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月200万PV!デジタルマーケで「成果を出す記事」とは?LIGブログ編集長に聞くライティング術

どうやって「読まれる記事」をつくればいいのか。そんなお悩みを持つオウンドメディア担当者は多いのではないでしょうか。

そこでイベント「noteとSNSで広がる!企業の情報発信戦略」では、書籍『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』著者でもあるLIGリグブログ編集長の齊藤麻子さいとう まこ(まこりーぬ)さんをゲストにお迎えし、マーケティングの成果につながる記事の書き方を伺いました。

企業のSNS公式アカウントやオウンドメディア、PRや広報を担当している方は必見です!

※本記事は2024年5月16日に開催された「noteとSNSで広がる!企業の情報発信戦略」のイベントレポートです。


デジタルマーケで成果を出す記事とは?

成果を出すWeb記事には2種類ある

——デジタルマーケティングの成果を出すための記事には、どのような種類や特徴がありますか?

齊藤麻子さん(以下、齊藤)  大きく分けて2つあります。ひとつは直接コンバージョン(お問い合わせや購入などユーザーに起こしてほしいアクション)につながる記事、もうひとつは純粋想起(ニーズが生まれたときに商品サービスあるいは社名を思い出してもらうこと)を獲得する記事です。

直接コンバージョンにつながる記事は、すでにニーズがある読者に向けたもので、検索上位を狙ったサービス比較記事などが該当しますね。

一方、純粋想起を獲得する記事は、読者の記憶に残ることを目的としています。例えば、実務で繰り返し使えるテクニックをまとめた記事や、固定観念を覆すようなインパクトのある内容の記事などが効果的です。

直接コンバージョンを獲得する記事

——直接コンバージョンを獲得する記事のつくり方を教えてください。

齊藤 大事なポイントは、ニーズのある人に記事を届けること、ニーズに合わせたコンバージョンを用意すること、の2つあります。

ニーズのある人とは、下図の「サービスを探している人」のこと。例えば、システム開発が事業であるLIGにとっての「サービスを探している人」は、システム開発会社を探したい人。この人が入力した検索キーワードで自社の記事がしっかりと上位に上がり、すぐにお問い合わせや資料請求につながる導線を用意することが大事なんです。

記事の形態としては、サービス比較記事が検索上位に上がりやすく、再現性の高い施策といえますね。

直接コンバージョンを獲得する記事の例
『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』より抜粋

齊藤 でも限界もありまして……。特にBtoBで顕著ですが、「システム開発会社」みたいなニーズがはっきりしているキーワードは、それほど数がないんです。なので、比較記事をメインとして情報発信を始めると、すぐにキーワードが枯渇してしまうんですよ。

その場合は「ノウハウを探している人」に向けて記事を制作するといいと思います。例えばシステム開発の領域でいうと、オフショア(海外企業への業務委託・発注)に興味があるけれども、失敗が怖いから口コミ情報を探しているような方に届く記事。このケースでは、キーワードに対して、失敗を回避するための方法をまとめた記事があると、見つけてもらえます。

ただし、ノウハウを探している人に対してのコンバージョンを「お問い合わせ」に設定するのはおすすめしません。用意するならホワイトペーパーやお役立ち資料ですね。なぜなら、この人はまだ自社サービスに興味はなく、周辺情報がほしい状態だから。ニーズにあったコンバージョンを設定することが大事です。

記憶に残る、純粋想起につながる記事

——純粋想起につながる記事とはどんなものでしょう?

齊藤 自由にテーマを決められるので企業の個性を出しやすいですが、その分、難しさもありますね。私の経験則では、3つのカテゴリーに分けられます。

純粋想起を獲得するには①実務で繰り返し使える②長年の知見が詰まっている③固定観念を覆しているのいずれかが必要

齊藤 1つめは実務で繰り返し使える記事。例えば、業務フローに組み込める「チェックシート」をまとめた記事や、辞書的に使われる「◯◯大全」など、ブックマークに登録しておくタイプの記事です。

何度も読み返す記事は、印象に残りませんか?繰り返し接すると好意度や印象が高まる効果を心理学では「単純接触効果」といい、純粋想起の獲得につながるんです。このカテゴリーの記事は奇をてらう必要がないので、取り組みやすいのではないでしょうか。

