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“外部メディア”の目に留まる魅力的な法人noteの作り方とは? フィラメントに聞く「メディアの育て方」のノウハウとマインド

オウンドメディア運用において、アクセス数が期待するほど伸びなかったり、効果を実感できなかったりといった悩みはつきものです。

企業の新規事業コンサルティングを行なう株式会社フィラメントさんがnoteで展開しているオウンドメディア「QUMZINE(クムジン)」は、掲載した記事が雑誌『日経WOMAN』(日経BP)の目に留まり取材を受けたことをきっかけに一躍話題になりました。

今回は、そんなQUMZINE編集長の平井征輝ひらい まさきさんに、外部の大手メディアの目に留まるコンテンツ作りのノウハウをはじめ、メディアを育てるために編集部が実際に行っていることやマインドを伺いました。

ここでは2022年4月27日に開催された「note proミートアップ」イベントの内容を元に、BtoBブランディングのコツを紹介します。

note pro ミートアップとは?
note proを活用する法人クリエイターのみなさんに向けて毎月開催しているイベント。法人クリエイター同士がnoteを運用する上での学びや悩みを共有したり、社外での横のつながりをつくることで、よりnoteを活用いただくことを目的にnote proユーザー限定で開催しています。


自社のブランディングを確立させるメディアとしてのnote

フィラメントは、大阪と東京を拠点にして、主に大企業の新規事業創出に関わるマインド醸成や事業作り、リレーション支援まで一貫して提供している会社です。

しかし上記のようにクライアントに説明しても、「何をしている会社かわからない」という声が多いのが同社の悩みでした。そこで、より具体的に会社の理念やバリューを発信する場所としてnoteを選びました。

コーポレートサイトにもコラムはありますが、そちらは新規営業向け。一方、note「QUMZINE」は、フィラメントという会社自体に興味を持ってもらうために、自分たち独自の価値観を言語化して、読者の好奇心をかきたてながら伝えていく場所としてのオウンドメディアです。

QUMZINEを通して自社を知り、ビジョンに共感してくれる人といつか一緒に仕事ができれば理想的。そのために、広く浅く読まれるよりも、カルチャーフィットする人に深く刺さるコンテンツを作るように意識しているそうです。

平井さんが深く刺さるコンテンツを作るうえで大切にしているのが、「ナラティブ(物語)」を語ることでした。

noteでナラティブを語る理由とその効果

平井征輝さん
平井征輝さん
株式会社フィラメントCMO/QUMZINE編集長

ビジネスシーンではいま「ナラティブ」に注目が集まっています。

ビジネスでいうところのナラティブとは、企業と生活者がともにつくり上げていく物語のことをさします。そしてナラティブのベースとなるのは、自分たちのビジョンやポリシー、パーパス(存在意義)です。

「noteはナラティブを語るのに適したプラットフォームです」(平井さん)

noteがナラティブと相性がいいのは、現場視点(主人公目線)で丁寧に語るのに適した雰囲気(カルチャー)と機能があるから。これこそがフィラメントがメディアに求めていたことでした。

平井さんによると、QUMZINEは読者が自分ごととして感じられるよう、届けたい相手を具体的に想像して記事を制作しているとのこと。ナラティブを内包した、届けたい相手をイメージした記事を作ることによって「QUMZINEと読者との間で共通理解が生まれる」といいます。

共通理解が生まれると、それが芯となって雪だるま式に周りの人を巻き込むので、結果的に理解者が集まることになります。ナラティブを語ることの最大の効果はこれです。発信し続けているナラティブに共感してくれる人たちが自然と集まってくれるので、カルチャーフィットするまでのコミュニケーションが円滑になり、結果的に効率もいいそうです。

フィラメントのメンバー集合写真
フィラメントのビジョンは「未来と今を誰もが面白がりながら成長できる社会」。
ビジョンに沿ったコンテンツづくりを目指している。

「トレンドのメタ認知」と「目立たないけれどすごい人の深堀り」でネタを作り出す

では、ナラティブを語る記事となるネタは、どうやって見つければいいのでしょうか? 平井さんによるとそのコツは、世の中のニュースと自分たち独自の考え方を融合させることにあるそうです。

融合させるにはどうすればいいでしょう? 

