企業とクリエイターが一緒に作り上げる「noteコンテスト」の魅力とは? 1万3000通以上の応募を記録した、freee「#はたらくを自由に」コンテストの舞台裏を聞く
クラウド会計ソフト「freee」で知られるfreee株式会社(以下、freee)は、「noteコンテスト」の実施を目的に2019年12月にnoteを始めました。
同社一回目のコンテストのテーマ「#はたらくを自由に」には、投稿が1万3000超も寄せられました。今回は、同社の大杉雛子さんと、コンテストを担当したnoteディレクターの並木一史を交え、どういう経緯で始めたのか、noteのコンテストを企業活動にどう生かすかを聞きました。
noteのユーザー属性と相性が良かった
ーーまず、noteコンテストをはじめた経緯を教えてください。
大杉 企画した当時、私は個人事業主向け「会計freee」のマーケティングを担当していました。個人事業主向け製品は、1〜3月の確定申告の時期に一番売れます。
この時期に向け「会計freeeと相性のいいフリーランス、個人事業主の方とコミュニケーションをとる施策を打てないか」と考えていたとき、社内で「noteがfreeeの潜在的なユーザーと相性がいいのでは?」という話があり、noteコンテスト担当の方に声をかけ、打ち合わせすることになりました。
note並木 初めて打ち合わせをしたときから、noteの雰囲気や、大切にしている価値観をご存知だったので、嬉しかったのを覚えています。
大杉 noteはプライベートでも読んでいましたし、他のメディアよりユニークで「ものづくりが好きな人が集まっている」という印象があり、いろいろ調べたんです。
ーーnoteコンテストの他にも、選択肢はあったのではないでしょうか?
大杉 実はもっとマス向けにキャンペーンをやるとか、オフラインで広告を出すとか、他の選択肢はありました。しかし、私たちのユーザーと、打ち合わせする中で伺ったnoteのユーザー属性が重なっていたため、「noteでチャレンジするのがいい」とサクッと決まりました。
ーーnoteコンテスト参加の目的は? 特に期待していたことはありますか。
大杉 目的は2つ。まず大きいのが、ブランドの認知をあげることです。「会計freee」というブランドを知ってもらうきっかけにしたいと思いました。もうひとつが、ブランディングです。会社の価値観やミッションを伝えたかった。
ーーnote以外に、過去にうまくいった施策はありましたか。
大杉 マス向けのCMや、オウンドメディアの運用など、複数施策は行ってきています。「刈り取り」が目的の施策が多いですね。最近は徐々にマーケティングのフェーズが変わっており、ブランドの価値観を伝えていこうという方向性に移ってきています。
ーー 社内の決裁はどうやって取りましたか?
大杉 noteでのインプレッション数、過去に実施したコンテストの応募数、noteクリエイターとの相性の良さなど説得材料はかなりありました。実施費用は、広告宣伝費として計上していますので、GoogleやFacebookへの広告関連費とジャンルとしては同じです。
コンテストのお祭り要素で盛り上がる
ーーコンテストの運営体制を教えてください。
大杉 「#はたらくを自由に」は私ひとりで全部やってました。ほかにいろいろ施策がある中のひとつでしたが、オペレーション周りのコストも高くなくひとりで回せていました。
ただ、社内を盛り上げたかったので、「これくらい伸びています」とか、「好きな作品を教えてほしい」などの声かけはしており、間接的に携わってくださった方は、沢山います。
ーー面白がってくれるような会社のカルチャーもありましたか。
大杉 まさにその通りです。社内には「いまこういうことをやってるよ」だけでなく」、「こういうことやって失敗したよ」という情報も共有していく文化があります。冒頭でも述べたとおり、弊社は、確定申告時期はサポートや開発メンバー含めてお祭り状態です。コンテストの盛り上がりにもお祭り要素があり、よかったです。
ーーコンテストをやって、感じた効果はありましたか。
note並木 「#はたらくを自由に」は応募が止まらなくて、初週で応募が1000件を超えました。このコンテストをきっかけにnoteを始めたという声もあって、世界観が受け入れられているのを感じました。
大杉 「一件も応募がこなかったらどうしよう」と心配してたのですが、序盤から投稿してくれる方がいらっしゃったので、安心しました。社内のSNSでも1万件突破したタイミングで、社員みんなからお祝いのコメントをもらいました。
ーーコンテストを振り返ってどうでしょうか。
大杉 正直に言うと、サービスのユーザーを増やすのが目的なら、もっと効果のいい方法があったはずです。しかしこれだけの作品をたくさんの方が書いてくれ、さらにそれがTwitterで拡散されました。その拡散力を考えたら、費用対効果がよかったプロモーションなのでは、と思っています。
noteのコンテストの魅力は「予想外の体験」
ーーほかのキャンペーンとの違いは感じましたか。
大杉 まず、性質が違います。例えば広告だと、見え方やコミュニケーションまで設計し、デザインしたものを出します。
noteのコンテストの場合は、私たちが見せるのではなく、クリエイターにみずから参加していただき、作ってもらっている感じです。そうした作品がきっかけになって、私たちの製品を知ってもらえたらと考えました。お題や審査員は選べるけれど、コントロールできない部分も多いので、やる側からしたら、ドキドキします。ですが、予想外の議論が生まれたり、未知のところが、ある意味、体験を作る強さ、ユニークさになる。そこが私は好きです。
「広告のバナーを見る」のと、「この作品いいな」と思って主催者を見るときでは、体験が違います。プロモーションプランとして比較対象がないことが、かえって魅力的だと思います。
ーーブランディング広告って、計測が難しいですよね。社内の受け止められ方は好意的だったのでしょうか?