2つめは、長年の知見が詰まっている記事ですね。数十年にわたって行われた綿密な調査結果や蓄積されたノウハウなどは、ほかでは真似できない唯一無二の記事として人々の記憶に残ります。ライトなノウハウ記事30本などより、入魂の1本を書いたほうが、ゆくゆくは多くのお問い合わせにつながると思いますよ。

3つめは、あまり再現性はないのですが、固定概念を覆している記事です。以前、お客様と「世の中に溢れる「うざい広告」をプロが徹底解説!マーケターは必見です」という記事をつくったことがありました。記事をスクロールすると、実際にうざいポップアップ広告で出てくるギミックを仕込んだ記事です。予想外のことが記事で表現されると記憶に残りますよね。

ここまでギミックを効かせなくても、「週3回メールを送っても配信解除率は上がらない」(参照:「メール送りすぎ?」 という遠慮は不要。メールマーケティングの実態調査 /株式会社WACUL)といった、固定概念を覆すハッとするような内容の記事は読者の記憶に残ります。もちろん、十分なデータやファクトがあった上での話ですが。

——その業界の常識に反したノウハウを知っているのなら、それをうまく使おうということですね。最近の記事で、特に注目を集めたものはありますか?

齊藤 SNSでも反響の大きかった「SEOでも重要!『AIっぽくない文章』を作る3つのポイント」ですね。当社に、書いた記事をAI検知ツールに通すと「ほぼAI」と判定されてしまうライターがいまして。本人は一所懸命に書いているのにですよ!?事象としておもしろいので記事にしてもらいました。

また、あくまで当社における話ですが、AI検知ツールでAI率が高く判定された記事は検索順位が上がりにくかったのです。つまり当社やライターにとって死活問題。その課題解決プロセスを赤裸々に語る、彼にしか書けないおもしろい内容になったと思います。

それにLIGブログにとっても、AIに対して感度が高いことをポジティブに伝えられる記事になりました。

——そのほか、想起につながっている記事はありますか?

齊藤 2年前の記事ですが、当社代表の「いま『オフショア開発』に改めて目を向けてほしい理由」です。オフショア開発にはネガティブなイメージがありますが、代表の大山はもともとオフショア開発の会社を起業したことのある人間。なので、なぜLIGでオフショア事業をやっているのか、彼の人生に絡めて想いを伝える記事にしました。

株式会社LIG代表・大山さんの記事「いま『オフショア開発』に改めて目を向けてほしい理由」

齊藤 正直なところ、PVはそれほどなくSEOでも広がっていません。しかし、見込み客がこの記事を読んだときに会社や事業に対する信頼の後押しになるよう、事業紹介ページからリンクを張っています。

「いい記事」が書ける「いいライター」の条件とは?

——企業の方にお会いすると、よく「文章力がないので記事が書けません」といわれます。いいライターの条件とはなんでしょうか?

齊藤 前提条件が“オウンドメディアでの情報発信”なら、大事になるのは熱量業界理解ですね。

熱量とは、書きたいというエネルギーそのもの。そのエネルギーがあるからこそクオリティーの高い記事に仕上がると思っています。ここでいうクオリティーとは日本語としての美しさではなく、書かれている内容が読者の信頼や興味につながるという意味です。

というのも、私が全社員の執筆記事をチェックしていた時期があり、記事の質にバラツキのある社員がいたので、どういう条件なら記事の質が高くなるのか観察したことがありました。すると、その社員が書きたいテーマのときは記事がハイクオリティーになることがわかったんです。

正直なところ、Web記事は公開することへのハードルが低いんですよ。間違いに気づいたら取り下げられるし修正もできる。なんなら内容の薄い記事だって出せちゃう。だからこそ熱量がある記事は、Web上で目立つと思います。

——とはいえ、記事を書き慣れていない人がテーマを見つけるのは難しくないですか?

