フォントづくりの裏側をオンラインで届けたいーーモリサワがnoteというプラットフォームを選んだわけ
株式会社モリサワ(以下、モリサワ)は、1924年創業。「邦文写真植字機」の発明によって生まれた “ 書体の老舗 ” で、いまでは「デジタルフォント」を開発・販売しています。出版や印刷、Webに関わるデザイナーや編集者には、「新ゴ」や「リュウミン」などの定番フォントで知られていますが、デザイン書体や欧文書体など1500近くもある書体ライブラリの魅力をどうアピールしていくか、という課題がありました。
そこで、書体ひとつひとつの開発ストーリーの紹介や、ユーザー向けイベントのアーカイブとしてnoteを使いはじめました。オンラインイベントの開催や配信には、note社が提供するイベントスペース「note place」を活用しています。今回は、モリサワ note編集部から戦略デザイン部門の鑓田 高広(やりた たかひろ)さん、貫 真由(ぬき まゆ)さんにお話を伺いました。
課題は「コンテンツがストックされず、流れてしまうこと」
ーーまずはnoteを利用しはじめた経緯を教えてください。
鑓田 モリサワでは、昨年の2019年にユーザー様向けのイベントをスタートさせました。デザインに携わる方を講師にお招きし、ワークショップを交えて書体の使い方をご案内するものでした。ですが、リアルなイベントの開催が難しくなり、オンラインに特化したコミュニケーションを模索していたときにnoteでの連載に思い至りました。たくさんのクリエイターの方が参加されているプラットフォームで、書体の裏話や制作秘話をお届けしたかったのと、オンライン配信の体制が整っているということで、今年8月からnote placeの利用とnoteでの記事の公開を始めました。
ーーそもそもなぜイベントを始めたのでしょうか。
鑓田 年に1回のペースで新しいフォントを発表しており、現在では1500以上のフォントをご提供しています。一方で、書体の数が増えるにつれ、ユーザー様から「定番のフォントは使うけれど、新しいフォントが使いこなせない」という声をいただくことがありました。そこで、ひとつひとつの書体の特徴をお伝えすると同時に、たくさんある書体を「どう使いわけるかを発信していく場所」としてリアルイベントを計画しました。
鑓田 以前から公式Twitterや公式Facebookは運用していて多くのファンの方にご覧いただいています。書体をリリースした時などはソーシャルメディアならではの “ 最大瞬間風速 ” を感じるのですが、フォントは「使いたいときに(思い出して)使ってもらうもの」なので、関連コンテンツをネット上に蓄積していく重要性を強く感じていました。
そこで去年の夏から、フォント利用のTipsをお話ししたり、ご利用いただいている方のご意見を直接うかがう場としてイベントを企画しました。イベントはユーザー様限定ですが、私たちの活動を広く知っていただくのなら、noteのようにたくさんの方が集まる場所で触れていただくのがいいんじゃないかとなり、今年の夏からnoteにイベントレポートを掲載するようになりました。
ーーどういう人に登壇してもらうのですか?
鑓田 MORISAWA PASSPORTユーザー様限定公開の講座「FONT COLLEGE」では、これまでにグラフィックデザインやエディトリアルデザインといった文字やタイポグラフィを扱うことの多い分野で、一線で活躍されている方々をお招きしています。
note placeならプロフェッショナルに配信を任せられる
ーーイベントを開くのに、自社会議室や貸し会議室もある中、なぜnote placeを選ばれたのですか?
