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「1ヶ月に50本」驚異的なペースの社員発信に成功した、ログラスnote編集部の種まき

たくさんの社員に自社のnoteで発信してもらうことで、彩り豊かな多くの情報を届けたいーー。法人noteを運用する担当者であれば、多くの方が思うことではないでしょうか。そんな中、当時60名ほどの社員で「1ヶ月に50本」の記事を掲載するという取り組みを行ったのが株式会社ログラス(以下、ログラス)です。

同社では「アドベントカレンダー(アドカレ)」と呼ばれたこの取り組みを機に、社員の発信カルチャーが定着。その後も、部門単体で自主的にアドカレが実施され、採用活動へのポジティブな影響をもたらすなどの効果が生まれました。

アドベントカレンダーとは
定められたテーマに則り、参加者が持ち回りで記事を投稿する企画です。

参考:Qiita Advent Calendar について

とはいえ、60人の社員で1ヶ月に50本という発信数は、社員の負担になるリスクも。なぜそのような積極的な発信文化を醸成できたのでしょうか。ログラス広報の檜山ひやま加奈かなさんに、アドカレ開催の経緯や詳細、それらをきっかけとした発信カルチャーの作り方を伺いました。

ポイントは3つ。

  • 多くのメンバーを巻き込んで情報発信を始めるには、「なぜやるのか、何のためにやるのか」という目的意識を運営側だけでなく書き手にも持ってもらう必要がある。

  • コンテンツ作りが一回限りのイベントにならないよう「また書きたい」と思ってもらう工夫を凝らすことで、社員の発信カルチャーが定着していく。

  • 「カルチャーを伝える」「人を伝える」といった軸を定めることで、さまざまな立場のメンバーからの発信が集まり、結果として採用活動でもnoteによる波及効果が表れてきている。

この記事では、より詳しく運営の裏側をお伝えしていきます。


さまざまな社員がログラスを語れる場所を作ることで、全方位にファンを増やしたい

公式noteを始める前、社員からの発信は、経営陣や発信力のあるエンジニアなどの個人のマンパワーに依存していたログラス。利用するプラットフォームも人それぞれ異なり、さまざまな場所に社員コンテンツが点在していました。その結果、ログラスへの入社を検討する人にとって「情報が一箇所にまとまっておらず見にくい」という状況が生まれていたのです。

解決策として、これらの点在するコンテンツを統合しようと公式noteの開設を行います。さまざまなプラットフォームに掲載されていた社員コンテンツを公式noteに集約するところから、全社での発信体制を整えていきました。

株式会社ログラス 広報 檜山加奈さん

note運営で目指したのは、短期的には採用広報に効果をもたらすこと。さらに大きなゴールとしては、採用に限らず、全方位にログラスのあり方を伝えることでした。そのために、さまざまな社員がnoteでログラスを語ることで、ファンを作っていく形を模索していきます。

この考え方の背景には、ログラスバリューである「LTV first」があります。LTVとは「Life Time Value:顧客生涯価値」の略称で、同社には「長期的に見て価値のあることをやろう」という社風が以前より根付いていました。ログラスでは社員がnoteを書くこと自体、このバリューの体現につながると考えており、その姿勢は書き手に対する運営側の動きにも関わっていきます。

記事テーマもブレないよう戦略化。「カルチャー」と「人」に照準を定める

公式note開設前は、社員コンテンツが「1ヶ月に1本、発信できていれば良いほう」という状況。このままでは全社的な発信量が足りないと考え、まずは「1週間に1本」という行動目標を立ててnoteの運用を始めます。

量だけでなく、質の向上にも着目しました。それまでは採用広報の戦略が明確に固まっていなかったため、コンテンツのテーマや伝えたいメッセージがブレてしまうこともあったそう。そこで公式noteでは、テーマを定めた戦略的な発信をしていこうと考えました。

具体的なテーマとして挙がったのが、ログラスの「カルチャー」や「人」です。採用面接などでログラスのカルチャーを説明するコンテンツが少ないという課題があったほか、次の四半期の採用方針を定めるタイミングで、社員がログラスのどこに興味を抱いて転職活動を行ったか調査したところ、「カルチャー」や「人」への共感がトップを占める結果に。これらのことから、noteでは「社員自身にカルチャーや人について語ってもらう」という戦略が明確になりました。さらに、そうした事実を社内のメンバーにも伝えることで、発信の重要性について、社内の共通認識を作っていくことに成功したのです。

