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「本当にほしい人材」が集まる採用広報のポイントとは? 採用代行サービスのマルゴト株式会社 今さんに伺います。

企業はnoteやSNSを活用してどのように情報発信をしていくべきか、専門家や有識者にお聞きするイベント「noteとSNSで広がる!企業の情報発信戦略」。今回のゲストは、スタートアップから大手企業まで430社の人材採用を支援しているマルゴト株式会社 代表取締役の今 啓亮こん けいすけさんです。

「本当にほしい人材」に集まってもらうために、企業はどのようにnoteやSNSを活用して、情報発信をしていくべきでしょうか?『中途採用の定石』(日本実業出版社)を執筆された今さんに、採用広報のポイントをお聞きしました。

※本記事は2024年7月に開催した「noteとSNSで広がる!企業の情報発信戦略」から一部を抜粋したイベントレポートです。


採用計画の中途採用比率が、7年で2倍に

——最初に、今さんのバックグラウンドを教えてください。

今さん(以下、今) 東京のベンチャー企業で3年働いて、カンボジアで人材紹介会社を経営し、2015年にマルゴト株式会社(以下、マルゴト)を創業しました。

マルゴトは、「まるごと人事」という月額制の採用代行事業からスタート。どんな人を採用したいのか、求人票やスカウトの文章作成、書類選考、スカウト送信、面接の日程調整、毎週の数字報告などをして、企業と一緒にPDCAを回しています。

私の考えは、「採用を制するものは、経営を制す」。私自身も経営者として採用に注力していますし、お客様にも「企業を成長させたいなら、採用は非常に大事です!」と啓蒙しています。

——事業内容の「採用代行」という言葉は、以前からありましたか?

今 創業した2015年当時はありませんでした。人材採用の手法が増えていくにつれて、次第に採用代行という領域ができた感じですね。

マルゴト株式会社代表取締役 今(こん)さん

——採用市場のトレンドを教えてください。

今 採用市場には「買い手市場」と「売り手市場」があります。人材が多い時代は求職者が企業に雇用をお願いする立場の買い手市場になりますが、人材が少ない時代は企業が「うちにきてください」とアピールする売り手市場になります。いまは売り手市場です。

このような背景から、採用計画の段階から即戦力となる人材をとろうと企業が動いているのが、トレンドですね。「新卒採用だけでは人材確保が間に合わない」「新卒の離職率が高い」こともあり、大手・中小問わず中途採用をする企業が増えています。日本経済新聞によると「2023年度の採用計画に占める中途採用の比率は過去最高の37.6%となり、16年度から7年で2倍に上昇した」とあり、もはや新卒が辞めた穴を中途採用で埋めるだけでは解決しなくなってきました。

これは企業側の変化ですが、個人のキャリア感の変化も関係しています。従来、新入社員は入社した会社で「定年まで働く」考えが定着していましたが、いまは「いい話があれば次の会社にいく」人が多くなっています。就活イベントで学生さんに「どんな会社にいきたいの?」と聞けば、「1社目はこういう経験を積んで、2社目はこういうポジションで——」と転職を前提としたキャリアデザインを視野に入れた答えが返ってくるんです。新卒も2社目からは中途と呼ばれますから、中途採用比率は必然的に増えていきますよね。

個人のキャリア観の変化したことで、企業も中途採用を重視
新卒は、転職前提でキャリアアップを考えている

転職活動前に採用する時代の到来

——かつてのように、応募者リストから企業が人材を選ぶような時代ではないのですね。

今 はい。企業が人材からのアプローチを待つのではなく、企業からアプローチすることが売り手市場の動き方になります。

結構驚くのが、転職活動中の人に「どんな転職活動をしていますか?」と聞いてみると、「企業からメッセージがきたので面白そうだから面談にきました」「SNSで求人を目にして『話を聞きたい』ボタンを押しました」という人が多いこと。従来のような、退職を考えて、履歴書を完璧につくって、求人サイトを見て応募するのは、オーソドックスな転職活動ではないんです。

——いまの仕事に不満はないけれど、面白そうな会社を探しておこうと?

今 そうです。いますぐに転職を、と思っていない人でも、面白そうな企業なら話を聞きにいきます。つまり企業が「転職活動をする前の人を採用する」ようになっているんですね。

ですから、企業は攻めの採用アプローチをしなければなりません。今日のテーマでもある「企業自らが情報発信をしていくこと」が必要なんです。

——企業は待ちから攻めへと価値観を見直さないといけませんね。

今 はい。いい人材ほど転職活動をする前に採用するイメージです。

うまくいく会社は、採用活動の「幅」が違う

——採用がうまくいっている会社と、そうではない会社の違いは何ですか?

