オープンな社風が生んだ、オープンな社内報──SmartHRがnoteで社内報を発信する価値 #noteクリエイターファイル
noteで活躍するクリエイターを紹介する#noteクリエイターファイル。今回登場するのは、noteの法人向けプランnote proで「オープン社内報」を運営するSmartHRさんです。
SmartHRは、全国で2万社以上が登録するシェアNo.1のクラウド人事労務ソフトです。2019年3月からはじめた「オープン社内報」では、社内の制度やルールが紹介され、会社としてどう考えているかについて、社外の方でも誰でも読めるような形で運用されています。
社内報をあえてオープンにするねらいはどういうところにあるのか。SmartHR執行役員・VP of HR(人事責任者)薮田孝仁さんと、広報のたけべともこさんにお話をうかがいました。
社員向けの情報をオープンにする価値
ーー さっそくですが、どうして社内報をオープンにしているのですか?
薮田 社員に情報を確実に伝達する媒体としての「社内報」と、社外に向けて会社の雰囲気を見せる採用目的のオウンドメディア。ちょうど検討時期が重なったこともあり、一緒にしてしまえばいいんじゃないかと考えたのが、そもそものきっかけです。
運営をはじめて1年が経ちますが、あらためて社内報をオープンにする価値を実感しています。「コアタイムの記事」がとくに象徴的です。
ーー コアタイムの記事?
薮田 SmartHRは2019年4月に六本木グランドタワーに引っ越しました。すると、同じビルで働く他社の方も多く、出勤時間のエレベーターが非常に混雑することが問題に。そこで、コアタイムの開始時間を10時から15分うしろにずらして、他社とのコンフリクトを減らすことに決めたんです。そして、それをすぐ、オープン社内報で記事にしました。
薮田 オープンであることで、社員がよりしっかりと読んでくれるようになりました。この記事を読んでくださった社外のひとがTwitterで制度のことを褒めてくださって、反響を見た社員が「いい制度なんだな」と実感を持って記事をじっくり読む。いいサイクルが生まれたと思います。
この制度に「なんで10:15からなんだろう」「10:30じゃないんでしょうか」と疑問を持っていた社員も、社外のポジティブな反響を見ることで納得感を上げて制度を受け入れてくれる。社外の目を経由して社内で読まれている感覚があります。オープンであることの価値を感じました。
ーー 社員向けの情報をオープンにする価値は?
薮田 まずは、会社でやっていることがいいことなのかどうかを、社外のひとに判断してもらえることでしょう。SmartHRのミッションは「社会の非合理を、ハックする」。工夫でいいことをしていきたいけれど、それが本当に正しいことなのかは身内の感覚だけではわからないですよね。情報をオープンにすることで、社外の目で正しいかどうかの判断ができます。
また、外の目に触れて言葉が磨かれることもおおきな価値です。社内だけに向けて書く文章はついつい雑になりがちですが、社外のひとの目にも触れるとなると、わかりやすく、ちゃんと伝わる言葉にしようと意識が向きます。内容は飾らず、嘘もなく、ありのままだけれど、伝えるための工夫は惜しまない。
ーー なるほど。
薮田 昔からいる社員と最近入社した社員では持っている情報量が違いますよね。社外のひとにも伝わる文章なら、最近入社した社員にもわかりやすい、ちょうどよい記事になります。
たけべ 社内の遊び心を表出させるよい機会にもなります。たとえば、当社にはグラフィックレポートの上手なデザイナーがいますが、そういったひとの存在を社外に伝える手段はこれまでありませんでした。オープン社内報は、本来は社内で閉じてしまうはずだった魅力を社外に伝えることのできる存在でもあります。
オープンでフラットな文化がうんだ類を見ない「社内報」
ーー 記事をつくる上でたいせつにしていることは?
薮田 コンテンツが社内報として成り立っていることです。社員が読んでためになるかどうか。採用目的に寄り過ぎていないか。いっぽうで、身内ノリにならないようにも気をつけています。
たけべ 社内報という明確なコンセプトがやりやすいです。記事の文頭も、はじめは「SmartHRのたけべです」とクセで名乗っていたけれど、「お疲れさまです、広報のたけべです」に直したり。社員はみんなSmartHRのひとですからね。文章での社内報っぽい雰囲気づくりが重要だと思っています。
ときには「〇〇席の近くの〜」というように、社外のひとには伝わりづらい言い方をすることもあります。適度に社内報っぽい空気感をつくることも意識しています。
薮田 「社内報っぽさ」というか、実際社内報なんですよね。経営会議などで、これは社員に周知しようという情報があったときに「じゃあ、オープン社内報でだすのはどう?」となったりします。
ーー ここだけの話、オープンにしていない社内報って、別にあるんですか?
