部署を横断し「書き手に寄りそった」編集部を目指す——裏側の想いを伝えてファンを増やすマネーフォワードのnote
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げる株式会社マネーフォワードは、個人・法人に向けて金融系のプラットホームサービスなどを提供している会社です。
公式noteは2018年に開始し、部署を横断したチームを構成して運営しています。編集部は、コーポレートデザイナーの金井恵子さん、採用担当の土江有里奈さん、広報の早川有紀さんの3人体制。部署をまたいだnote成功の秘訣、note proにしたことでよかったことなどを、同社がnoteをスタートした初期から伴走してきたnote proカスタマーサクセスチームが伺いました。
有象無象のカオスな状態から、部署横断の編集部を設定
ーーマネーフォワードさんは部署を横断してnoteを運営されています。まずは、運営体制を教えてください。
早川 編集部は、バラバラの部署の3人でやっています。それぞれ採用広報・社内広報・対外広報のメンバーですが、noteのコンセプトは「マネーフォワードのファンになってもらう」で一致しており、さらに3人それぞれに実現したいことがあります。
私は対外広報ですから「プレスリリースでは伝わらない裏側の想いを知ってほしい」「社内に眠っている情報をできるだけ伝えたい」「noteの記事をきっかけに取材してもらえる機会をつくれたら」と思って取り組んでいます。
土江 採用において、広報活動はとても重要だと考えています。例えば、新卒採用では、「社会を経験していない学生さんでも、マネーフォワードで働くことを身近に感じてほしい」「会社の雰囲気を対面だけではなく、いろいろな角度から知ってもらいたい」と考えています。
人事として、中途も新卒も採用活動だけでは伝えきれない想いを発信したいと思って取り組んでいます。
ーーなぜ部署を横断した3人体制になったのですか?
金井 note自体は、2018年12月から無料アカウントで発信していました。そのときは広報部がnoteアカウントを管理していたのですが、実はカオスな状態だったんです(笑)。
また、当時はnote以外にもいくつかの媒体を利用していて、発信が分散していました。そこへ、社内報チーム内で「note proを使いたい」という声が上がり、それならば発信を一本化しようと、改めてnote proで公式noteをはじめました。
note proを使いたかったのは、「既にマネーフォワードに興味を持ってくださっている方」だけではなく、知らない方にも読んでもらいたかったというのが大きな理由です。noteだとあらゆる方に届くのではないかと思い、移行を決めました。
早川 以前は、きちんとしたコンセプトがなく、編集長もいなくて、どの記事をどう紐づけするかも、決めていませんでした。そのため、社員の「書きたい」という声を受けて載せたり、社員個人のnoteを紐づけたりしていました。そこにきちんと編集部が発足し、コンセプトをきちんと決めないと、と方針を変えました。
ーー(カスタマーサクセス担当の私から見ても)最初はまとめるのが大変そうでしたね。記事のネタの範囲が豊富がゆえに、整理が難しいし、記事の導線設計をしても、記事が見逃されてしまう時期がありました。3人になったことのメリットはありますか。
金井 3人いると、偏りすぎないのがいいですね。私はコーポレートデザイン的な視点で見ますし、早川ならトレンドに乗っているかの広報視点です。採用部のメンバーがたくさん記事を書いてくれるようになって、一瞬、視点が偏りそうになったんです。しかし3人で、「採用記事とはどういうことなんだろう」と議論して、やりたいことはファンを増やしたいことだから、採用を意識しすぎなくてもいいのでは? などと話しました。
早川 ひとりで編集部をやろうとすると、他人の巻きこみが難しかったり、悩みすぎてアウトプットが出ないことがあります。部署横断でやっていると、それぞれに視点があって、巻きこみがうまくできるようになります。
土江 仰っていただいたとおり、人事メンバーとだけで記事の編集について考えていると、周囲が見えていないことがあるのですが、二人はそれを指摘してくれる存在です。私は関西支社にいますが、業務はリモートで行っているので距離感は感じないですね。
「裏側の想い」を共有できるメディアに
ーーいまのnoteの目的はなんでしょうか?
