「メディア露出のためのエビデンス獲得」「応募者が業務を完全に理解している状態に」ーーゴールイメージを明確に定義して記事をつくるリノベるのユニークなコンテンツ作成術
自社サービスのブランディングを行なう際の一手法として有用なのが、オウンドメディアです。一口にブランディング目的といっても、さまざまなコンセプトのオウンドメディアがありますが、特に「自社サービスの認知を広げていく」ことと「サービスのファンを増やしていく」ことを両軸で進める方法はおすすめです。
今回お話を伺ったのは、国内No.1(※)の中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」を提供し、テクノロジーを活用したリノベーション・プラットフォームを構築するリノべるさん。リノベるは、noteでオウンドメディアを展開することで、「サービスの認知拡大」と「ファンづくり」を、相乗効果を出しながら実現しています。
※ ワンストップ型リノベーション件数(リフォーム産業新聞社刊『マンションリフォーム売上ランキング2021』にて、ワンストップサービスを手掛ける事業者として首位)
彼らの戦略は、
認知拡大のためには、中古リノベーション自体の普及が重要。影響力のあるメディアに取り上げてもらうために、多くの人が漠然と感じている中古リノベへの不安や疑問に答える信憑性の高い情報を発信。
ファンづくりの第一歩として、一番身近な「社員」のスキ! にフォーカス。
の2つ。どうしてこのような戦略を選んだのか、どうやってコンテンツを作りつづけ、結果に結びつけてきたのか。ブランド戦略部の木内玲奈さんに、詳しくお伺いしました。
ここでは2022年3月10日に開催された「note proミートアップ」イベントの内容を元に、BtoCブランディングのコツを紹介します。
リノベーション未知層における認知獲得
リノベるがいま注力しているのは、個人向けの中古購入+リノベーションのワンストップサービス「リノべる。」ですが、このサービスを広く知って使ってもらうにはハードルがありました。そもそも家を購入する際に、中古リノベーションという選択肢があることが、世の中であまり知られていなかったり、知っていても「古い建物って大丈夫?」という漠然とした不安が根強く、選択肢化していなかったのです。
しかし、既に中古リノベの不安に答えるような記事はたくさんありました。そこで、同社のブランド戦略部は、これまでのどの記事よりも信頼性の高いコンテンツを出すことを検討します。そこで構想されたのが同社の人気コンテンツ「リノベを科学する」でした。
「認知拡大には、リノベーションを検討してくれる人を増やしていく必要があります。多くの人が家を購入するとき、まずは新築を第一想起し、モデルルームを見にいく傾向があります。そのようなリノベーション未検討層に、リノベーションという選択肢と、リノべるの存在を知ってもらいたいと思いました。」(木内さん)。
コンテンツを展開するプラットフォームとしてnoteを選択。理由は、第三者・有識者の意見をフラットに発信する場所として最適だったこと、リノベーションについて言及しているクリエイターが多く、相性が良さそうだったからとのことでした。
どうしたら、メディアに取り上げられるか?
