食の困りごとを気軽に相談できる存在をめざして。コープさっぽろの広報誌 「Cho-co-tto」に、noteとSNSの活用術をきく
『Cho-co-tto(ちょこっと)』(以下、Cho-co-tto)は、180万人もの組合員を擁する北海道の生活協同組合コープさっぽろの広報誌です。すでに発行部数57万部を誇る紙媒体ですが、2020年8月からnote proも開始。宅配ECサイトへの誘導や利用促進を目的としています。
TwitterやFacebook、Instagram、YouTubeなどのSNSとも連携し使いこなすのが、Cho-co-ttoのnoteの特徴。noteとSNSの使い分けやnoteの位置づけについて、同組合広報部 広報・メディアチームの西明 由希恵さん、広報部編集制作チームの能戸 英里さんに聞きました。
ウェブ開発には運用管理費がかかった
ーーなぜnoteをはじめたのかを教えてください。
西明 コープさっぽろの宅配ECサイトをリニューアルする話と、広報誌『Cho-co-tto』のウェブサイトのリニューアルの話が重なったのがきっかけです。
コープさっぽろがタッチしきれていないのは、若い人たちです。とくに北海道の20〜40代の子育て世代で、離乳食などをきっかけに、子どもが安心して食べられる食材を求める人に、コープさっぽろの商品を使ってほしいと考えました。
そこで2020年8月に、宅配ECサイトへの流入を促し、同時に広報誌『Cho-co-tto』をPRする場所になればと、note版「コープさっぽろの広報誌 Cho-co-tto(ちょこっと)」を始めました。
ーー『Cho-co-tto』とは、どんな広報誌なんでしょうか。
能戸 北海道の食をテーマにしたフリーペーパーです。北海道で57万部を配布しており、10〜80代まで幅広い読者がいます。
毎号ひとつ北海道の食材を取り上げ、生産者さんにフォーカスしたり、食材の豆知識を紹介したり、食材をおいしく食べるためのレシピの提案をしたりしています。2020年7月に100号を迎えました。
ーー公式サイトがあるなか、なぜnoteを始めたのでしょうか。
西明 もともと、コープさっぽろの公式サイトとは別に、広報誌『Cho-co-tto』だけの「ちょこっとWEB」というオウンドメディアをやっていました。
人手が足りず、「ちょこっとWEB」の更新作業は編集チームが、それ以上のメンテナンス作業などは外部の制作会社に依頼して運用していたのですが、メンテナンス費などにけっこうお金がかかるのが悩みでした。
そのころ、コープさっぽろのデジタル化を推進しているチームが、note proで「コープさっぽろDX」を始めてうまくいっているようだったので、軽い気持ちで、無料のnoteで試してみようか、となりました。
ーーその後、有料版のnote proにされましたが、なぜでしょう?
能戸 「ちょこっとWEB」では、運用管理費として外部制作会社にnote proと同額くらいの費用を払っていました。これに追加で、SEO対策やサイト修正などの見積もりを出してもらったところ、その都度、何十万円と費用がかかることがわかりまして……。こんなに費用がかかるのか、困ったな、と。
note proに変更しても、そのほうが安い、という判断です。
ーーnoteには、どんなコンテンツを出していますか?
能戸 冊子版の本誌『Cho-co-tto』からの流用が8割と、noteオリジナル記事が2割です。本誌は誌面や文字数が限られ、どうしても深い内容までは紹介し切れません。そこで、拾いきれなかったネタや、深掘りしたい内容を載せています。たとえば、読者からのアンケートへの返答や、需要はあるけれど本誌での展開が難しかった離乳食レシピ、記事の背景などです。
ーー更新頻度を教えてください。
西明 スタートしてから勢いをつけるために月20〜30本出していましたが、運用の負担も考えて、来年度からは絞っていく予定です。
スタッフが料理から撮影、コーディネートまでを担当
ーー運営体制を教えてください。
西明 内部に編集制作チームがあり、私たち2人を入れて6名でやっています。編集制作チームのメンバーが本誌『Cho-co-tto』の制作も行っています。
noteの記事制作は分業制です。一人ひとり得意不得意があるので、編集担当、画像加工担当などと、業務を分けています。
立ち上げ時は、西明と能戸の二人で写真撮影や執筆まで全部やっていたのですが、とても二人では回りませんでした。本誌編集スタッフに協力してもらうようになってから、いろいろ試行錯誤した結果、いまの分業体制になりました。
ーー料理写真はどうやって撮っていますか?
