ブランディングで大切なのは、共創の余白のあるメッセージ。より良い「いま」を読者と考えるパナソニックのソウゾウ(想像+創造)するnote
2020年11月に開設されたパナソニックの公式note「パナソニック_ソウゾウノート」。パナソニックが手掛けるショールーム「パナソニックセンター東京」の関連情報を紹介したり、オンライン上での新しい情報発信プラットフォームとして開設され、数ヶ月ですでに1万6000人のフォロワー数(2021年3月現在)を獲得。注目を集めています。
noteの目的は、共創ブランディング。いまの時代のブランディングに必要な「問い」や「余白のあるメッセージ」をどう投げかけ、多くのひとにどのように参加してもらうか——。そんな模索を続けるパナソニックセンター東京プロモーション課の串田 未来さんに、ブランディング視点でのnoteの運営についてうかがいました。
コロナ禍でリアルの場でのコミュニケーションが難しくなった
ーーnoteを始めたきっかけや経緯を教えてください。
串田 まず、ショールーム「パナソニックセンター東京」の説明をさせてください。この施設はパナソニックのグローバルな総合情報受発信拠点です。パナソニックのブランドスローガン「A Better Life, A Better World」の実現に向けて、具体的な取り組みやソリューションをお見せし、お客さまから直接ご意見、ご要望をいただくコミュニケーションの場という位置づけです。
その上で、私が所属するプロモーション課の目標が、若年層(10〜30代)とコミュニケーションをしていくこと、そしてブランディングになります。
当館では毎年、展示スペースで特別企画展を実施していました。しかしコロナ禍でリアルな場所でのコミュニケーションが難しくなったので、特別企画展をオンラインで行うことになったというわけです。
まず、オンライン展示会「ソウゾウするやさしい展」(2020年11月3日〜12月27日)を開催し、「問い」を設定することによって、みんながアーティストとして参加できるようにしました。
たとえば、Twitterでは「#やさしい大喜利」と称して、「自販機のやっさし〜いボタン押すとどうなった?」「2100年に語られる昔話「サスティナブル太郎」どんな話?」などのお題を4つ用意して、ハッシュタグをつけて投稿していただきました。
noteでは、やさしい物語コンテストと銘打って、「#やさしさにふれて」をテーマに作品を募りました。結果的に1万340件もの作品が集まりました。
ーーなぜnoteを、展示会のプラットフォームのひとつとして選んだのでしょうか。
串田 ブランディングで大切なのは、たとえばSDGsやダイバーシティのような「問いを共有すること」です。
いままでは問いやメッセージを、テレビや新聞広告など、一方的な発信で世の中に伝えてきました。しかし、だんだんユーザーからも意志を発信することが多くなり、いまは「共創の余白があるメッセージに、どう反応してもらえるか」でブランド力がつくられています。
SDGsやダイバーシティのような世界共通の課題に対して、どのようなメッセージを出せば若い世代に伝わり、双方向のコミュニケーションが取れるのか、かなり悩みました。
noteのクリエイター名「パナソニック_ソウゾウノート」は、やさしいソウゾウ(想像+創造)力から生まれた作品を展示する、というコンセプトから命名しました。パナソニックからの一方方向の発信だけではなく、ユーザーのみなさんとの共創を広げていきたい、という想いも込められています。
noteはいろいろな人が意見やアイデア、想いを語っていて、「共創していきたい、という私たちの想いが実現できそうな場所」と認識していました。展示会のターゲットとする層と、noteのコアユーザーが被っていたのも魅力です。
発信には、ほかにもさまざまなアプローチがありますが、言葉を使った発信にはnoteが向いていると感じました。より深いコミュニケーションの拠点としてnoteを選びました。
ーーコンテストだけなら、note proアカウントでなくても開催できます。あえて、note proにしたのはなぜでしょうか。
串田 スタートは「コンテスト」ですが、そこで終わらせないで、しっかりとアーカイブし、コミュニケーションの軌跡を残したいと考えました。そこでnote proアカウントを開設しました。
note proにしたのは、読者からの反応など、エンゲージメントを見る機能が充実しているからです。また、noteを開始するにあたって、私たちにメディア運営の知見がなかったので、note側からの充実したサポート体制があるのが魅力でした。
——なるほど。継続したコミュニケーションを行っていくことで、参加者とのエンゲージメントにつなげることができますね。
ところで、このnoteのターゲットは誰でしょう? また、現在(2021年3月1日)に至るまでにコンテストを3つ開催していますが、それぞれどのような意図がありますか?
串田 アカウントのターゲットは、コンテストと同じ若年層です。
「#やさしさにふれて」コンテストのあと、採用チームが中心となって「#はたらくってなんだろう」(2021年1月22日終了)、「#自分にとって大切なこと」(2021年3月15日終了)を実施しました。
どちらも、「参加者それぞれが、自分にとって大切なものの価値を言葉で発信することによって、その人の人生をより良いものにする方向性が見えてくるのではないか」という私たちの想いのもと、開催しました。毎回1万件くらいの応募が来ます。
コンテスト開催はアカウントを知ってもらい、フォローしてもらう人を増やすには効果的ではあります。とはいえ、コンテストだけでなく、私たちの本音の言葉を記事としてお伝えすることも大切だと思うので、このアカウントから出す記事も制作しています。
いくつかの部署を横断してnoteを運営
ーー運営体制を教えてください。
串田 いまのところ関わっているのは、採用部門から2名、ブランド戦略本部から5名です。各部署横断で、若年層にリーチしたい人たちが集まって運営しています。
「社内の有志求む」という感じで声をかけて回ったり、SNSに強い人や興味のある人を紹介してもらってチームになりました。チーム内のコミュニケーションは大切にしていますね。日常的に、Microsoft Teamsのチャットを使い情報交換をしています。
ーー執筆はどのようにしていますか。
串田 基本的なルールやガイドは用意していますが、記事作成は各部署にお任せしています。とはいえ、執筆陣はパナソニックセンター東京プロモーション課と採用部門のnote運用メンバーで、執筆専門の人はおらず、みんな手探り状態です。
また、弊社の別のオウンドメディアにあったコンテンツをnoteで再利用することもあります。たとえば、パナソニックで働く社員一人ひとりにフォーカスした「一人ひとりの物語に、一人ひとりのパナソニック」がそうですね。
ーー部署横断で運営していると、コンテンツ制作は難しくはないですか?