リノベーションという選択肢に気づき、さらにリノべるの存在を知ってもらうにはどうしたらいいのか。木内さんたちは、自分たちのコンテンツが、影響力のある全国紙やテレビなどのマスコミに取り上げられることを意識したそうです。
「弊社が手掛けているサービスを記者さんに紹介すると、よく『築古の中古物件は、本当に大丈夫なのか? 何年もつのか?』と聞かれます。大手メディアになるほど『このサービスを紹介しても大丈夫なのか?』という疑問があると推測しました。そこで『みんなが思う漠然とした中古・リノベーションの不安を科学する』という方針が決まりました。」。
そのためには、全国紙の記者が「これなら、自信をもって紹介できる」と判断できる信憑性あるエビデンスーー有識者や信頼できる第三者の声が必要だろうと考えたのです。「目線は思いっきり高くしました」と木内さん。
信頼性を高めるために、下記の3つのポイントを押さえることにしました。
取材先には、大学教授や専門家を選定。先生たちのつながりで取材先の輪を広げていく。
聞き手はあえて、リノベーションに詳しくない社員にやってもらう。
科学する、定量化にこだわる。
信頼を得るため、取材先は基本的に専門家、つまり大学の先生に依頼をしています。最初は個人的に知っている専門家から取材を始めたとのこと。
「その後は、その先生にほかの先生を紹介していただいたりしています。『こういうことを聞きたいんですけれども、誰に伺えばいいですか?』と聞くと『やっぱり○○先生ですよ』と教えてくれます。」。
聞き手は、「業界をよく知らない人」のほうがいいそう。「一般人の目線で『先生教えてください』と素朴な質問を投げかけるのがいいのです。逆に知識がありすぎるインタビュアーだと一般の方の目線で深堀りすることが難しい。」。
同時に「ほかにない記事」を意識しました。
「”中古って大丈夫?”という記事は、ポータルサイトやリノベ会社の鉄板コンテンツ。すでにあるほかの記事を読めばいい、とならないことを意識しました。」(木内さん)。
このようにして生み出された「#リノベを科学する 鉄筋コンクリートは何年もつの? 建物の寿命を研究する早稲田大学名誉教授・小松幸夫さんに聞いてみた」は、100以上とスキが伸び、SNSでは他社や有識者にも評価されました。
「社員や身近な人、他社の代表、業界のご意見番やリノベーション協議会の方々がシェアしてくれました。今まではあまりこういった記事がなかったんだと思います」。念願のテレビ取材や新聞の露出獲得の後押しにもなりました。
また、そのまま営業メンバーが基礎知識として使えるよう、新入社員はもちろん、お客様にも共有してもらっています。不安をお持ちの方には、専門家の詳しい解説はとても参考になりますし、担当者も自信を持って説明ができます。
「営業担当者がお客様に対しての営業ツールとして使っているようです。会社のプロモーション的な要素がないため、それが信頼性につながっています。不安を抱いているお客様の質問を、あらかじめ大学の先生に聞いてもらっているイメージです。」。
ファンづくりは「インナー」から「アウター」へ好意を広げる
2019年から実施しているブランド調査を通して、社名やサービスを認知してもらいつつ好意形成するためには、「魅力的」「信用」というイメージが重要で、さらに分解すると「共感」「感動」「応援」イメージがキーであると分析しています。そもそも、ブランドとは、相手の心の中に形成されるもの。心を動かすことや共感を得ること、そしてその共感の輪を広げていくことが大切だと考えています。
「自分ごとに思ってもらえるベネフィットと共感。コンテンツ制作には、この2つが必要ではないかと考えました。」(木内さん)。
ファンづくりにおいて木内さんたちが意識したのが、インナーからアウターへの共感の流れを作ることでした。つまり、自社との距離が近い社員や関係者からリノベーション経験者へと徐々に輪を広げ、最終的にリノベーション未検討層・未認知層へ届けることをイメージしたのです。
そのため、外(アウター)に向けてブランディングをする前に、「まずは自分たち(インナー)が自社をどう思っているか」が大事だと考えました。「社員が“スキ”してくれるコンテンツはなんだろう」と考えた結果、「リノベる。スタッフの家づくり」に思い至ったのだそう。
「プロならではの視点と、ユーザーならではの悩みや苦労、楽しさ、感動体験もある」といった等身大の身近さとプロならではのTipsがポイントとなり、こちらもヒット記事となりました。この記事を元にメディア提案し、テレビやメディア露出がいくつか決まっています。ゆくゆく、プロダクトデザイナーや建築デザイナーなど、専門性が高い社員による情報発信の場としてもnoteの活用を広げていくことも検討しているそうです。