鑓田 第一にリソースの問題がありました。リアルなイベントはもちろん、オンラインイベントでも多くの人手が必要です。また、登壇者が適切な距離を保つには自社の会議室では広さに限度がありました。
note placeはまず場所がきれいですし、配信の機材や設備が整っています。何より、自前では大変だった配信をプロフェッショナルに任せられるのでとても助かっています。私たちがnoteを始めるタイミングでnote placeが完成したので、試しに使ってみようということになりました。
思い返せばイベントを始めた頃は会場探しや撮影もすべてが手探りで、直前まで準備をしてお客様をお迎えするといった状態でした。その後、世の中が大きく変わる中で、「オンラインでアーカイブを残す」必要を強く感じ、コンテンツ作りにフォーカスするようになりました。noteの連載との相乗効果も期待しています。
ーーnote placeを利用して良かったことはなんでしょう。
鑓田 「配信お任せプラン」を利用しているのですが、これは機材を借りられる上、配信のオペレーションをお願いできるのが決め手でした。
それまでオンライン配信やウェビナーなどは、配信する各自のPC環境に依存してしまい、カメラに映る人の距離感が違ったり、明るかったり暗かったり、音も割れてるとかノイズがひどいとか、思い通りにいかないことが多々ありました。
オンラインセミナーが当たり前になってくるとそのクオリティも重要ですので、note placeの皆さんにはたくさんアドバイスをいただいています。
ーーデザインに関わりのあるモリサワ的なこだわりもあるのでしょうか。
鑓田 まだまだ力不足なところもありますが、ご期待に応えられるよう取り組んでいます。きちんとリアルタイムで配信しようとすると、プロ用の機材がないと難しいんですが、プロ用の機材はとても高価です。配信のためだけに自社でプロ用機材を何台も購入することは現実的ではありません。note placeには機材が揃っているので、クオリティの高い配信が可能です。グリーンバックの背景合成なども対応いただいたこともあります。note placeの方がフレキシブルに調整してくれるので助かっています。
note開設キャンペーンで書体見本帳をプレゼント
ーーnoteを始めて、具体的な変化はありましたか。
貫 書体紹介の記事と連動して「2年分の新書体見本帳をプレゼント」というキャンペーンをやったところ、想像以上の応募がありました。Twitterなどでも「届いた!」という声が広がってよかったです。
社内の反応も上々で、いろいろな部署から記事のリクエストが届いています。今後、さまざまな切り口の記事をお届けできるように頑張りたいと思います。
ーーnote自体の運営体制、フローなどを教えてください。
貫 編集部でどんな記事がいいかを話しあって、そこから各執筆者に振りわけています。記事作りで意識しているのは、書体そのものを丁寧に解説するのはもちろん、書体名の由来や、デザイナーがどんな思いで取り組んでいたかといった周辺のストーリーを読者の皆さんと共有することです。記事をきっかけに知っていただいた書体を、次の制作で使ってみようと思っていただけたら嬉しいです。
そのほかにもイベントレポートのように、読者の皆さんが書体をお使いになる際のヒントとなるようなお話もお伝えしています。最近では11月に今年の新書体をリリースしたので、そのバックストーリーを掲載しました。執筆には若手の社員にも加わってもらうことで、自社への理解を深めてもらっています。
ーーイベントとnote、それぞれの運営で苦労した点はありますか?
鑓田 オンライン配信は、最初はノウハウがなくて、手探りで始めました。最初の配信に対するお客様のリアクションは大きかったのですが、現場では反省点が多すぎて、もっとこうしたらよかった、というのはあります。
当時はまだ、配信前にどのくらいの準備をしたらいいのか、どこまでnote placeでできるのかなどを、把握していませんでした。例えば、画面の絵づくりや、テロップを入れたり画面を切りかえるタイミングなど、わからないことだらけ。いまはだいぶノウハウが蓄積できています。このあとは、コンテンツの中身を、より充実させられるといいのかな思います。
貫 記事で大変なのは、何を伝えるのがいいのか、つきつめるところです。テーマは決まっていても、noteを読んでる人が必ずしもモリサワのことをご存知なわけではないので、フォントとモリサワの魅力を同時に知っていただけるよう努力しています。
フォント作成の裏話の記事は最初、どういう構成でやるか悩みましたし、執筆時間もどのくらいかけていいか悩み、ものすごい校正の量でした。
ーーこれから、どういうnoteにしていきたいですか?
鑓田 書体の開発に関わるメンバーが、直接思いや考えを発信できる場所はとても大切だと考えています。また、実際にモリサワのフォントを使ってくださっているクリエーターさんの声を届けることで、記事を読まれる方のお仕事、アイデアのお役に立てればと思います。記事とイベントの相乗効果で、たくさんの方に「フォント愛」を感じていただければ幸いです。
貫 まだまだ始めたばかりで、たくさんのお話をお届けしたいと思っています。新しい書体だけでなく、たくさんの方に馴染みのある定番書体についても、開発当時のエピソードを掲載できればと考えています。ある書体を使いたいと思って調べたときに、noteの記事でさらに理解を深めていただけるよう、内容と量の充実を図っていきたいです。
現在ご提供している1500ものフォントをすべてご紹介するには時間がかかりますが、読んで良かった、役に立ったと思っていただけるよう、ひとつひとつの記事を大切に作っていきます。そしていつの日か、noteがモリサワフォントの図書館のように機能してくれたらと思います。
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