そもそも、世の中のトレンドや流行が生まれるのには必ず理由があります。まずはそれを言語化・抽象化する。これを平井さんは「メタ認知」と呼んでいます。

抽象化したことは展開・応用が効くので、世の中の出来事やトレンドを社内に置き換えて考えてみましょう。「社内の人だったら誰が該当するだろう? どうするだろう?」と妄想してみるのです。それによって、社会と社内の共通点/差分の双方が見え、自分たち独自の強みがあぶり出されていくそうです。

「身近にいる“実はすごい人”を見つけるのもいいですね。仕事の場では見せないけれどプライベートではすごく面白いとか、あとは変な趣味を持っているとか(笑)。そこを掘り下げていくと、記事のネタが見つかってきます」(平井さん)

大手メディアではなく自社だからこそできる、読み応えある記事を作る

実際ネタを思いついたら、それを記事にします。その時のコツは、「コンテンツの価値を利他的に組み立てる」こと。利他的とはすなわち「他人がやらなそう、面倒くさがりそうなことをやってみる」ことです。

例えば、「現場視点で語ること」が利他的価値になり得るのは、マスメディアによる第三者目線より、張本人から直接聞いたり語ったりしてもらうことのほうが、ここでしか知り得ないリアルな実情が一次情報として発信できるからです。

同じく「暗黙知を語ること」は、今まで誰もまとめてこなかった知見を広く伝えることで、世の中の役に立つ価値になります。

『日経WOMAN』で紹介された株式会社フィラメント チーフエグゼクティブアシスタントの小川英恵さん(左)。右は平井さん。小川さんはフィラメント社外のエグゼクティブの業務サポートも担当。大手IT企業にも在籍するパラレルワーカーでもある。

QUMZINEの記事が『日経WOMAN』に掲載されたそもそものきっかけは、「ダイヤモンド・オンライン」で紹介されていた「オンライン秘書」という記事でした。

コロナ禍でテレワークが進んだことでオンライン秘書という働き方が急増しているという内容ですが、フィラメントの小川英恵さんは、コロナ禍になる以前の2017年からずっとオンライン秘書をしています。こんな「レアな先駆者」が身近にいるならインタビューしない手はない! というところから最初の記事が始まりました。

「先ほどお話した“メタ認知”ですね。その後「秘書シリーズ」として4名のオンライン秘書の方にインタビューをして、個人を深堀りした記事を掲載しました。それが『日経WOMAN』の目に止まり、取材・掲載に至ったという経緯です」(平井さん)

メディア映えする外向きの有名人でなくとも、会社をバックオフィスで支えているすごい人は、実は社内にたくさんいます。こうした人たちをじっくり取材して記事化すると、取材対象者個人のブランディングにもつながります。

そして、届けたい相手に読みたいと思ってもらえる記事を作るために不可欠なのが「手間」。

上記は「当選確率の低い『一万円選書』に当選した」というレアな体験をとことん掘り下げた記事です。Twitterなどで「一万円選書に当選した」といった投稿は見かけますが、ここまで細かく徹底的にその経験を語っている内容のコンテンツはなかなかありません。

面倒で手間がかかることを言語化するからこそ「読みたい」「役に立つ」と思ってもらえる記事になります。当たり前すぎて誰も書かないことでも、ひと手間もふた手間もかけて利他的にまとめあげることで、より多くの人が読んでくれる記事になる、と平井さんは語ります。

