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県外から入社希望者も。「オープン社内報」で専門職採用や地域活性化を目指す会喜地域薬局グループ

昨今、多くの企業が取り組んでいる「オープン社内報」。これまで社内報は、社内の情報共有という役割が主なものでした。しかし、今ではその枠を超え、新たな採用・ブランディング手法として、外部に企業文化や社員の想いなどを発信する方法としても活用されています。

特に、福島県の会津若松市・いわき市で薬局を運営する会喜地域薬局グループは、noteでオープン社内報を公開し、社外からも注目・関心を集めている企業の一つです。

今回は会喜地域薬局グループ代表の馬場ばば祐樹ゆうきさん、企画・採用担当の高橋たかはし亮太りょうたさんにnoteを始めた経緯やその効果などについて伺いました。

主なポイントは3つ。

  • 地方の中小企業が抱える専門職の採用難を解決するために、noteを通じて「オープン社内報」を公開。

  • 社員を紹介するシリーズや地元ラーメン店のレビュー記事などは、社内の結束を深めると同時に、地域との繋がりを深めることを目指している。

  • noteの活用により、徐々に社外からの注目度が高まり、県外からの新たな採用にも繋がっている。

この記事では、より詳しく運営の裏側をお伝えしていきます。


情報をオープンにするのは「奥羽山脈を越えてでも働きたい」と思ってもらいたいから

「社内に閉じている情報を社外にも公開して、採用などに活かせないか」

社内からこのような声があがった会喜地域薬局グループ(以下、会喜)。もともと同社では社内コミュニケーションツール上でコラムを投稿する文化が根付いていました。しかしツールの移行に伴い、社外への情報発信の必要性についても意見が出され、何かいいツールがないか模索。

このような背景から、馬場さんは他社がnoteで公開していた「オープン社内報」に注目します。自身もそのnoteをよく読んでいたこともあり、こちらを参考にしながら、同社もnoteを開設することに決めました。この過程では、運営体制の確立に時間をかけて、地方の中小企業として直面していた「専門職の採用ハードルを下げるため、発信力を強める」という方針を定めたそうです。

代表に就任した当初から、「オープン・フラット」という理念を掲げていた馬場さん。社外の方にもわかりやすいコンテンツづくりをするために、外部から編集長に東原ひがしはら圭佑けいすけさんを招き、note運営をスタートしました。

note運営において目指すゴールは、会喜を知った方々が「奥羽山脈を越えてでも、この会社で働きたい」と思えるような安心感を与える情報を蓄積すること。実現に向けて、お二人は「さまざまな角度から常に情報を発信し続ける」という目標を定めます。

会喜地域薬局グループのWeb編集会議の様子
会喜地域薬局グループ・編集会議の様子
オープン社内報のスケジュール管理も行っている

コンテンツの制作方針は「地域活性」も視野に

note開設当初、会喜ではコンテンツ作成において「社内のコミュニケーション促進」と「地域との繋がりの強化」の二つの軸を掲げました。

社内コミュニケーション促進の文脈では、「トリセツシリーズ」というコンテンツが誕生。新型コロナウイルスの影響で、社員間の対面での接触機会が減少したことが背景にあります。「お互いのことをよく知らない」という状況を解消することを目指し、スタッフのトリセツ(=取扱説明書の略称)を記事にまとめました。

会喜地域薬局グループのマガジン「トリセツシリーズ」
会喜地域薬局グループの「トリセツシリーズ」
noteのマガジン機能を利用し、記事をまとめている

「最初は記事を書いてくれそうな人を探しながら、声をかけていきました」と話す馬場さん。執筆に戸惑った反応を示す人もいましたが、自己紹介に限らず他己紹介形式を取り入れたり、管理職にも記事の執筆を依頼したりと、工夫を凝らしながら協力をお願いしていきました。

このような積み重ねもあり、徐々に執筆依頼に対するスタッフの反応も前向きになっていきます。「社内報を外部にも公開することで、外の読者からの反応が直接届くようになったのも良かったです」と話す高橋さん。読者の反応によって、執筆者たちには「書いた甲斐がある」という実感が生まれたのではないかと考えています。さらに旧社内ツールでコラムを投稿していた頃と比べ、社内の人たちからの記事への反響も大きくなりました。

地域との繋がりを深めるためのアプローチでは、お二人が「地域の共通言語」と呼ぶ「会津・喜多方ラーメン」をテーマにした連載も行っています。この地域ではラーメンを愛する方が多く、ほとんどの方が自分のお気に入りの店を持っているそうです。そこで高橋さんは「タカハシのメン活」と題したコラムを作ってさまざまなラーメン店へ行き、ラーメン・レビューをしています。

会喜地域薬局グループの高橋さんの様子
会喜地域薬局グループの高橋さん

コンテンツの編成については、必要に応じて見直しも行います。現在は「トリセツ」と「タカハシのメン活」以外にも、「ふくしま暮らし」や外部からの寄稿などを収録した「あいき寄稿・掲載集」など、新たなマガジンも複数作成しました。継続が難しい企画は、コンセプトの見直しや停止の判断をすることもあるといいます。

オリジナリティー溢れる記事を執筆してもらうためには、安心感が必要

noteでの情報発信において、特に印象に残っている記事を尋ねると「定年退職とSmart相談室と私。」や馬場さんの他己紹介記事「ババユウキのトリセツ」を挙げてくださったお二人。

