知られざるストーリーを届け、 企業や商品のファンを育む
note proを導入し、自社の魅力を発信するツールとして活用している企業にお話を伺うインタビューシリーズ「note pro活用企業が語る 発信はじめの一歩」。note株式会社の高越温子さんをモデレーターに、note proを選んだ理由や発信のコツなどをお話しいただきます。
8月26日(木)に開催された第4回目は、「ポテトチップス」や「じゃがりこ」「かっぱえびせん」などでおなじみの、カルビー株式会社の櫛引亮さんにご登壇いただきました。
新聞社やPRエージェンシーを経て、昨年1月にカルビー株式会社に入社した櫛引さん。これまで新聞記者やPRプランナーとして、言葉で伝えることの魅力や必要性に触れ、広報活動の重要性やメディアと企業のあり方について考えてきた経験を生かし、現在、商品広報のみならず企業広報に従事。ホームページやTwitter、SNSなど、さまざまな広報ツールを利用しているなかで、note proを導入した経緯や、企画内容の選定などについてお伺いしました。
登壇者プロフィール
櫛引 亮さん
カルビー株式会社 広報部
岩手県盛岡市出身。新聞社やPRエージェンシーを経て、2020年1月にカルビー㈱入社。「ポテトチップス」や「堅あげポテト」、「フルグラ®」などの商品広報をはじめ、働き方などの企業広報にも従事。新聞記者とPRプランナーの業務経験を活かし、広報戦略の立案から実行までを担う。カルビー公式note「THE CALBEE」の発起人。
note:カルビー公式note「THE CALBEE」
カルビー株式会社
ポテト系、小麦系、コーン系・豆系のスナック菓子及びシリアル食品の製造・販売等を行う食品会社。国内において「ポテトチップス」や「じゃがりこ」等を含むポテト系スナックは70%を超える高いシェアを維持。シリアル食品「フルグラ®」はシリアル市場においてトップシェア。海外展開も行っている。
まずはカルビーのファンとより近づきたい
――簡単に企業紹介をお願いします。
カルビーは1949年の4月に誕生した食品メーカーで、「かっぱえびせん」をはじめ、「ポテトチップス」「じゃがりこ」「フルグラ®︎」などの商品の製造・販売をおこなっております。note proは、2021年の3月30日よりアカウントを立ち上げました。
――これまでにもメールマガジンやSNSを通じた広報活動などさまざまな取り組みをされていらっしゃいます。そのなかでnote proを始められた理由は?
大きな目的は、カルビーのファンと近づくことです。「じゃがりこ」や「かっぱえびせん」といった商品を知っていて、召し上がったことのある方でも、その歴史やこだわりは知らないという方が多いのではないでしょうか。
私自身、入社してからたくさんのことを知りました。それぞれの商品には、それぞれにストーリーがあります。たとえば「ポテトチップス」だけでも年間100種類以上市場に出していますが、そのひとつひとつにたくさんの人の思いや情熱が注がれています。
そういったことに光を当てることで、カルビーという企業により親近感を感じていただけるのではないか、という思いで始めました。
――これまで、そこに焦点を当てた広報活動や取り組みは、あまり積極的におこなってこなかったのでしょうか。
広報部としては当然、いろいろなコミュニケーションは展開していますが、どうしても商品そのもののPRが相対的に多くなる傾向にあります。noteでは、あらためて商品の裏側、カルビーで働く人の熱意、企業の姿勢などを丁寧にお伝えしたいと思いました。
――確かに、「堅あげポテト」が全国販売までに12年かかっているということも、note proのページで初めて知りました。
社内ではよく知られていて“常識”とされていることでも、一般の方々に広く知られているとは限りません。興味深いと思ってもらえる話が、きっとたくさんあるだろうという思いがありました。
「堅あげポテト」は1993年に北海道で販売開始。徐々に販売エリアを全国に拡大していった
――まずはファンに届ける、というところに着目した理由は
みなさんそうだと思いますが、知っている人に勧められたら読む、ということがありますよね。
最終的にはカルビーとかかわりがなかった方に届けたいという気持ちはあります。しかし、まずは社員やいまいるファンの方々にしっかり届けることで、その方々からお知り合いに魅力が伝わればいいなと思います。いまはファンではないけれど、結果的に次のファンになってくださるのではないか、と考えています。
――さまざまな発信手段があるなかで、あえてnote proという場を選んでくださったのはなぜでしょう。
理由は3つあります。
1つめは、商品や企業のストーリーを伝えたいという思いがあり、note proの世界観が、ストーリーを伝えるのに合っていたためです。
2つめは、そのストーリーを丁寧に伝えたいという思いがあるからです。noteには長い文章を読むことに慣れている方々がたくさんいらっしゃるので、その思いにフィットすると判断しました。
3つめは、note の中のクリエイターの方々、法人の方々と関わる可能性があるということです。
コンセプトやターゲットを明確にする
――実際に立ち上げるまでのステップについてお聞きします。大きな企業で新しいことを始めるのはハードルがあるのではないですか?
