんとしては「うちは失敗に寛容な会社です」ということを“言いたい”。けれどそれではフィードフォースを知らない人には読んでもらえないから「取締役は、社員の失敗をどこまで許せるの?」と、読者が自分ごととして感じられるフックをつけました。
また、「(読者は記事を)熟読はしてくれない」ととらえることも大切です。実は上記の「若手社員の失敗〜」の記事も、取締役からの評価をわかりやすい画像で表現し、そこだけ見てくれれば、斜め読みしても理解できるように作っています。
記事の最終チェックも、基本的にはなべはるさんが行ない、品質をコントロールしています。
「一読者としての視線で読んで、おもしろいと思えるかどうかはこだわっています。書いている途中でボツにすることも」(なべはるさん)
フィードフォースにとってnoteの記事は採用力を高める資産。蓄積していけば資産は増えますが、その中にクオリティの低いものが混じれば、逆に負の資産になってしまう、と考えているそうです。
また、サムネイル作りにもこだわりがあります。実は、カバー画像のデザインは統一感をあえて持たせすぎないようにしているのです。というのも、デザインに統一感を持たせすぎると「前と同じような記事なのかな」「前後の記事を読まないと理解できないのかな」と、読者の読むハードルを上げてしまうから。「noteは普段着」というイメージを意識し、公式っぽくなりすぎないようにもしています。
もちろんタイトルも、フィードフォースを知らない人が見てもクリックしたくなるかを重視。読者がフィードフォースのことを知っている前提のタイトルにならないようにしています。
執筆する上でのポイントは、なべはるさんの個人のnoteでもくわしく解説されています。
Slackでの社内告知にも工夫あり
記事は作ったら終わりではなく、それを届ける行程も大切。届ける先は、社内と社外の2つに分けられます。同社は社内向けの告知も特徴的で、告知するチャンネルの属性に合わせて複数パターンでお知らせしています。「新潟在住デザイナーが東京の会社でフルリモートワークして気づいた、コミュニケーションの大切さ」という記事の例を見てみましょう。
これは、Slack内の3つのチャンネルでシェアされたのですが、そのチャンネルごとに以下のようにメッセージを変えています。
選考中の候補者に対してはメールで記事を案内しています。その際、面接に進んだ方ならこのnote、この職種の方には別のnote、という風に、選考段階や職種によって案内する記事を変えます。そうすることで、フィードフォースへの理解を深めてもらい、選考許諾率や内定許諾率の向上に役立てています。
転職サイトでスカウトメールを送るときに記事を添付するのも効果があるとのこと。この記事内容が気になる方はぜひお声がけください、と案内することで応募のきっかけにもなるそうです。
まだ転職を考えていないような層に対しては、FacebookやTwitterを活用。noteはコンテンツをストックする場所、会社公式Twitterは広範囲の読者に届けるスピーカー、というように役割を分けています。
「いい記事を発信しつづけられている状態」から逆算してKPIを設定
フィードフォースさんは、KPIを「いい記事を発信し続けられているか?」に置いています。転職顕在層の「この会社、知っている」という感覚を醸成し、将来の応募数アップと選考中候補者の志望度を上げるためには「いい記事を発信し続けていく」ことが大事だから。「いい記事」は資産です。
この前提がない状態で数値目標だけ定めても、適切にPDCAを回すことは難しいと、なべはるさんは言います。では、いい記事の指標とは?
「まだ模索中」と前置きしたうえで教えてくれたのは、公開初月のダッシュボードでビューが500、「スキ」の数が30を超えるか、という指標。公開初月の数値だけではなく、過去の発信も記事単位で振り返ります。
「たとえば、Twitterでシェアが多かったので伝わったらしい、とか、逆にビューは伸びたけれどもTwitterではあまりシェアされなかったな、とか。公開初月の勝ち負けの判断はしつつ、良し悪しの振り返りは定性的な情報込みでやっています」(なべはるさん)
このような取り組みを続けてきた結果、社外に対しては、とくに新卒採用での志望度向上に強く寄与しました。
noteでの発信は社内のコミュニケーション活性化にも貢献しています。
リモートワークで社員同士が直接顔を合わせない環境になってから、インタビュー記事がよく読まれるようになりました。また、グループ会社の方には、フィードフォースのスタッフを知るきっかけとなり喜ばれることも。定期的に実施しているnoteについての社内アンケートでは、「インタビュー記事を楽しみにしています」という回答があったそうです。note運営のモチベーションアップにもなる上、社員がいま感じていることを可視化できるので、アンケートはおすすめです。
まとめ
なべはるさんは、自社noteのコンセプトを次のように表現しています。
「フィードフォースの文化を適切に知っていただく場所だと思っています。フィードフォースは控えめで誠実な社風で、僕はそこを好ましく思っているんです。その思いをコンテンツにして発信することで、いい会社だな、と共感してくれる人がきっといる。だから着飾ることはしないで、社内の文化を適切にお伝えできればと考えています」
いい記事を発信し続けるという活動そのものが、フィードフォースの誠実な社風を表していますね。
フィードフォースさんのnote運営において参考になるポイントは次のとおりです。
ポイント
noteは採用力向上のため。「この会社、なんとなく知っている」層を増やすための中長期的な取り組み。
自社を知らない人に興味を持ってもらうには、読者目線が大事。読まれる切り口は、他社と“ズレているところ”を探すとみえてくる。
これだけ深くオウンドメディア運営について考え実行しているなべはるさんの口から出てくるのは「まだまだ試行錯誤」との言葉。オウンドメディア運営の秘訣は、考え続け、行動し続けることなのでは? と考えるきっかけを得られた1時間半となりました。
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