金井 マネーフォワードのファンを増やすことです。あまりターゲットを絞りきらず、もともと知っている人にも、知らなかった人にも、いいなと思ってもらえたらと考えています。ハウツーではなく、裏側にある想いや、背景をきちんと伝えられるようなnoteにしたいと思いました。
ーーnoteをやってよかったことはありますか?
土江 採用観点でいえば、自主応募の方が増えました。応募者のコメントを見ると「noteを見ました」「仕事に共感しました」という方もいらっしゃいます。
また、選考過程でも役立っています。新卒の方なら、会社説明会に「理解が深まるので読んでください」とnoteを紹介していますし、面接やスカウトの方にも送っています。人事担当者ではなく、現場のメンバーが書いてるので、応募者に伝えきれない会社の雰囲気を伝えられます。
早川 本当は広報担当者は社内の人や事情に詳しくあるべきだと思うのですが、実はnoteを本格的に運用するようになるまで、表に見えていない動きや、目立ちづらくて知らないことも多かったんです。noteの編集部として活動することで、それぞれの仕事の裏側のストーリーや、メディアに露出したことがないけれど活躍している人がたくさんいることがわかりました。
メディアに提案するときも、こうしたストックがあれば次につながる可能性が高くなるのではないかと考えています。
ーー人を見つけやすくなったということでしょうか。
早川 プレスリリースって教科書的で「……以上。はい終了!」みたいな感じですから、裏側の想いは理解できないし、興味も持ってもらえないことが多い。noteは想いやストーリーが伝わるからこそ、共感してもらえるのかなと思います。
目標数値は定めず、「書き手が書きたくなる」仕組みを作る
ーーnoteの運営での数字目標は定めていますか?
金井 実はKPIやPV、スキなどの目標数値は定めていません。まずはnote proカスタマーサクセスチームとも相談して、半年の間は「きちんと記事を出す」ことに専念しました。その後、書き手の増減、記事本数とスキの数、どういうnoteが広く読まれたかの振りかえりはしました。しかし目標は定めていないです。
私たち編集部でも記事は書きますが、社員の個人noteを公式noteのマガジンでまとめる方式を採用しています。いまは書き手が増え、発信文化が根づき、インナーコミュニケーションにも役立っています。書いた人を称賛するサイクルを作ったことで、社内のいろいろなメンバーが書きたいと思ってくれるようになり、発信のハードルが下がりました。
早川 おかげさまで編集部発足前と比べると、記事の書き手が約3倍に増えました。
土江 私は後から編集部に入ったのですが、「みんなが発信する土壌を作る」ことが見えないKPIだったのかなと思います。
ーー具体的にはどんなふうに仕組みを作ったのですか?
金井 書き手が「次も書きたいな」と思うために、どうしたらいいかを考えました。記事レビューで素敵なところを褒めたり、slackのチャンネルで、全記事に感想を書いていくという試みもしてます。書いた人が社内のチャットで自らシェアすると、みんながコメントして盛り上げてくれるんですよね。
早川 毎日のようにひとつひとつ、これはこう思ったとか、これはいい取り組みとか、記事に対してきちんと反応するようにしています。自分が書いた記事にみんながコメントしあって盛りあがっていると、書いた人もきっと嬉しいですよね。
土江 あとから入ってありがたいなと感じたことは、書き手に寄り添ったサポートがあること。弊社オリジナルのnoteの書き方のガイドブックが公開されており、書くのが苦手な人へのフォロー体制が設けられています。「みんなに書いてほしい」という想いが強いので、書き手が困っていたらいつでも相談に乗るよ、という取り組みです。
ーーベースとなるカルチャーを感じますが、これは一朝一夕では真似できない体制ですね。この文化はなんで根づいたのでしょうか。
金井 マネーフォワードの発信の価値観が大きく変わったのは2015年ごろ、エンジニアの越川さんというメンバーが入社したときに「(エンジニア特有の)すべてをオープンにする」文化を持ち込んだんですね。「考えてることを表に出そう」と徹底するようになった。そこから発信を大事にする文化が生まれました。全社的に、日報や議事録の公開、また個人の思考や想いを「ポエム」として公開するようになりました。
勇気を振りしぼって書いた最初のnoteが原体験になっ
ーー記事公開までのフローや記事の作り方を教えてください。
金井 フローもこれ、と決まってないんです。いろいろなメンバーが書いてるので、フローもさまざま。構成から手伝うこともあれば、書いてくれたものをレビューするパターンもあります。ガイドブックには、記事公開までの基本的なステップや、noteで公開したいときの問い合わせ先などを掲載して、メンバーがフローを迷わないようにしています。
ーー運営で苦労したことはありますか?
