「書き手のモチベーションづくり」を徹底。多くの社員を巻き込むランスタッド流のnote運営方法
20名以上の書き手が多様な記事を発信し、いろいろな考え・立場の人に届けていく。そんなnote運用をしているのが、ランスタッド株式会社(以下、ランスタッド)です。同社が多くの社員を巻き込むために大切にしているのは、書き手のnoteを書くモチベーションを創出すること。そして、書き続けられるためのサポートを行うことです。
ここでは2023年5月18日に開催された「note proミートアップ」にご登壇いただいた同社の長谷川美果さんのお話をもとに、書き手を増やす方法や、記事執筆のコツ、社内周知の方法などを含めたnote運営のコツを紹介します。
ポイントは3つ。
会社の情報発信だけでなく、「社員一人ひとりのセルフブランディングの手段」としても、noteを活用する。
note運営におけるコアターゲットは社員自身。そこから社外にも記事を広めてもらうことで、社員以外の人からも興味・関心を抱いてもらう。
ワークショップを開催したり、書き手の募集は“期”を分けて行ったりするなど、参加する社員をバックアップする制度を構築している。
これらを念頭に記事をお楽しみください。
会社の認知度アップが目的の中、noteのターゲットを社員に定めた理由
2022年9月にnoteを立ち上げたランスタッド。中心となって動いてきたのが、同社のSNS関連を担当する長谷川美果さんでした。
noteを始めた理由は、会社の認知度やブランド力を高めるため。同社は人材サービス会社であり、手に取れるような有形商材がないため、サービスの強みについて語ることが難しいといいます。そこで「働く人」や「ストーリー」を伝えやすいnoteを活用しようと考えたのです。
この時点では社内に協力者がいるわけではなく、1人で企業noteを開設することに不安もありました。しかし、あるイベントで他社のnote担当者から「自分も最初は社内に協力者がいなかったけれど、企業noteを始めたい思いがあったので挑戦した。よい取り組みであれば、協力者や賛同者はあとから増えてくるはず。」という話を聞き、「noteを始められる立場にあるのは自分なのだから、何事もやってみなければ前に進めない!」と決意を固めたと語ります。
立ち上げに際してnoteのコンセプトを決めていきますが、特に重視したのは「誰に読んでもらいたいか」というターゲット設定でした。会社の認知度向上を目的に据えていたため、当初は社外向けに発信する想定をしていました。
しかし、ブランド力のある会社や認知度が高い会社について調べていくと、ある共通点があることに気付きます。それは、社員が自社や自社のブランドに誇りを持って働いていることでした。自社で働くことを誇りに感じている社員であれば、自然と会社のことを社外の方へも話し、その話が広がっていくことで、結果的にさらに会社の認知やブランド力が上がっているのではと考えたのです。
そう考えた長谷川さんは、途中から約2,500人の社員をコアターゲットとして考えるようになります。
社外の方へいきなりランスタッドのファンになってもらうことを目指すよりも、まずは2,500人の社員へ、今以上にランスタッドのファンになってもらうことが大切。社員がもっとランスタッドを誇れるようになれば、自然と会社のことが拡散される機会が増えていくはずだと考えたといいます。
この考えのもと、ランスタッドのnoteは社員が会社を知る・捉え直すきっかけとして、「社内の公式ファンブックでありたい」という社内向けのコンセプトを持つようになりました。
社員に読んでもらうことを想定したときに真っ先に考えたことは、「書き手になってくれる社員を募ること」でした。さまざまな社員が執筆することで、長谷川さんが1人で記事を書くよりも、多種多様なコンテンツを早くたくさん作ることが可能だと考えたからです。
「多くの社員を巻き込み、書き手になってもらうこと」は、初期からの重要なコンセプトだったと長谷川さんは話します。
とはいえ、立ち上げの頃はまだ記事の実績もない状態。そんな中で、通常業務にも対応しながら、プラスアルファでnoteを書いてくれる社員を探すことは簡単ではないはず。どのように書き手になる社員を巻き込んでいったのでしょうか。
書き手は“期”で区切り、活動期間を決めて募集
書き手を募る上で一番注意した点は、全社員へ募集告知をする際のアナウンス内容でした。ボランティアで立候補してくれる社員を募るためには、応募する側にとってもモチベーションになるようなことが必要と考えたといいます。