能戸 本誌からの流用が多いのですが、新たに撮り下ろすこともあります。本誌ではカメラマンに依頼し、彼らのスタジオに行って撮っています。
西明 本誌では切り抜き画像でレイアウトすることも多く、その場合は加工しやすいよう白い背景で撮影するのですが、noteにその記事を流用する際は、能戸がスタイリングし撮り直しています。
能戸 note用に撮り下ろすときは、カメラマンには依頼せず、私の自宅でセッティングして、料理を作って撮ります(苦笑)。料理の場合、やはり写真がきれいでないと読者にアピールできないので、ライティングやスタイリングにもとても気を使いますね。
料理を美味しそうに撮影するのは本当に難しくて……。いつも四苦八苦しています。いまでも試行錯誤して何とか撮影しています。
ーーnoteに載せるコンテンツはどのように決めていますか。
能戸 noteに載せるネタは私たち二人で決めています。話題になっていることとか、流行していること、豆知識やすぐに役立つ情報など、ネットと相性が良さそうなことをまとめ直しています。
まだ書くのに慣れていない編集部員に記事作成の練習をしてもらう場所としても、noteを活用しています。
西明 例えば「にんにく1片って何グラム?」とか「すじこのほぐし方」のような豆知識や、地域色のあるネタはSNSでも読まれやすいです。「役に立って地域色がある」記事は人気になりやすいですね。
「すじこのほぐし方」の記事はいまだに読まれてて、Google検索の上位に上がってきます(2021年1月現在)。
ーーSNSはどなたが担当しているのでしょうか。
西明 SNSは同じ広報部の別チームが運用しています。Twitter、Instagramなどでそれぞれ担当者がいて、連携して動けるように情報交換しています。
ーーSNSとnoteの切り分け、役割分担を教えてください。
西明 それぞれのSNSでターゲットや性格、フォロワーが違うので、合ったネタを提供しています。
例えばTwitterでは、「役に立つ情報や、ぱっと見ておもしろいもの」が目に留まりやすいようです。
同じ離乳食レシピでも、noteは読み物の記事にしていますが、Twitterでは漫画にしたりと、媒体に合わせて出し方を変えています。noteは、文章をじっくり読んで自分のものにしたい、という人向けと意識してコンテンツを作っていますね。
一方で、Instagramにはnoteにこんな記事を書いた、という更新通知を載せています。
このように、受け手の色に合わせて、コープさっぽろをあまり知らない人たちにアプローチする手段のひとつとして使っています。
noteをはじめてInstagramのフォロワーが月100人単位で増え始めた
ーーnoteを始めたことで変わったことはありますか。
西明 Instagramでnoteの記事を紹介するようになってから、Instagramのフォロワーが月100人以上のペースで増えています。Instagramの広告にお金をかけていた時期もあったのですが、そのときよりも増えました。
調べてみたら、Instagramを見てから「ちょこっと note」で検索してnoteを見にきている人が多いようです。食に興味がある若いお母さんや、食にまつわるお仕事をされている方に届いている感触で、note読者とコープさっぽろ公式Instagramのフォロワーは相性がいいのかなと思います。
能戸 例えば「いくら ほぐし方」など、インターネットで検索するとCho-co-ttoのnoteが検索上位に出てきて驚くことがあるので、何気なく検索している人にも届いているかもしれません。
ーーユーザーからの反響はどんな形が多いのですか。
西明 Instagram、TwitterなどSNSでコメントをもらうことが多いので、必ずチェックしてできるだけ記事に反映し、質問にはお返事をするようにしています。
読者からの「以前切り抜きしたレシピが、どこかにいってしまったので困っています」との要望で、過去に本誌で紹介したキーマカレーのレシピを載せたこともあります。
能戸 note掲載後「リクエストに応えていただきありがとうございます!」と編集室にお礼のコメントが届きました。情報を一方的に発信するだけではなく、読者の役に立てたことがとてもうれしかったです。
本誌では、毎月400〜500件のアンケート回答があります。おもに30〜40代がアンケートに答えてくれ、50代には熱いファンもいます。一方、SNSのコメントは小さいお子さんがいる人が多い印象です。
レシピ通りに作った写真を送ってくれる人もいるので、そちらもnoteに掲載しています。また、その記事のQRコードを誌面に載せて、noteに飛べるようにもしています。本誌は製作工程上、写真をいただいてから掲載誌ができあがるまでに、どうしても2ヶ月のタイムラグが出てしまいます。読者に対して素早く反応できるのが、noteのいいところですね。
ーーnoteを今後どういうアカウントにしていきたいですか?
西明 普段の生活で、兄弟姉妹や身近な人で、困ったときに知恵を貸してくれる存在っていますよね。「あの人に聞いたらいいんじゃない?」というような。読者が子どもの食生活について悩みや相談があるときに気軽に話しかけられる知り合いのお姉さんみたいな、そんな立ち位置のアカウントになれればいいな、と思っています。
あとは臨機応変に、需要があるものにどんどんチャレンジしたいです。たとえば離乳食なら、何をどのくらいの量で、どうアレンジするかといったことをライブでやり取りして、記事にするなどの取り組みもやってみたいですね。
能戸 読者との距離感が近い、すぐ反応できる場所にしたいと考えています。「コープならどうにかしてくれるだろう」という読者の声に応えたいです。
生協の理念として「安心安全を提供する」があります。組合員さんの意見をすぐ拾って担当者に伝えられるような、コミュニケーションを取れる場所にしたい。
宅配ECサイト「トドックサイト」や宅配カタログでは、伝えられることが限られているので、載せきれないものをnoteで発信したいと思います。
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