「誰に読んでもらいたいのか」を具体的にイメージすることで、記事内容も届け方も変わる

では、記事をどうやって読者に届ければいいでしょうか。

まずは、記事を書き始める前に、ターゲットとなる読者が多く集まるチャネルは何かを事前に想定して、どこで強く告知するかのアタリをつけてみましょう。Twitter・Facebook・LinkedInといったSNSにはそれぞれ特徴があるので、「このSNSにいる、こういう人に記事を届けたい」という具体的なイメージを持つことが重要です。

記事執筆で大切なのは「この記事を誰に読んでもらいたいのか」をとことん具体的に想像することです。「こういった属性」というだけでなく、「この人に」と具体的なイメージを持ちましょう。

そこまで想定して記事を書いたら、次は「あなたに読んでほしくて書きました」と告知あるいは本人にDMすることも大切です。記事ごとに、どのチャネルで届けたいのかを想定して、告知の戦略を練ります。

記事が公開されたら実際にどのチャネルに深く届いたのかを振り返り、想定が当たったかどうかを分析してください(後述)。

加えて、noteでの発信を継続して、アクティブな話者であることをアピールすることも大事です。発信頻度が不安定だと「更新が止まっているけれど、このメディアは終わってしまったのかな」と読者に心配されてしまいます。それではブランディング的にマイナスでしかありません。

自社メディアを育てるための2つのKPI

QUMZINEのKPIは、2つの切り口で立てているそうです。

1つは短期的なKPI。これは記事単位の目標になります。前述した通り、記事ごとにどのチャネルで届けたいかを想定して告知の戦略を作り、記事公開後に実際にどう届いたかを振り返って、想定が当たったかどうかを分析しています。

もう1つは長期的なKPI。これはメディアとしての目標です。メディアを運用することで自社ブランドを強化することは可能ですが、長期戦は必至。平井さんによると、メディア運用によるブランディング効果は忘れた頃にやってくる、という前提を社内で浸透させるといいそうです。

ブランディングという目線で考えると、属人的で再現性の低いSNS流入に振り回されるより、検索流入を土台として一定数まで増やすことが大事なのだそう。そのためには、記事をコンスタントに出し続け、検索でいつでも引っかかる状況を保つことが大切になります。

Google経由で記事が読まれるようになると、放っておいてもPVはある程度伸びるようになります。記事をたくさんアップしてGoogleに認識させることで、外部メディアの目に留まりやすくなり「取材させてほしい」と声がかかるようなことにもつながります。

「noteはSEOに強いので、検索で引っかかり続ける、勝ち残る記事を作りやすいというメリットもありますよ!」(平井さん)

振り返り記事でメディアとしての存在意義を再確認する

QUMZINEは、マンスリー・1周年・2周年といった節目で「こんな記事が人気だった」という振り返り記事を作成しています。自分たちの書いた記事を振り返ることで、自社の「ビジョン・ミッション・カルチャー・ポリシー」に沿ったものになっているかを客観的に確認することができます。

日々更新を続けていると、ひとつの記事という「点」でしかものを見られなくなってしまいがちですが、振り返り記事で時間的な区切りをつくることで、記事を「群・塊」の状態で見ることができます。すると、長期的プロジェクトであるメディア運営の中で、モチベーションが下がってしまう時も、自分たちの理念に立ち返ることができ、目的を見失わず継続しやすくなるそうです。

フィラメントはコンサル会社なので、メディアは本業ではありません。「では、なぜメディアをやっているのか?」というところに立ち戻るためにも、振り返り記事が役立っています。

まとめ

メディア運用によるブランディング効果は、記事の「種まきと水やり」が大事。これを繰り返していくなかで、芽が出ることもあるし出ないこともあるけれど、なによりも大切なのは記事を書き続けることだ、というのが今回の学びでした。しっかりと結果を出しているQUMZINEですが、平井さんは最後に、次のように締めくくりました。

「僕らもまだまだブランド力がないので、記事数を増やしていかなければいけない状態です。自社のことを好きになってもらうには、一定のコストと時間をかける決意と意志が必要。noteを通して、唯一無二のブランドが確立できるよう頑張ります」。

text by 三浦良恵

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