この社内アナウンスには、多くの共感や賛同の声が寄せられ、結果的に20名もの書き手が集まったのだそうです。
また他にもユニークな取り組みとして、「第1期生募集」と明確に“期”を設けた募集を実施しています。2022年9月の立ち上げ時に参加した書き手は第1期生であり、2023年7月頃からは第2期生が書き手として新たに加わる予定です。
これは、“期”を設けることで“同期”のコミュニティが生まれ、書き手同士の距離が縮まりやすくなると考えての仕組みです。書き手メンバーからも、同期のつながり自体が喜びやモチベーションにつながっているという声も多いといいます。
書き手に対しては定期的に社内ワークショップを行っていますが(※詳しくは後述)、毎回おなじみのメンバーが参加するため、回を重ねるごとに打ち解けていき、それぞれが自分らしく過ごせる時間になっているようです。
また、期を区切ったのは、書き手を辞めたくなった人の「出口」を作る意味でもありました。最初は書きたいと思って応募しても、いざ始めてみると書くことがつらくなってしまったり、忙しくて書けなかったりする場合もあります。そこで「辞めるに辞められない状況」が生まれるのは本意ではありません。
ランスタッドの書き手は、月1回記事を執筆し、3回記事を執筆したらメンバーを卒業してもよいことになっています。活動に区切りを設けることで、合わなかった人も「3回書き切った」という達成感を持って辞めやすく、また書き続けられるか不安な人もチャレンジしやすくしています。
こうした取り組みが奏功し、第1期生は20名の書き手が3回の執筆を終えることができました。また、第1期生の中から更にnote運営に関わってみたい社員を募り、現在4名の方が立候補し、運営に関わっています。
書き手に対する運営からのさまざまなアプローチ
長谷川さんら運営メンバーが心がけているのは、まず「執筆ハードルは低めにする」こと。書き手のスキルや経験などは問わず、何よりまずは書いてくれてありがとうという気持ちを大切に、本人へ伝えるようにしています。
その上で、記事の内容や方向も過度に制限せず、本人意向を信じて任せるスタンスを取ります。最初はクオリティーをコントロールすべきか、あるいは記事のコンセプトや文章の表現方法など、いわゆるトンマナ(トーン&マナー)を統一した上で執筆してもらうか悩みましたが、あまりに細かく記事を修正したり、これはダメと制限すると「書き手が書く意欲を失ってしまう」と考えました。
かといって、まったくルールを設けないというのも難しいもの。そこで広報社員のアドバイスを参考に、noteではこういう記事を発信したいという“指針”を示した「社員全体の記事ポリシー」を表明。これを最低限のガイドラインとして、あとは書き手に任せるスタイルをとりました。
また、書き手が執筆を続けるためのサポートも行っています。月1回のワークショップでは、まず書き手として自分がどんな人なのかを自己紹介するワークや、「自分がどんな風に周りに見られたいのか・どんなことを実現したい人なのか」について理解を深めるセルフブランディングのワーク、タイトルの重要性や記事にする内容を決めるコツなど文章の書き方のワークを実施しました。
そして、書き手が執筆した原稿への添削もこまめに行います。アドバイスを求められたら、下書き段階でもより良い記事にするための意見を伝えるなど、積極的に“壁打ち”を実施したといいます。その内容は「主語が抜けているので付け足しましょう」「話題の変わり方が唐突なので前振りを入れましょう」といった基本的なものや、「このエピソード、もっと膨らませたら面白そうですね」「ご自身がどう感じたのか、あと一歩踏み込んで書き足してほしいです」というアドオンの内容まで書き手が悩んでいるポイントに合わせて伝えます。ただし、添削をしすぎると書き手の意欲を下げてしまうこともあるので、ラリーをする回数や伝え方の強弱は相手に合わせて調整するのだといいます。
現在は、運営メンバー全員の添削スキルを高めるべく、新たに運営メンバーへ加わった4名と一緒に添削の勉強会も実施。社外クリエイターのnote記事を題材に、自分だったらどう添削するかを、それぞれ意見交換しているといいます。
記事を書く時は“リアルな実態”を伝えること
こうして20名の書き手が集い、運営されている同社のnote。現在は5つのコンテンツカテゴリに分けて、記事を発信しています。なかでもメインコンテンツである「ランスタッドメンバーのnote記事」では、20名の書き手によって執筆された記事を掲載。一方、社外広報の役目を果たす記事は、運営メンバーが執筆を担当する体制をとっています。