「定年退職とSmart相談室と私。」は、グループ初の定年退職を迎えた社員が、セカンドキャリアを考える上で「Smart相談室」という制度を利用したことに関する記事です。キャリアについて考える機会は、若手だけでなくシニア層にも設けるべきだ、という考えから、執筆者にSmart相談室というカウンセリングを受けてもらったという企画は、多くの方に人生の問いを投げかけるような価値の高い体験談となり、好評だったといいます。

また馬場さんの「トリセツ」は、薬局らしさを前面に出し、お薬に同梱されている添付文書の様式を参考にして、オリジナリティー溢れる記事になっています。このような企画は週1回ほど行われる編集会議で、雑談するような雰囲気で生まれるようです。

代表・馬場さんの説明書「ババユウキのトリセツ」より

独創的な記事制作にも挑戦できる背景には、充実したサポートがあります。会喜では、執筆者が安心して記事を書けるよう、編集長に第三者目線での最終的な原稿チェックとフィードバックを依頼しています。外部の編集長に入っていただく上で重要視しているのは、書き手が「変えたくないところ」を明確にし、予めその意図を伝えること。他にも運営の想いや現場の雰囲気を感じてもらうために、編集長には実際に来社してもらうなど、信頼関係の構築に努めています。

これらの方針のもと、現場の業務に負担をかけないよう配慮しつつ、週に2〜3本の記事を投稿している同社。この取り組みにより、note開設1周年時には、全社員の57%が一度はnoteで記事をリリースしたことがあるという結果になりました。

これほど多くの社員の巻き込みを成功させるためには、いくつかの工夫が必要だと述べる馬場さん。例えば、記事を書いてもらう際は、予めテーマを提供することで、執筆の手助けをしています。また原稿確認では、文章は書き手の個性を尊重しつつ、語尾の統一や前後関係の整理など、必要な部分のみを微調整。社内で通じる表現が社外では伝わりにくいこともあるため、そのような場合は編集長の意見を取り入れて修正しています。

記事の執筆を依頼する人は社内に留まりません。編集長を始めとする社外の取引先などにも依頼し、より幅広い視点からの情報提供を意識しているようです。

新たな記事を公開した後は、Slackの社内専用チャンネルでお知らせ。記事や書き手を数値だけで評価することはせず、「こんなに見てもらって良かったね」というポジティブなフィードバックを送ることを心がけています。特に、第三者からの褒め言葉があった場合には、口頭で伝えます。これによって書き手のモチベーションを高め、より良いコミュニケーションを育みたいと考えているようです。

何よりも「情報発信は楽しくやってもらうことが第一」。この考え方は編集部だけでなく、書き手となる社員にも当てはまるといいます。そのため効果測定は、単に数値を追うのではなく、長期的に発信を続けるための動機づけとして行っています。​​

noteをきっかけに社員同士のコミュニケーションが生まれ、社内からの注目度も上昇中の「オープン社内報」。不思議なことに社内では、他の社内情報共有ツールよりもオープン社内報は人気があり、社員にも「noteに掲載されているコンテンツはおもしろい」と認知されているようです。

会喜地域薬局グループの馬場さん
会喜地域薬局グループの馬場さん

noteがきっかけで県外から入社する社員も。情報発信がもたらした効果

noteの活用によって、会喜ではどのような変化が起こったのでしょうか?その効果は多方面にわたります。まず、県外からご夫婦で入社してくれる方々が現れました。この夫婦は、当初はSNSのXで会喜を認知し、その後noteで企業の様子を探ってくれていたとのこと。noteで企業の雰囲気や文化を伝えられたことが、功を奏しました。

また最近の薬局の話題をまとめた政策議論の記事も、話題になっています。この記事は当初、別のツールを使用して社内向けに配信されていました。しかし、noteで公開したほうが社内のスタッフがより読むようになるのではないかと考え、noteでの公開を試みます。結果として、これまで以上に多くのスタッフから読まれるようになり、さらには外部からの同社への認知度も向上したようです。中でも同業他社からの注目度は非常に高いものでした。

ラーメンに関する記事も好調です。同シリーズの記事は、この地域をより深く知ってもらうためのきっかけとなり、予想以上にGoogle検索での露出も高まりました。「就職の動機付けだけでなく、地域の魅力に触れてもらうこと自体に大きな価値があると感じた」と、高橋さんは述べます。

さらにnote運営を通して、気づきもあったと話すお二人。内輪の情報だと考えていたものであっても外部にとっては興味深いネタになること、社内で当たり前のことが世の中では新鮮に映ることがわかったこと。さらに「noteの読みやすさや拡散性が、オープン社内報に非常に適していることも確認できた」と、笑顔で話してくれました。

まとめ

将来的には薬局関係者だけでなく、薬局を訪れる地元のお客さんにもnoteの存在を知ってもらいたい会喜地域薬局グループ。さらには「薬局業界のnote」と聞いて、最初に思い浮かぶ企業になることを目指しています。

今後も地元の地域活性化に貢献しながら、多くの方に向けて有益な情報を発信していきたいと語る同社のnoteから目が離せません。

最後に会喜地域薬局グループのnote運営で参考になるポイントを再度振り返ります。

  • 地方の中小企業が抱える専門職の採用難を解決するために、noteを通じて「オープン社内報」を公開。

  • 社員を紹介するシリーズや地元ラーメン店のレビュー記事などは、社内の結束を深めると同時に、地域との繋がりを深めることを目指している。

  • noteの活用により、徐々に社外からの注目度が高まり、県外からの新たな採用にも繋がっている。

みなさんもぜひ、note運営の参考にしてみてください。

interviewed by 漆畑美佳 text by 須賀原優希

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