公開後でもタイトル変更や加筆で記事を改善
木内さんたちはこうして積み上げた記事たちをよりいっそう読まれるものにするために、記事公開後にもさまざまな工夫をしています。
例えば編集部では、タイトルを細かくチューニングすることもあります。反響を見て公開後にタイトルそのものを変えたこともあるとか。
「最初のタイトルは普通の体験談風でした。しかしスタッフが、記事を読んでくださったお客さまとお話しして、”これまであまり深く話してこなかった、物件探しの条件整理に苦労した体験こそが、お客様の役に立ちそうだ”と感じ、もう少し記事を追加できないかと相談してくれたのです。だったらタイトルも変えた方がいいよね、となりました。リノベーションは自分らしい暮らしとは何かを見つめることでもあり、大変だけど楽しい、かけがえのない体験です。プロでも悩んだり大変なこともあること、だからこそ実現できる暮らしや住まいがあることを伝えたかった。」
また、先の「#リノベを科学する 鉄筋コンクリートは何年もつの? 建物の寿命を研究する早稲田大学名誉教授・小松幸夫さんに聞いてみた」は少し長い記事だったので、当初は読了率を考えて2つに分けた方がいいのではないか? という議論が社内にありました。しかし、実際に短い記事と比べてみてもあまり読了率が変わらないことがわかり、記事のボリュームについては一般的な範囲ならOKと割り切ったそうです。
数値的なKPIは、読了率やPVなどもウォッチし検討したけれど、1ヶ月後のスキ数のみを設定しているとのこと。目的別に定性的なゴールを定め、それが実現されているかに重きを置きつつ、適切なKPI設定となっているか半期ごとに見直しているそうです。
採用目的noteの目標は、「候補者が選考のタイミングで業務のことはすべて理解している」こと
リノべるのnoteのもうひとつの目的が採用広報です。
実はnote proを契約するにあたって、採用コンテンツでの活用も考えていました。ブランディングとしての用途に次ぐ、サブとしての目的にはなりますが、最初から採用担当者も巻き込んで「どんなゴールを目指すか」を明確に定めていることがポイントです。
採用広報のゴールは2つ。
1つが、選考のタイミングで候補者が「業務のことはすべてnoteを読んで理解している」状態になること。木内さんは、「もしくはその面接官にしか聞けないことを質問できている状態です」と明言します。こうして「双方にとって質の高い面接ができる状態まで持っていくこと」を目標にしました。
もう1つが辞退率を下げることです。候補者の知りたいことを入り口にリノべるを伝え、入社の覚悟を固めてもらうメディアとして「内定者note」マガジンを用意しています。
「これらの記事は、内定者がインターンとしてきたときに書いてもらっています。入社前に会社のカルチャーへの理解を深めてもらう機会にもなっています。」(木内さん)
「採用で出会う方々にもファンになってもらいたい」と考え、採用とファンづくり双方を意識しているそうです。
「コンセプトの検討段階でnote proの他社事例を見ているうちに、採用も含めてnoteをコーポレートサイトのB面として使い、会社の内側を見せるメディアに育てていきたいと思うようになりました。」
自信を持って顧客に紹介できる記事をつくることが、ブランディングにつながる
しっかりとしたブランディング戦略をもとに運営しているリノべるのnote。オウンドメディアとして目指す姿とコンテンツがしっかり紐づいて考えられているので、アカウントの中で記事の種類が複数あっても、ブレがありません。
リノべるのnote運営から学べるポイントは、以下3点にまとまりそうです。
自社にしか書けない専門性・ニッチさがある記事は、メディアの優位性につながる。
自社サービスのいちばんのファンは社員。社員が面白いと思う記事、自信を持って顧客に紹介できる記事をつくると読者が広がる。
定量的KPIは、定性的なゴールありき。状況に応じて柔軟に変えていくと運営しやすい。
同社は、将来的にはコミュニティ的なメディアとして一般の人を巻き込んでいきたいとも考えています。「最近、リノベーション体験談を書いている方が増えており、noteとは相性がいいと思います」と木内さんは結んでくれました。
noteの法人向けプラン note proの詳細はこちら
note proでの情報発信、活用方法に疑問や不安はありませんか?
担当者が、貴社の課題とnote proの特性を踏まえて、活用方法や参考事例をご提案いたします。下記からお気軽にオンライン個別相談をお申し込みください。
※note proご利用中の方は、運営サポートページよりお問い合わせいただけます