土江 全員兼任なので、時間が捻出できていないことです。それから、みんなストイックだから、今のnoteに満足できてないところですね(笑)。
早川 ありがたいことに最近は発信がすごく増えてきて、公開予定日が重なることもしばしばあります。せっかく出した記事の閲覧が分散しないように、公開日は重複しないようにしていますね。前は人事や広報バックオフィスからの発信が多かったのですが、最近はエンジニア、デザイナーの発信も増えてきているおかげで、記事のバランスも取れてきました。兼任での運営という観点だと、編集部に関わりはじめたとき、目標設定しないとコミットできないかなと思って、時間の割りふり含めて、note運営にきちんとたずさわれるようにしました。
金井 私自身が発信はめちゃくちゃ苦手だったんですが、勇気を振りしぼって2年前に初めてのnoteを書きました。note社の「編集部おすすめ」にも取り上げられ、たくさんスキがついて、勇気を与えられた。だからそういう気持ちをみんなに味わってもらいたいなと思って、みんなに書くことをおすすめしています。
note proカスタマーサクセスチームが「褒めてくれる時間」も大事
ーーnoteとnote proの違いはありますか?
早川 3人だけでやってると「これでいいのかな?」と悩むのですが、note proにしたら、カスタマーサクセスチームがアドバイスしてくれるので、勇気が出るしありがたいです。社内の週次定例でも、いただいたアドバイスを繰り返してお互いにモチベーションを上げたりしています(笑)。
金井 note proカスタマーサクセスチームが褒めてくれる時間も大事です。記事を客観的に見てくれたり、他社との違いや自分たちの強みを見つけてもらったりしています。「(マネーフォワードのnoteは)カンパニーオールでやってるのがいいんだよ」と言われたときは、うれしくて全社員の前で発表しました。
ーーカスタマーサクセスチームは、書き手に寄りそって伴走することを心がけています。カウンセリングや雑談が、実は大事なんですよね。最後に、今後のマネーフォワードのnoteが目指すことを教えてください。
早川 社員みんなが書いてよかったな、と思えるメディアにしたいです。裏側にすてきなストーリーや共感してもらえる内容があるのに、「社外に出すほどのナレッジじゃない」と迷ってる人がいたら、「書いてみてほしい」と背中を押してみる。すると記事として公開されたとき、すごくいい反応があり、本人も書いてよかったと思ってもらえる。そういうメディアにしたいと思います。
土江 採用観点では、会社説明や事業など、定量的なことは話す機会が多いのですが、これを定性的に補足できるのがメディアです。noteを「なんで成長してるのか」「どんな人がどんな想いでやってるか?」を届けられるメディアにしたいと思っています。
金井 リモートワークが基本になり、オンライン化が進んだからこそ、伝わり損ねてしまう想いや文化を補える存在になってほしいと思います。例えば、次に紹介する、コロナ禍の働き方について書いた記事に、反響が集まったことがありました。
この記事に反響が集まったとき、会社の想いはこんなに共感してもらえるんだ、と感情的な結びつきを感じることができました。noteはこれからも、私たちの姿を率直に感じてもらえるメディアになればいいなと思っています。
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