今 採用への取り組み方の幅の広さが違うと、私は結論づけています。要は募集を出すだけ、採用広告を出すだけ、エージェントに頼むだけ、という採用活動は古くなってきました。

採用は総合プロデュースの時代へ
総合的に会社をどう打ち出し、どんな職場にするかを全部含めることが採用活動

——もし採用が経営にとって重要だと捉えるならば、経営者の視点も含めて、あらゆる側面から採用活動に取り組む必要がありますね。その中に情報発信もある、と。

今 例えば、職場の魅力を記事にすることも大切な情報発信です。こうお伝えすると、自社の魅力は何だろう?と採用担当者は悩まれるんですが(笑)。

実は、職場の魅力を一番知っているのは、客観的に自社を見ている新入社員です。「なぜこの会社に入ったのか」「入社してから3ヶ月たってどう思ったか」「前の会社と比べて何が違うのか」など聞いて記事にしてみてください。

また、退職者と向き合うことも大切です。退職理由を聞けば、求人の募集文が期待値を上げすぎていたことや、どこでミスマッチが起きたかに気づきます。募集文や職場の改善ができますよね。

採用活動は、新入社員からも退職者からも学べることが多く、それが情報発信に役立ちます。できることは、いっぱいあるんですよ。

加えて、企業が情報発信を始めるうえで私がまず伝えたいのが、広報と採用広報の違いです。

——広報と採用広報は、どのように違うんですか?

今 広報は会社やサービスの認知。採用広報は職場としての認知です。採用に力を入れるのなら、どちらもやるべきです。有名な企業でも、どんな職場でどんな人が働いているのか、わからないことは結構ありますよね。

当社の採用広報では「こういう大手で人事をやっていた人がマルゴトに入りました」という記事で職場の認知をとっています。読んでほしいターゲットを決め、どんな職場だと認知されたいかを設定し、面接前など読んでほしいタイミングを決め、コンテンツをつくって配信する。これが1つの形です。

下記の社員インタビュー記事は、人事の仕事をバリバリにこなしていた方がマルゴトに転職したらどうなったかを紹介したものです。当社は「採用代行」という言葉の雰囲気とフルリモート体制のためか、以前は緩やかな業務体制の会社といったイメージを持たれていました。その認識を変えるための記事です。

記事「インハウス人事よりも、感謝される?まるごと人事がパートナーとしてクライアントの採用成功に「伴走」できる理由」
採用代行は採用の専門職であり、人事経験者が活躍できることを紹介する社員インタビュー

——目的が異なる広報と採用広報ですが、情報発信においてアカウントを分ける必要はありますか?

 会社のリソース次第ですね。正解はありません。当社の場合は、オフィシャルな内容は会社のアカウントに、私個人の想いを伝えたいときは個人アカウントに掲載しています。

また、情報を届けるという観点なら、面接の前に求職者に読んでほしい記事をピックアップして、直接メールでURLを送ることまでが採用広報だと私は捉えています。

採用広報のネタは、面接で拾う

——採用広報の観点で記事を書きたいと思っても、「どんなことを書けばいいのかわからない」という方は多いです。何かコツはありますか?

今 一番簡単なのは「面接で聞かれたことを書く」。例えば「フルリモートだと聞きました。出社は1回もないんですか?」とよく聞かれるなら、これに回答する記事を書けばいいんです。面接での質問は求職者が「もっと知りたい」「ここが不安」と思ったポイントであり、企業が伝えたい職場の魅力とも重なる領域です。

また経営者は、自身がいつも考えていることを発信してください。なぜなら経営者は、なぜ自社が面白いのか、何に悩んで誰と一緒に問題を解決したいのかなどを、一番熱量を持って語れる人だから。自ら記事を書くことをおすすめします。

私自身、悩みを吐露した記事を掲載しています。「器用貧乏だ」「ゼネラリストすぎて何をしたらいいのかわからない」と悩んでいたこと、だから採用のスペシャリストになったことを書きました。そうしたら、この記事を読んでくれた人が「あの記事を見て応募しようと思いました」といってくれたんです。いまの事業部長です。

採用の情報発信における3つのTIPS

——採用を視野に入れた情報発信は、何に気をつければいいでしょうか。

今 1つ目は、会社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の設定から、採用活動が始まっていると認識すること。MVVは「こんな会社ですよ」と社内外に伝えるもの、ひいては採用向けのメッセージでもあります。会社のやりたいことをベースに、求職者向けの表現にしましょう。例えばエンジニア採用なら「〇〇をハックする」と業界用語で表現すれば、興味のある人が集まりやすいと思います。

