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書く人の特徴や個性に任せて、テイストはバラバラ。「手触りのある発信が風通しのよい会社をつくる」NECネッツエスアイのインナーコミュニケーション

社内のコミュニケーション活性化に悩んでいる企業は少なくないのではないでしょうか?

NECネッツエスアイさんは7500人以上の従業員を抱える大きな会社。NEC系列の通信工事会社で、インフラの通信・保守からデジタルソリューションまで幅広く対応しています。近年では、“Zoomの日本国内販売店第一号”として注目されています。

これだけの大所帯だと、社内のコミュニケーションは容易ではありません。そこで同社では、コミュニケーション変革やイノベーションを起こしやすい社内風土の醸成をめざして、「コーポレートカルチャーデザイン室」を設立。社内に向けてnoteで発信をしています。

ここでは9月28日に開催された「note proミートアップ」イベントの内容を元に、インナーコミュニケーションにおけるnote運営のコツを紹介します。

note pro ミートアップとは?
note proを活用する法人クリエイターのみなさんに向けて毎月開催しているイベント。法人クリエイター同士がnoteを運用する上での学びや悩みを共有したり、社外での横のつながりをつくることで、よりnoteを活用いただくことを目的にnote proユーザー限定で開催しています。


「日本一コミュニケーションのよい会社」を目指す

「社内の縦割りを解消してコミュニケーションを活性化しないといけない」。

このような危機感を持って社長に直談判した榮永有希子えいなが ゆきこさん、小尾 正和おび まさかずさん、北川 龍樹きたがわ りゅうきさんの3名で立ち上げた社長直下組織が「コーポレートカルチャーデザイン室」です。連結で約7500人もの従業員がいる同社。情報が社内で伝わりにくいことも悩みでしたが、社員の心理的安全性をもっと高めたいという目的もあったとか。社員のみんなが自由闊達に意見を言いづらい社風がありました。

コーポレートカルチャーデザイン室ではまず、
「日本一コミュニケーションのよい会社にする」
という目標を掲げ、そこから、
「会社のパーパス、ミッション、バリューに興味持ってもらうには?」
さらには、
「みんなが会社を好きになってもらうには何が必要か」
と問いを立てました。

立ち上げから1年間で、少人数のメンバーながらも社長の声を届けるラジオや社長のYouTubeや中途入社の社員のためのランチ会、Zoom飲み会などを立て続けに開催。全社で会社の改善したいところを話したり、イノベーションを加速させるためのピッチコンテスト、パルスサーベイの導入などを実施してきました。

このうちの1つがnoteでおこなう社内向けの発信でした。
なぜnoteだったのか。
立ち上げに関わった北川さんはこういいます。

「それまでは、自社のwebサイトやオウンドメディアに情報を出していました。どの会社にも通じることですが、きれいすぎる表現は『手触り』を感じづらく、自分ごとにしづらいと考えていました」。

そんなときにヒントになったのが、クラウド人事労務ソフトを運営するSmartHRさんが、noteで始めていた「オープン社内報」でした。

書き手の温度感が伝わりやすい“note”というプラットフォームの特性が、北川さんたちがやりたい「手触り」を感じられる発信に合っていたのです。

「社員向けの情報は、いままでなら全社のポータルサイトに出していたけれど、どこか他人事のように感じていました。『伝える』ときに、もう少し相手に歩み寄ってもいいのでは? と考え、きれいな話だけでなく、トライ&エラーしている情報を社内外に発信しようと思いました」。

北川 龍樹さん
コーポレートカルチャーデザイン室 北川 龍樹さん

また、noteを選んだもうひとつの理由が「後から直せること」です。
「noteはいざとなったら修正・追記ができるからやりやすいですね。些細な記事でもあとから追記できるので、プレスリリースより気軽に発信することができます。ここで『手触り』が生まれるのです」。

「キラキラさん」の一日だけを見せられても……

手触りを感じられる記事とはどういうものでしょうか。

「例えば、当社の調達本部が外部の業務アプリクラウドサービスを使って自分でシステムを組み、業務の改善をおこなっている事例がありました。時世が変わり、自分たちでシステムを作れるのです。こういう事例はnoteに書いて、もっと広めるべきだと思っています」(北川さん)

小尾さんは、各社採用ページにも同様のエッセンスがあってもよいのでは? と、言います。

「あらゆる会社の採用ページを見ると、とてもきれいに感じませんか? しかし、『キラキラさん』の一日だけを見せられても内情はわからない。それだけを見て入社してきた人は、ギャップを感じて不幸になってしまうのではないかと思いました」。

コーポレートカルチャーデザイン室 小尾 正和さん

会社の実情をもっと理解した上で来てもらったほうがアンマッチを起こさない、と小尾さんは思ったそうです。

「弊社の仕事は、絶対に落とせない社会インフラ関係を占める割合も多くなっています。実際に来てみたら、想像と違う雰囲気でつらくなってしまった、というアンマッチは生みたくありません。ですから、きれいに取りつくろいすぎず、正直なあるがままの会社の姿を出していくのはありかなと。実態をともなう発信で、うちの会社はこんなことをやっているのか、いい会社だな、と思ってもらうのが目的です」。