カルビーという会社は、自立性や当事者意識を大切にしており、新しいことにチャレンジすることに対して寛容な土壌があると思います。立ち上げのステップとしては4つありました。
なぜ立ち上げるのかをしっかり決めなければいけないので、まずは目的やコンセプト、届けたい読者を検討するところからはじめました。
次におこなったのは、それを社内で共有して皆さんの共感をいただくこと。
3つめに、最初の時点で考えた企画を皆さんの協力をいただきながら広報部でブラッシュアップしていく作業。
そして最後に、形にするための手段を考えていきました。
――何のためにやるのかというコンセプトのところから、かなり議論をされたんでしょうか。目的は、商品に関するこれまで伝えられてなかった裏側を届けていくこと、ですか?
目的がしっかりないと、関わる方々もきっと困るだろうと思いましたので、そこはしっかり議論しました。
私たち広報部全体で、商品はもちろん、企業のことをもっとお伝えしたいという思いがあります。そこが一番大きなテーマですね。
――立ち上げ時の社内の反応はいかがでしたか。反発などはなかったですか。
それは一切なかったです。むしろ、しっかりやるためにコンセプトをどうしようかとか、やるんだったらこうしよう、というポジティブな意見がありました。
アンケートも利用し興味を惹く記事を
――noteを立ち上げてすぐに出された創業者の方の記事などは反響がありました。最初にこれを伝えていかなければ、というお気持ちがあったのでしょうか。
一番最初に何を出すかは編集部でかなり検討して、やはり最初は創業の話でしょうとなりました。聞くならどなたがいいか、どういう話になるかをある程度考えて作りました。
――インタビューも交えながら、かなり詳しく書かれています。創業者が19歳で家業を継いだところから始まっていますし。
新卒や中途で入社した方など、社内でもこういった会社の起源や歴史を詳しく知らない方もいると思います。こうしたストーリーは、丁寧に残して、伝えていきたいですね。
――社外の方に発信するのが目的かと思っていたのですが、まず社内や身近な人にちゃんと届けていこうという思いが強かったんですね。
編集部では、ファーストターゲット、セカンドターゲットという言い方をしていますが、最初にお伝えしないといけないのは、社員も含めた身近なところや、既存のファンの方、カルビーをよく知っている方々だと思います。こういった方々に、より深いところまで知っていただきたいという思いがあります。
――もうひとつ読んでハッとしたのが「かっぱえびせん」の「かっぱ」とは何かというところでした。これもnoteの記事の中で明かしてくださっています。「かっぱ天国」という漫画の大ファンでいらして、そこからつけたと。
ええ。私も入社するまでは正直知らなかったことがたくさんありました。食べたことはあるけれど、「かっぱ」の意味を考えるまでは、大抵の人はなかなかしないと思います。たぶん、ほかの商品に関してもそうだと思います。
――運営体制のことをお聞きします。ブランドごとに担当が決まっているわけではなく、それぞれの方が自由に自分のやりたい企画を持ってくるということですか?