串田 会社として避けたいのは、同じターゲット向けのアカウントを複数の部署で乱立させてしまい、だんだんと立ち行かなくなるパターンです。
まずはどの部署が持つアカウントなのかをしっかり把握し、複数部署がバラバラのターゲット・コンセプト・ゴールを持つのではなく、統一したコンセプトの元でコンテンツバリエーションを練り、記事作成の役割分担をしっかりすることが大事だと思います。
弊社のnoteの場合は、最初はパナソニックセンター東京のプロモーション課が管理していたのですが、「若年層とのコミュニケーション」という目的が一致する採用部門やデザイン部門とも、コラボレーションすることになりました。
ーー運用が大変だなと感じることはありますか?
串田 慣れていないうちは、書く作業自体が大変です。執筆や更新が毎日重なって、手が回らなくなってしまうことも。書くコツやスケジュール感をつかんで、いまは大丈夫になりましたが、これからメンバーが入れ替わったときに、コンセプトがブレないよう気を使いつつ、継続して更新するにはどうするか、なども考える必要があります。
編集方針もガイドラインも作りましたが、もう少し社内に周知して社員にもっと関わってほしいですね。本作りや雑誌編集の知識が必要なくても、執筆できるんだと思ってもらえるくらいに、ガイドラインもブラッシュアップしたいです。
ーーアカウントのコンセプトがブレないよう、気をつけるポイントはありますか?
串田 「こういうのもいいよね」と、いろいろな方向性にチャレンジしたいと思いつつ、「なんでもあり」になるのは一番避けたいですね。「ソウゾウ」が最大のキーワードなので、テクノロジーの紹介でも、「どんな想像からきっかけが生まれ、創造できたのか」が、読んだあとに心に残るよう意識しながら、記事を作成しています。
社員にフォーカスした記事から新しい刺激を生みたい
ーーnoteをやってよかったことや効果は?
串田 生活者とのコミュニケーションができることです。
記事を引用されたときにくる通知などを通して、リアルタイムで読み手の動きがわかり、コミュニケーションが取れている印象があります。
とくに、「#やさしさにふれて」コンテスト入賞作品「遅刻して先生に感謝された日」をきっかけに、読者の勤める学校をよりよくできたことを伝えてくれた「ー拝啓noteさまー 作品が学校を変える小さな一歩につながりました。」は、社内で泣きそうな人もいるほどいい記事でした。
コンテストへの参加や記事へのコメントにまで至らなくても、読んでなにかしら心が動いたり、書く以外の行動をしてくれた人はたくさんいるんだろうなと実感しました。
いつもコンテストに応募してくださる方や、スキをつけてくださる常連さんを見つけると嬉しくなります。また、食のソリューションに関する記事に栄養士さんがスキをつけてくれていたり、スポーツに関する記事にスポーツをやっている方が反応してくださったり、想いのある人に届いたときも励みになります。
ーー社員にフォーカスするコンテンツも多いですね。パナソニックとして、社員を前面に出すことへのハードルは高くなかったですか?
串田 確かに、社内には個人にフォーカスが当たりにくい一面もあります。「パナソニック_ソウゾウノート」のように、社員の個人的な想いや気持ちに焦点を当ててみようとするコンセプトは珍しいです。
ただ、「パナソニックの〇〇さん」のような主語を用いることで、個人の想いが仕事に入っているのを、コンテンツで伝えるのはとてもいいことだと思っているし、社内の評価も高いですね。
展示会の記事を読んでくれたほかのメンバーから、「技術展の話が若手社員に響くので、書いてほしい」と声をかけてもらったりと、いい循環が生まれています。
例えば最近だと、「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」という組織を紹介した記事が好評でした。この組織では、いい意味での公私混同が起きています。自分の人生で興味のあるものを仕事に直結させ、ソリューションを生み出していく。そんなメンバーたちにフォーカスした記事を数本執筆しました。
「こんな社員がいるなら、一緒にこんなことをやりたい」「こんな技術あるなら、一緒に違うこともしたい」など、新しい刺激を記事から与えられたらうれしいです。
ーー今後、どんなアカウントにしていきたいですか?
串田 コール アンド レスポンスを生めるアカウントにしていきたいです。
noteは読者と近い距離で発信でき、コミュニケーションをしっかりできます。少しフランクに誠実に語りかけながら、読者に考えるきっかけを提供し、発信を促せるような関係性を構築していきたいです。
そのためには、皆さんに反応していただけるだけの私たちの想いを、より丁寧に強くお届けしていきたいと思います。
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