齊藤 はい。なので現場の社員に記事を書いてほしいときは、下図のような問いを用意してコミュニケーションしていますね。

書きたい記事テーマを見つけるための問い。お客様からよく聞かれること、褒められること、など

——業界理解についての解説もお願いします。

齊藤 やはり業界理解がないと、言葉の使い方や重要なポイントの勘所がズレるんです。外部ライターに記事を書いてもらったことのあるオウンドメディア担当者には、共感していただけると思います。

特にBtoB、例えばシステム開発やWeb制作に関する記事など専門性が必要な分野で顕著ではないでしょうか。それなら業界理解のある人、つまり社員に書いてもらったほうがいいと思います。業界理解と熱量があれば、日本語が多少つたなくてもおもしろい記事になりますから。

忙しいなか時間をかけて記事を制作するのなら、「どうしても伝えたいです!」「めっちゃおもろいんです!」ということを記事にしたほうがいい。自分もおもしろがっていない記事を、誰がおもしろがってくれるんだろう、くらいの気持ちで記事制作に向き合っていただきたいです。

業界理解がないと、書きたい気持ちが湧き上がらない、言葉の使い方、ポイントがズレる

——ライティングの外注を完全否定しているわけではなく、向いているライターを見つけましょうという話ですよね。

齊藤 はい。やはりビジネスなので、企業によっては記事執筆にリソースをかけられないこともあると思います。でも同時に、経営者が社員に向けて「業務としてみんなで情報発信をやっていこう」と旗を振ることも大事だと思うんですね。ときどき、社員有志がボランティアで記事を書いている事例をお聞きしますが、それだとオウンドメディアは続きません。

立ち上げ初期は、あえて数は見ない

——オウンドメディアを始めたばかりの人は、効果測定をどのように考えればいいですか?

齊藤 正直なところ、立ち上げ時はあまり成果を追いかけすぎないほうがいいと思いますね。オウンドメディアで成功している会社の話を聞くと、どこもKPIはあえて見ていないことが多いように感じます。

なぜかというと、オウンドメディアの成果が出るのには時間がかかるから。効果測定をすると落ち込むだけなんですよ(笑)。

——最初はきついんですよね。効果を見ないあいだは何を見ているんですか?

齊藤 行動目標です。記事数やSNSへの投稿本数、動画の本数を決めて、それがきちんと出せているかどうか。あとは見るとしたら、PVやどれだけシェアされたのかなどの、短期的に確認できる指標でしょうか。

その企業のポテンシャルや競合によるので一概にはいえませんが、理想は半年経ってからコンバージョン数をちらっと見る感じですね。もしこの進め方が不安なのであれば、外部のパートナーに声をかけてフィードバックをもらい、自分たちの方向性を確認するといいのかな、と。

これを経営者など責任を持っている人が覚悟を持ってやり切れば、継続して活動できると思います。

——やはりボトムアップでオウンドメディアをやるのはリスクがありますよね。もし上司に成果を聞かれたら、半年くらい黙って見ていてください、というのがひとつの回答かもしれません。

齊藤さんとモデレーターの徳力さん

自分の意志だけに頼らず、仕組み化することが継続のコツ

——事前にお聞きしたところ、齊藤さんは実は書くことがあまり得意ではなかったとか。同じような人に向けて、継続して書けるようになるためのアドバイスをお願いします。

齊藤 自分がライティングで飯を食うとはまったく思っていませんでした。でも、本当にやらないといけない状況になったら、人間やるじゃないですか。できないのは目的の設定が曖昧だったり、ほかの仕事に対して優先順位が低かったりするからだと思うんですね。

執筆の優先順位を上げるためには、誰かに仕事として記事の締切を設定してもらうんです。ほかにも、上司や同僚に「毎週月曜日までに1本記事を書く」と宣言したり、社内で記事の進捗を共有する場を設けたり。

つまり、自分一人で抱え込むのではなく、周囲の力を借りながら、執筆に取り組む環境を整えることが不可欠だと思います。

——本日は貴重なお話をありがとうございました。

(敬称略)

▼イベントのアーカイブ動画は以下からご覧いただけます。

登壇者プロフィール

株式会社LIGリグ
LIGブログ編集長 / 人事部長

齊藤麻子さいとう まこさん

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

モデレーター 

徳力 基彦
noteプロデューサー

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interviewed by 徳力基彦 text by 本多いずみ