このネタは誰が担当というのは決めず、主体性を重視しています。ただ、例えば私は社外広報として「ポテトチップス」や「フルグラ®」を担当していますので、そういった話が結果的に多くなります。メンバーそれぞれ担当もこれまでの経歴も違うので、あまりネタの偏りはありません。
――企画のアイデアを、どのように考えて決められているのでしょうか。
企画の生み出し方には、2つ手法があります。
ひとつは、10名弱ぐらいの編集部内から出てきたもの。全員が、それぞれに考えてきたものを週1回のミーティングで共有し、どの企画を進めていくかを決めていきます。ここでは、個人のこれまでの経験や、取材したいという思いが強く出てきます。
もうひとつは、編集部外からです。今年の6月に社内で初めてアンケートを実施したのですが、その中に、どういう記事を読みたいかという質問項目をもうけました。そこから、いまのカルビーのファンの方、noteの読者の方々が望んでいるものを抽出しています。
――ネタを出す順番や、どのネタを採用するかしないかなどのディスカッションは皆さんでされてるんでしょうか。
現在は週に1回のペースで、みっちりディスカッションしています。そのなかで、どのネタをどのタイミングで出すかは、結構意識している部分ではあります。例えば周年などはそうですよね。創業日ならば、やはり創業の話を出すべきです。トレンドなどもありますし、そこは調整しています。
――逆に、NG項目などのチェックポイントは作ってらっしゃいますか。
最初に、NGリストみたいなものは作りました。NGといっても、それが100%NGというわけではなく、ある程度、編集部の意識を合わせるために、ルールを設けたほうがいいだろうと思いました。
――メンバーが10名だと、統制をとるのが大変かと思います。メインミッションとして、このnote proを中心的な立場で回している方はいらっしゃいますか。
専任は1人もいないです。逆に人数が多いので、全員が他の仕事をしながらやっています。編集部をわざわざ作ったのではなく、広報部に所属するメンバーが中心ですね。
――記事の執筆は、企画を持ってきた人がやっているんでしょうか。
一部は外部ライターの方に入っていただくケースもありますが、7〜8割は自分たちで書いて、写真撮影もしています。
社内認知度に一定の手応え
――現時点で効果が見えてきたと感じることがあれば教えてください。
スタートして5ヶ月なので、試行錯誤しながらの運営ではありますが、6月に社内外で実施したアンケートでは、一定の認知を得ていることがわかりました。
社内からも、noteでこういう取材をしてほしいという依頼があったりもして……。社外では、SNS上で、“こんな商品は知らなかった”とか、“広島発祥の会社だとは知らなかった”というような、うれしいお声をいただいております。
――反響がすごいですね。
社内外の反響は、編集部全体で非常に力強く感じました。一つ一つのお声が非常にありがたいです。
――記事をまず社員の方に読んでいただくのは大事なひとつのステップだと思いますが、社内シェアはどうされてるんですか。
社内広報の担当者も編集部のメンバーなので、社内報で告知するようにしています。Web版と冊子があるんですが、原則Web版には毎回載せています。
――社内にきちんと記事が出たことを知らせするフローもセットで設けていらっしゃるんですね。
まず社内の方に読んでいただくことが大切だと思っています。他の編集部員が担当した記事については、私も知らないことも多いので読んでいて面白いです。
――まずは社内をちゃんと盛り上げて、その熱量を外にも少しずつ出していこうというところなんですね。今後も楽しみにしております。本日はありがとうございました。
***
第10回目の「note pro活用企業が語る 発信はじめの一歩」は、11月11日(木)16時から開催いたします。テーマは「ブランディング」。日本初・日本最大級のクラウドファンディングサービスREADYFORの広報部部長・大久保彩乃さんと、編集長の徳 瑠里香さんがご登壇予定です。共感と応援の輪を拡げるための発信とは? 実践者だからこそ語れる具体的なエピソードを伺います。ぜひご参加ください。