薮田、たけべ ないです(気迫)
ーー おお……!
薮田 はじめの1、2回だけ、まずは社内のみに書いた文章をオープン社内報に転載してみたんです。でも、あんまりよくなかった。社内も社外も同じタイミングで情報が読めるほうがいいという社員からの声が多く、すべての情報をオープン社内報に集約させました。
ーー 社員向けの情報をすべて公開する覚悟がすごい。
薮田 オープンなカルチャーを持つSmartHRだから、賛同してくれる社員も多いんだと思います。社内の打ち合わせや他社との商談まで会議室のドアを開け放して行いますし、毎週行う経営会議の内容はそのまま全体会で社員に伝えます。会社の預金残高までオープン。そんなカルチャーなんです。
たけべ ほかにも、フラットだったり遊び心のあるカルチャーも、オープン社内報が受け入れられている理由かもしれません。編集部以外の社員から社内報のアイデアがどんどん生まれるんです。気軽でいい、ふざけてもいい、そこから本当によいアイデアがうまれる。そんな空気感があります。
私自身もフラットさを実感する出来事があって。私がはじめてオープン社内報に記事を出したのは入社10日目のことなのですが、あの記事、薮田をぎゃふんと言わせたくて書いたんですよ。
薮田 え、初耳です。
たけべ はじめて言いましたから(笑)。
記事を片手に、気合いを入れて「載せてください!」と乗り込んだんです。そうしたら拍子抜け。「入稿したけど、いつ公開する?」って。ダメ出しとかなにもなくて、受け入れてくれました。記事に埋め込む写真を撮るのにも社員みんなが協力してくれて、タイトル案を5つくらいSlackに投げたらみんなが投票してくれて。オープン社内報がこの会社を好きになるきっかけにもなりました。
薮田 社内報としての体裁を整えるために多少の修正はしましたが、おおむねOK。記事を受け取ったときは「やったー!いいコンテンツができたぞー!」って気分でした。
オープン社内報の編集体制
ーー 編集部以外の社員からアイデアも生まれるとのお話もありましたが、編集体制はどうなっていますか?
薮田 私たちと元デザイナーの人事担当の3名がいわゆる編集部のメンバーです。あとは有志で運営しています。
たけべ 社員が自主的に「こんな記事を書きたい」とアイデアをもってきてくれます。中にはすでに原稿が完成しているものも。社内報の枠組みからそれてしまうものは切り口を変えるなどの提案をしますが、基本的には社員が書いたものをそのまま採用しますね。
ーー なぜみなさん協力的なのでしょうか。
薮田 全社的に広報活動をしようという気持ちが根付いているのが大きいです。社外のひとからもSmartHRは「筆まめな人が多いですね」とよく言われます。社長含め、個人のnoteやブログで発信しているひとも多いので、これもまた文化なのでしょうね。
とはいえ、自発的に書いてもらうことを習慣づけるのは簡単ではなくて、そこはたけべの力も大きいです。
たけべ 「どういう記事がよみたいですか?」といろんな社員に聞いて回っていったら、みんながアイデアを持っていてみんなが書いてくれたという感じです。私ががんばったことはそんなにない。
薮田 だれかが火をつければそれがもえていく。そのための着火剤が必要だったんですね。着火剤として動いてくれているのがたけべなので、何もしていないわけではないです!
隔週でおこなっている編集会議も、編集部だけでクローズに行うのではなく、Slack上でオープンにオンラインディスカッションをしています。ログも残るし、だれでも参加できるのがいいですね。
ーー 本当にたくさんのひとが関わっているんですね。
たけべ そうですね。けれど、全然満足はしていなくて、今年はもっと関わるメンバーを増やしたいと思っています。編集部だけが社内報をつくっているというふうにはしたくない。社員全員がみんなの社内報、自分の社内報と思ってもらえるように、巻き込んでいきたいです。去年のオープン社内報も各所から褒めていただけて嬉しかったですが、去年と同じままではいたくありません。
薮田 関わるひとが増えれば、それだけ記事の本数も、伝えることのできる情報も増えます。いろんなひとに書いてもらって、より多くの情報を社員に共有したいです。
ーー ありがとうございました!
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