長谷川さんは自身が「書き手」となる場合、2つのことを心がけているといいます。1つは、社外に出せる範囲で限りなく“リアルな実態”を伝えること。当初のコンセプト通り、ありのままの情報を発信することが重要と考えてのことです。同社がオフィシャルパートナー契約を結ぶ、横浜F・マリノスとの関連記事では、可能な限りリアルなストーリーを伝えることを心がけました。
もう1つは、取材記事における心がけです。それは、取材対象の方が普段なら隠してしまうかもしれない「自分らしさ」を記事で伝えること。たとえば同社代表取締役会長兼CEOの秘書・富永綾子さんのインタビュー記事では、取材の最後に富永さんがポロッと「電動ドライバーにハマっている」と口にしたのだそう。長谷川さんは、そこに魅力的な素顔があると捉え、実際の記事ではそのエピソードが冒頭で取り上げられています。
本人が自分で記事を書くときはあえて伝えないような一面も、取材で人と話していると自然と出てくる瞬間があります。そんなエピソードも、本人の許可が得られれば記事で紹介するようにしています。普段は表に出ない、相手の人柄や体温を感じるポイントを発信するのが長谷川さんのスタイルです。
書き手に反響を伝え、次のモチベーションを生むことも大切
記事の公開後は、多くの人に記事を届けることが運営メンバーの役目。書き手のチャットグループに掲載記事と運営メンバーの感想を添えてアップするほか、全社の社内掲示板にも「今週の新着記事」としてお知らせを出しています。その際、記事のタイトルやTOP画像、運営メンバーの感想も併せて掲載しています。長谷川さんの印象では、「社内へお知らせを出すだけで、スキの数が倍くらい増える」と話します。
当初は社員からの反響やフィードバックも少なかったのですが、最近は社員が記事をシェア・拡散することも増え、社内の関心を集めやすい記事の傾向も見えてきました。
1つは横浜F・マリノスとの取り組みのように、大きなニュースを取り上げた記事。もう1つは社員にとって「話題の人」を紹介した記事です。同社秘書の取材記事のほか、同社からGAFAに転職した人に取材した記事もそのひとつでした。先述の秘書の取材記事については、CEOからもSNSでリアクションがあったといいます。そのほか、「今度はこの人を取材してほしい」という声も寄せられるようになったそうです。
そして、社外からの反響も徐々に増えています。書き手が多様なテーマの記事を書いているため、記事ごとに反応する読者が違うことも特徴です。十人十色のメンバーがいる同社の社風も、noteの記事で間接的に伝えられているのではと長谷川さんは感じています。
加えて、note経由で採用面談の申込みが入ったり、面接者が事前に記事を読んでくれていたりと、採用面でのポテンシャルも見えてきているといいます。
また、これらの反響を記事の書き手に伝えることも忘れません。SNSなど社内外で反響があった場合や、noteで表示される「今週よく読まれた記事」などのポップアップ画面が出たときには、その画面のスクリーンショットを撮り、書き手本人へもフィードバックとして伝えています。
まとめ
20名以上の社員が関わるランスタッドのnote。運営する長谷川さんの真摯な姿勢や気遣いが、多数いる書き手のモチベーションにつながっているといえるでしょう。そしてそれが社員の関心を生み、発信の輪を広げています。
今後についても、あくまで書き手の率直な気持ちに基づいた記事を発信し、立ち上げからコンセプトにしていた「ランスタッドで働く人たちの声」にスポットを当てていきたいといいます。
さらに安定的な記事掲載の仕組みを作り、社外広報としての記事も月2本アップできる体制を整えていきたいとのこと。他社とのコラボ企画にも意欲的です。また採用面の効果をさらに高めるため、入社を希望する人が欲しい情報、たとえば社内制度についてや面接時のポイントなどを特集した記事も載せていきたいと考えています。
最後に、ランスタッド流のnote運営で、参考になるポイントを再度振り返ります。
会社の情報発信だけでなく、「社員一人ひとりのセルフブランディングの手段」としても、noteを活用する。
note運営におけるコアターゲットは社員自身。そこから社外にも記事を広めてもらうことで、社員以外の人からも興味・関心を抱いてもらう。
ワークショップを開催したり、書き手の募集は“期”を分けて行ったりするなど、参加する社員をバックアップする制度を構築している。
みなさんもぜひ、社内をうまく巻き込むnote運営の参考にしてみてください。
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