社内告知から1時間で枠が埋まった「アドカレ」の舞台裏

こうした経緯を経て、2022年12月に初めてのアドカレを実施することとなりました。檜山さんは「かなり“挑戦的”な取り組みでした」と笑顔で話します。

それだけのチャレンジを全社で行えた理由は、まず先述のカルチャー発信に対する共通認識を作れたこと。さらにこの時期に、発信に意欲的な現在の開発の責任者が入社したことで、エンジニア内でアドカレの企画が持ち上がったことが挙げられます。また時期的にもクリスマスを控えており、世の中でもアドカレが盛り上がっていたそうです。

すると他部門でも負けじとアドカレをやってみようという声が挙がり、それならと全社企画で実施することに。当時の社員数は60人ほどでしたが、その人数で「1ヶ月に50本の記事公開」という目標を掲げて、チャレンジが始まったのでした。

さらに2023年8月にも2回目のアドカレを実施しました。背景としては、当時SNSなどで「ログラスの採用力」に注目が集まっていたこと、そして会社の採用目標が引き上がったことがあります。またその中でプロダクト責任者が「採用のためには発信が大切」だと発言し、採用チームのnote発信に対するモチベーションが高まったことも挙げられます。前回のアドカレの効果も確かだったことから、2回目となる「サマーアドカレ」が行われました。

ログラスサマーアドベントカレンダー2023年8月の様子
ログラスサマーアドベントカレンダー2023の様子(8月まで遡ると一覧が見られます)

しかし、8月1日から記事公開を始めなければいけないのにも関わらず、社員にこの企画を告知し、執筆者を呼びかけたのは7月27日。あと数日しかありません。ところが告知から1時間弱で8月の執筆予定枠は埋まり、急遽9月まで期間を延長して開催することになったのです。この時の社員は80名ほどと前回より増えましたが、こちらも2ヶ月間で合計42記事と、圧倒的なコンテンツ量を記録しています。

これらの2つのアドカレを完走したことで、社内の発信カルチャーは盤石なものになりました。現在は広報以外のチームが自主的に企画したアドカレも走っているそうです。

「LTV first」で赤入れを行う編集部の想いとは

アドカレをはじめ、社員が書いた多くの記事を世に出す上で、編集部(広報チーム)はどのような動きをしているのでしょうか。

まず記事の企画・テーマの立て方については、初回のアドカレとサマーアドカレで戦略を変えたそうです。初回アドカレでは「カルチャー」と「人」を大きな軸とし、書き手一人ひとりに対して記事の具体的なテーマを編集部が提案した上で依頼しました。たとえば「ログラスのこのバリューを一番体現している社員は〇〇さんだから、それについて語る記事を書いてほしい」といった依頼の仕方です。

対してサマーアドカレは、前半期間は採用戦略として入社エントリー記事を重点的に投稿。後半期間はあえてテーマを絞らず、各社員に任せる形に。その結果、過去の社員投稿の中で「スキ」数がトップとなる記事が誕生。ときには、社員に自由に書いてもらうことのメリットも感じたそうです。

社員の書いた記事に対する修正・赤入れも細かく行っているとのこと。文章の「てにをは」の調整やファクトチェックはもちろん、「この記述は具体例があったほうが良い」や「内部用語なので注釈を入れたほうが良い」など、社外の読者にとって読みやすいかや、「ログラスのブランディング及び社員の皆様のキャリアを守れているか」という観点でもチェックします。公に見られる記事は書いた人の名刺代わりになり、いつまでも残り続けます。そのため、たとえ大変でも「LTV first」の観点を重視して編集を行っています。現状、編集部が1記事1記事目を通していますが、今後は過去に寄せられた質問などをまとめたものを作成予定です。

書き手へのフォローやサポートも編集部で意識的に行っています。檜山さんが考えるもっとも大切なことは「書き手のモチベーション作り」です。

記事の執筆環境を整えるための「壁打ちタイム」や「もくもく会」という取り組みも、編集部の工夫によるものです。壁打ちタイムは、執筆者の悩みを一緒に考える時間。もくもく会は、1時間ほどスケジュールを押さえ、執筆者と一緒に作業をする会。編集として、ゼロをプラスにするだけでなく、執筆の過程で生じるマイナスをゼロにすることを意識しています。