大杉 弊社には、効果が未知数のものでも「まずはやってみたらいいんじゃない?」という文化があります。もともとエンジニアの方から「noteのコンテストをやったら面白い」というアイデアが出たくらいで、みんな、noteに好意的でした。
ーー最初に伝えたかったメッセージが、ユーザーに届いた実感はありますか?
大杉 「会計freee」は、それまでどちらかというと、「効率的」「楽にできる」「先進的」という価値観を推してきました。「スモールビジネスを、世界の主役に。」(スモールビジネスの人が、生産的にクリエイティブに働けるようにしたい)というミッションは、社内では浸透していますが、対外的はあまり出してなかったのです。私たちが目指している世界をはじめて見てもらえたという意味で、すごくよかった。
コンテストの応募数を増やすコツは、「誰でも書けるお題」にある
ーーコンテストを運営するにあたり、具体的に工夫したことを教えてください。
大杉 一番の目的が「存在を知ってもらうこと」なので、お題は工夫しました。そこで過去開催されてたコンテストでは、どういうテーマだと応募が集まりやすいのかをざっと見せてもらい、お題を分析しました。
すると未来を考えさせるよりも、思い出や経験を書いたものの方が、投稿が集まりそうだなと。そこでお題は「次世代の働く」にはあえてせず、過去の経験に基づいて書けるものにしようと考えました。
さらに、「その経験をした人が世の中にどのくらいいるか」が、投稿数に影響すると思いました。そこで、世の中の人が多く経験していて、かつ当社のミッションとも合う、「#はたらくを自由に」をお題としました。
具体的なテーマぎめでは、noteのコンテストを担当していた並木さんや三原さんと何度も話しましたよね。
note並木 はい。コンテストのテーマは、審査員を誰にするかなどの設計にも直接響いてくるので、かなりディスカッションしました。
じつは、最終的に決まったハッシュタグ「#はたらくを自由に」は、freeeさんが「組織として目指すこと」として発信されている、「先例をつくり、未来をつくる」をもとに発想したんです。また、また、大杉さんが「"はたらく"とプライベートが同一になっていく中、はたらくことで発生する嫌なことに、立ち向かうことを減らしたい」とおっしゃっていたのも印象的でした。会社として大切にしたいことをふだんから積み重ねられてきたからこそ、すてきなテーマをつくれたのだと感じています。
ーー特に印象に残っている応募作品はありますか? 最終審査に残ったものは、想定通りでしたか?
大杉 応募された作品は内容がバラバラでした。コンテストの応募期間中(2019年12月17日〜2020年2月29日)は、働き方改革などの話題が増えることを想定してました。ところが、予想外に幅広い視点ーー社会や子育てでの実体験に沿ったリアルな「働く」をとらえていたのは面白かったし、極端な働き方ではなく、バランスの取れた話が出てきました。すべていい作品で、審査が大変でした。
note並木 審査の結果、最優秀賞と優秀賞が、どれも育児系の内容になりましたよね。踏み込んだ話をすると、freeeのサービスに直結するテーマの作品がすくない気もするのですが、最終結果については違和感はなかったですか?
大杉 確かに「会計freee」には、「クラウドでどこからでも仕事ができる」「効率化」というイメージが先行すると思います。
しかし私たちが本質的にやりたいことは、クラウド化や効率化の先にあります。例えば、中小企業など、今までITに投資しづらかった企業が、ITを導入することで、非効率な作業が減り、子供と過ごす時間が増える、そういう世界を実現することです。
だから、最終結果に関しても違和感はありませんでした。
また、進めていく中で、並木さんから「こうしたほうがnoteのユーザーに届きやすいです」などと意見をいただけたのも、助かりました。一緒に作ったという感覚があります。
ーー今後のnote活用について教えてください。
大杉 最初のきっかけは単発のコンテストでしたが、いまでは無料のnoteからnote proに変更したりと、5事業部くらいがnoteで情報発信をしています。それぞれの担当者が何を考えているかをさらけ出したり、ユーザーのライフスタイルを知ることができたりと、双方向でコミュニケーションが取れる場になるといいなと思っています。
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