2つ目は、SNSの活用と使い分けです。実は私が効果が一番高いと思うのがFacebook。つながっているのが友人や知り合いなので投稿を見てくれやすいんです。リファラルとも相性がいい。記事を書いてシェアすると、かなり効果が高いと思います。

——本当に採用したいならあらゆる手段で情報発信をすべきですよね。noteに記事を書いて終わりではなく、シェアして広げないと。

今 はい。特にFacebookとXはシェアしやすいですね。Instagramは全社員が集まるイベントや商品といった見栄えのいいものに向いています。TikTokは業種によって合う合わないがありますが、やれるならなおいいでしょう。

3つ目は、自社のエゴサーチをすること。どう情報が伝わっているか、自分で検索してみることが大事です。例え誰も自社のことを書いていなかったとしても、情報発信が足りていないという気づきになります。

下記は、自分の名前で検索したら記事が出てこなかったので作成した自己紹介記事です。求職者に話を伺うと、みなさん、社名と経営者の名前で検索しているんですよ。インタビュー記事は、だんだんと内容が古くなってしまうので、私は2、3ヶ月に1回、自己紹介記事を書き換えています。

記事「はじめまして、今 啓亮です。サクッと自己紹介します!マルゴト株式会社の代表です!」
自分の名前で検索すると記事が出てこなかった。求職者は経営者の名前を検索するので作成

noteでどんな情報を発信するのか

——今さんは、noteでどういう情報発信をされているのですか。

今 私はnoteのヘビーユーザーで100記事以上書いているんですよ。例えば、自社ではどういう資金調達をどんな想いでやっているか、とか。資金調達はスタートアップ界隈でニュースになりやすいネタなので書きました。

記事「融資のみで計2.6億円調達。フルリモートで事業拡大し続ける経営者の頭の中。」
noteに事業に対する想いを書き、 プレスリリースの文末にnoteのURLを載せている

——採用したい熱がゴリゴリに出ている記事なのかと思ったら違いますね。

 別に資金調達の記事を書きましょうという話ではないんです。求職者が読みたい記事を書いたほうがいい。私は直接的に「うちの会社にきてください」とは記事に書きません。

求職者が読みたい記事の例としては、「前職と比べてどうですか」といった社員アンケートの結果はいかがでしょう。「フルリモートで働いて何がよかったですか?」という質問に、「猫の面倒をみられるようになって、うれしい」と想定していなかった喜ばれ方をされ、うれしかったですね。

記事「社員に「前職と比べてどうですか?」というアンケートを実施!結果公開します!」
求職者が気になるだろうことを記事にするのが採用広報のポイント

 1年の出来事の振り返り記事もいいですね。ホームページの「お知らせ」って、あまり読まれないじゃないですか。なので、企業として特に知ってほしい出来事をまとめておくと、求職者も企業の全体像を掴めるお役立ち記事になります。

記事「2023年振り返り。書籍も出版したフルリモート起業家の1年間!」
Xでの情報発信やホームページのお知らせを1年分まとめて掲載。
求職者は直近の出来事を確認できる

——最後に、今日のまとめをお願いします。

今 採用広報は採用のためだけのものに聞こえますが、社内向けにも会社のブランディングにもなります。担当が一人でする仕事ではなく、周囲をどう巻き込むかが大事です。まずはインタビュー記事をつくってみましょう。社員に入社理由や、やりがいを聞けば記事になります。それをSNSでシェアすれば、採用広報の第一歩。ぜひ、がんばってください。

──本日はありがとうございました。

(敬称略)

▼記事のもとになったイベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。

登壇者プロフィール

マルゴト株式会社 代表取締役 
今 啓亮さん

今さんバストアップ写真

1986年生まれ・北海道出身。北海道大学卒。大学在学中に家庭教師仲介で起業。新卒で東京のベンチャー企業に入社し3年間勤務。2013年にカンボジアで人材紹介会社を創業し、登録者15,000人に成長させて2年で会社譲渡。

2015年に東京でマルゴト株式会社を創業。月額制の採用代行“まるごと人事”の提供を開始。全員がフルリモートで働くユニークな組織運営を行う。2022年に本社住所を東京から札幌に移転し、自身も関東から札幌に移住。
著書『中途採用の定石』

モデレーター

徳力 基彦
noteプロデューサー

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Interviewed by 徳力基彦 text by 曽根明子