公開した記事を広めるインフラも整えました。ログラスの社内Slackには、会社としての発信コンテンツを告知する専門チャンネルがあり、書き手が自由に宣伝できます。

毎月note発信生活を続けた社員によるレポートの社内告知
ログラス社内Slackの様子

ちなみに、公式noteのKPIは定めていません。PVなどの数字を意識すると、書き手にとってはニッチなコンテンツが書きづらくなるなど、制限がかかってしまうためです。ただし、その時々で「カルチャーの発信を強化する」「ミッションを伝える」などの定性的なゴールイメージは設定しています。

ビジネスの相談が6件舞い込んだ営業社員も。noteが各所でもたらした効果

これら公式noteの取り組みは、社外へのさまざまな効果を生みました。社員が他のメンバーに感謝を伝えるチャンネルには、noteの成果を伝える声が多数寄せられています。たとえばカジュアル面談に来た方からの「もともとログラスは知らなかったが、調べたらとんでもない量のnoteが出てきて、(良い意味で)やばい会社だ、この熱狂はなんだ」といったコメントもありました。

面談でも「noteを読んできました。そこで質問があるのですが……」と話が始まるので、進行がスムーズになったというメリットもありました。「noteを始めて良かったのは間違いないですね」と檜山さんは語ります。

アドカレ後の社員アンケートでは、「今まで会社の名を背負って対外的に発信したことはなかったが、自分の投稿に『スキ』がもらえて嬉しかったし、いい経験になった」という声も。記事に対してSNSで反響があり、ビジネスに関する相談が6件舞い込んだ営業担当者もいたそうです。他にもこのような社員のブランディング向上につながったケースがいくつも報告されています。

社内にアドカレ文化を浸透させるには

企業がアドカレのような社内を巻き込んだ企画に取り組む際、どんなことがポイントになるのでしょうか。まず檜山さんが挙げるのは「音頭を取る人が1番の熱量を持って挑むこと」です。最初の時点で「なぜアドカレをやるのか、なぜ社員の協力が必要か」を、明確に伝えることが重要になります。

現場の社員からすると、こうした取り組みの重要性は理解できても、本来の業務に比べて優先度はどうしても下がってしまいます。だからこそ「自分たち自身で発信をすることがなぜ重要なのか」ということについて、同じ目線で考えられるように、地道な種まきをしていく必要があります。

2つ目のポイントとして、不測の事態に備えることも重要です。予定していた記事の公開が間に合わない場合のストック記事や、ピンチヒッターとなる書き手の目星をつけることが安定稼働のカギとなります。

さらに、一つの記事を書いた書き手に「また記事を書きたい」と思ってもらえる状況を作ることも大切。ログラスでは、1回目のアドカレの終了と全社の納会のタイミングが重なったため、イベントの中で全記事を振り返ったり、編集部が校正した文字数(=1ヶ月に出した記事の文字数)が20万字に及んだことを伝えたりして、書き手と運営者の一体感を作り出しました。

まとめ

アドカレをきっかけに全社での発信文化を作ったログラス。その前段階での共通認識作りなど発信の種まきをしっかり行ったことがポイントであり、時間と手間はかかっても、社内の理解を得た上で進めることが重要です。

ログラスでは今年の12月にもアドカレを実施。エンジニア/ビジネスの両サイドで合計50本の記事公開を予定しています。全社一丸で発信に取り組むログラスのnoteからは、今後も目が離せません。

最後にログラスのnote運営で参考になるポイントを再度振り返ります。

  • 多くのメンバーを巻き込んで情報発信を始めるには、「なぜやるのか、何のためにやるのか」という目的意識を運営側だけでなく書き手にも持ってもらう必要がある。

  • コンテンツ作りが一回限りのイベントにならないよう「また書きたい」と思ってもらう工夫を凝らすことで、社員の発信カルチャーが定着していく。

  • 「カルチャーを伝える」「人を伝える」といった軸を定めることで、さまざまな立場のメンバーからの発信が集まり、結果として採用活動でもnoteによる波及効果が表れてきている。

みなさんもぜひ、note運営の参考にしてみてください。

interviewed by 漆畑美佳 text by 有井太郎

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