ターゲットや目的をあえて明確化しないで好きに書く

noteは、コーポレートカルチャーデザイン室とコーポレートコミュニケーション部(広報)が中心になって運営しています。月1回のペースで会議をし、ネタ探しと執筆を交代でおこなうスタイル。基本的に全員が企画・執筆を担当し、社内で面白そうな動きを見つけたら、イレギュラーに書くこともあります。平均すると更新頻度は週1回くらい。全員が他の業務との兼務で運営に関わっているので、多少スケジュールが遅れてもOKにしています。

マーケティングを厳密におこなったり、ターゲットや目的を明確化することはしておらず、「手触り感のある多様な発信になることを優先し、あえて柔軟性ある戦略をとっています」といいます。

「本来、PVだけを稼ぐのなら『マーケティング的にこうだから、この情報を出そう』とやるべきです。しかし弊社はなにより楽しく書いており、テイストはバラバラです。書く人の特徴や個性にまかせ、さまざまな発信をおこなっています」(小尾さん)

ネタ探しのためにオンライン/オフラインさまざまなところでアンテナを張っています。北川さんは、社内Slackを探索してネタを見つけることが多いそう。「いろんな人の投稿を覗いていたら、YouTubeにクオリティの高い防災情報のアニメを作って載せている部門があったので、記事化の相談をしたり。新たな発見があって、面白いですよ」。

小尾さんは出社する機会が多いことを生かし、さまざまな人に直接話を聞きにいくそうです。「上層部の人は出社しているので、例えばプレスリリースの内容を深く掘り下げて聞いてみたりしています。足で稼ぐ昭和スタイルです」と笑います。

いまは運営体制も整っていますが、noteを始めて半年ほどは特に定例会議をせずに進めていたので途中でネタが見つからなくなり、息切れしてしまったとか。

「これはまずいと思って、その後、編集会議を定期開催し、みんなで情報交換や相互アドバイスをすることにしました」(小尾さん)

ゆるくスケジュールを組んで、誰が何を書くか決めると、各自がネタ探しのアンテナを張れるようになり、コンテンツづくりも安定するようになりました。書き手の文体やテイストはあえて統一せず、誤字脱字のみをチェックする体制にしたのも功を奏したようです。

外部のインフルエンサーをインナー広報向けに活用し、「一緒に取り組む」

同社では、エンジニア兼タレントの池澤あやかさんと契約し、社内向けのプロジェクトに入ってもらっています。池澤さんはテック系の発信に強みがあり、5万人のフォロワーがいるインフルエンサーでもあります。広告塔的な立場ではなく、共に働くエンジニアとして「仕事で何か一緒に取り組もう」という姿勢にこだわっています。

「当社では、オフィスのLANを引いたり、携帯の基地局を作ったりしています。池澤さんはDIYが好きで電気工事士資格を取りたいと言っているほどで、私たちの業務と親和性が高く、インナーコミュニケーション活性化の一環として、企画立案からお願いしています。今後は彼女を巻き込んだアイデアソン・ハッカソンに発展させていきたいですね」。

池澤さんと新しい取り組みをやりたい! という部署からの声がけも増えました。

社員のエンゲージメントも採用数も向上

さまざまな施策の結果、社員からの「風通しのよさ」に対する評価も上がりました。

求人サイト「OpenWork」で測った「社内の風通しのよさ」のスコアが、2年で3.20→3.75にアップ(2021月10月29日時点)。社内のエンゲージメントが上がり、コーポレートカルチャーデザイン室を立ち上げたときに掲げた「日本一コミュニケーションのよい会社」という目標に向け、推進しています。

採用にもいい影響が見られました。

就活情報サイト「楽天みん就」と日経コンピュータがおこなった「IT業界就職人気ランキング」調査では、前回から43ポイントアップの39位まで順位を上げています。採用はここ2年で、エントリー数1.62倍、選考参加数1.22倍に増えました。

「採用に関しては、note単独ではなく複合的な取り組みの結果ですが、その複合性や、発信内容の手触り感も功を奏したと思います。大学とのコラボプロジェクトの記事はよく読まれ、スキ数も多いです。さらにここを見て中途の人が来てくれればありがたいな」と小尾さん。

最近の20代は情報のキャッチアップがとても上手で、手触りのある情報を企業側がしっかり発信していればきちんと受け取ってくれる印象だそうです。

小尾さんは次のように抱負を語ってくれました。

「第一のねらいは社内への情報発信・オープン社内報でしたが、そろそろ1年経って認知も上がりました。これからは、もう少し骨太な発信を徐々に増やそうと話しています。例えば、新規の社内制度や施策の背景などをきちんと語るコンテンツなども作っていこうと思っています」。

今後の目標として「さらに社内外にファンを作って応援してもらうこと」を目指しています。「自分で発信したい!」という社員が増える風土にするためには社員がプライドや誇りを持てるような会社にしなくてはなりません。

そのための、社内のコミュニケーション活性化については、確かな手応えがあるようです。今感じている手応えを手がかりに、外部の人も巻き込みながら、さらに外の世界との接点を求めて発信の幅を広げようとしています。

text by 野本響子

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