noteでクリエイター巻き込み型企画を成功させるには?「カタリベ大日本市」の舞台裏
自主お題企画などのクリエイター参加型の取り組みが増えています。
また、そのようなクリエイターとの共創の場をつくり盛り上げるような企画を検討している法人もいらっしゃるでしょう。
一方で、実際に応募が集まるのか、クリエイターとよい関係が築けるのか不安を感じて、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
そんな中、中川政七商店さんが主催する展示会「大日本市」での、noteクリエイターを巻き込んだ「カタリベ大日本市」企画では、予想を超える80人もの応募が集まり、熱量の高いクリエイターとの共創を実現しました。なお「カタリベ」とは、工芸メーカーの製品の魅力を世の中に「届ける人」のことです。
ここでは、8月5日に開催された「note proミートアップ」イベントの内容を元に、「カタリベ大日本市」を成功させるまでの舞台裏を紹介します。
「大日本市」がなぜnoteでの発信をはじめたのか
大日本市は2020年2月より中川政七商店が開催している合同展示会です。「日本のいいものと、いい伝え手を繋ぐ」をミッションとする産地支援事業で、工芸を中心とした日本各地のものづくりメーカーが集まる場所を提供しています。
その裏には創業300年の老舗・中川政七商店の「日本の工芸を残したい」という強い思いがあります。
初回の「大日本市」には、52ブランドが参加。約1900人の来場者が集まりました。とはいえ「大日本市」は本来、BtoB(バイヤー)の事業です。そのため同事業はずっとメーカー&バイヤーの閉じた環境で行われていました。
直接展示会に来られないバイヤーだけでなく、日本全国の一般の人たちにも、いつでも日本のいいものに出会ってもらえる場所をつくりたい。その思いから、大日本市の公式noteもスタートしました。
当時からnoteの運営をしている大日本市課の岡本恭法さんは次のように話します。
「大日本市は、基本的に工芸メーカーとバイヤーの中でしか認知されていない。そこに危機感を持っていました。大日本市と一般の方(カスタマー)で双方向に対話ができる機会を作りたかったのです。いずれは、多くの人と一緒に大日本市を楽しむコミュニティのような場所をつくりたいという構想も、最初から描いていました」。
noteクリエイターを巻き込んだ「カタリベ大日本市」の企画が本格的に動き出したきっかけは、2020年11月にオンライン展示会を開催したことでした。パンデミックの影響でオンラインの開催となった結果、3つの課題が浮き彫りになったといいます。
リアルにモノを触ったり体験しないと伝わらない部分がある
作り手だけの話では一方通行
生活者の反応を知ることができない
自分たちが発信するコンテンツだけでは、どうしても一方的なお知らせになってしまう。より多くの人に工芸の魅力を届けるために、伝え方を変えられないか? と模索する中で見つけたのが、noteで2020年末に開催されたお題企画「# 買ってよかったもの」でした。
自分自身もこの企画に参加してnoteクリエイターの熱量を感じた岡本さんは、「大日本市」にもnoteクリエイターを巻き込むことを思いつきます。ここから、noteを活用した「カタリベ大日本市」が生まれました。
noteを活用した「カタリベ大日本市」の誕生
「カタリベ大日本市」では、「いい商品=工芸品」と「いい伝え手=バイヤー」をつなぐ「カタリベ」に大日本市出展者の商品を使用してもらい、率直な感想をそれぞれのnoteアカウント上で投稿してもらいました。
投稿作品は大日本市のアカウントでもマガジンにまとめ、展示会ではカタリベのコーナーも設置。会場のもっとも映えるエリアにカタリベの投稿作品を印刷したポップを作り、noteに飛べるQRコードも掲載。展示会ではカタリベスペースの写真をSNSに投稿する来場者も多く、人気ブースのひとつとなりました。自身の文章作品がリアルなものとして来場者の目に留まり、とても喜んでくれたnoteクリエイターが多かったそうです。
また、カタリベのnote記事で商品に惹かれた来場者が、各出店メーカーブースに訪れる流れもできました。来場したバイヤーは、カタリベという第三者目線の紹介を経て、メーカー担当者と話すことになるので、自然と会話が盛りあがり、商品への深い認知や販売につながりました。
そこには参加メーカー・カタリベ・来場したバイヤー、三者それぞれの満足感につながる「三方よし」の姿勢がありました。
今回のカタリベ大日本市は、以下の3つのステップで進められました。
カタリベの募集、選定
カタリベに、使用した感想を投稿してもらう
投稿を展示会や公式マガジンで活用
当日までの準備期間に、岡本さんは実際にどのような取り組みをしていたのでしょうか。
工芸品の良さは、実際に使ったことのある人にしか説明できません。使用体験を通して感じたことを、そのままクリエイターにnoteで語ってもらう構成になりました。
「カタリベ」は、プロと、一般公募の二段構成にしました。
プロのカタリベは、大日本市から執筆依頼をした6人。一般のカタリベは、noteで募集しました。
驚いたのは、Twitterとnoteで80人もの応募があったこと。
「20人くらいくればいいかな、と思ったので驚きました。募集要項に『愛してやまないものは何ですか?』と書いたら、予想を上回る熱意あるコメントが寄せられ、圧倒されました」
「フォロワー数ではなく、モノへの偏愛度を重視して選びました。また、応募者のnoteを事前に読みこみ、熱量の高い方を選ぶことができたと思います。それぞれが道具への愛を熱く書いてくれました」
応募が多かった理由を振り返ってもらうと、
企画以前から大日本市noteで統一感ある発信を続け、信頼を得ていたこと
「好きな工芸について文脈を持って発信する場である」とアピールしたこと
が大きかったそうです。単なる宣伝目的の企業キャンペーンではなく、「好きな商品の作り手や大日本市と深く関わりながら、自分の創作力を活かして世に発信できる」「自分の”好き”を最大限表現できる」ことに期待したクリエイターが多く集まったのかもしれません。
期待以上に熱量のある記事が上がってきた
選んだクリエイターの熱量は、さらに想像以上でした。カタリベの負担が大きくなりすぎないよう、3000字以上の記事を一本と執筆のハードルをできるだけ下げて依頼したのですが、蓋を開けてみると、16名のカタリベに対し計36本の記事が上がってきました。なかには7000文字の大作を書いてくれた方もいました。
16人もいれば、一人くらいは使ってみたものの書き上げられない方もでてくるのではないかと想定していたようですが、蓋をあけてみると質、量ともに期待以上の投稿が集まったそうです。その熱意の裏には、担当者である岡本さんの丁寧なフォローがありました。
「カタリベとの連絡はslackでカタリベ専用のチャンネルを作ってやりとりしました。展示会だけの一時的なものではなく、継続的な関係性を築くことを前提にSlackのチャンネルを作ったのですが、カタリベ同士でも活発にやりとりしていただき、私が個別にやりとりするよりも『カタリベ』への愛情を持っていただけたように思います。
またカタリベ同士だけではなく、メーカーとカタリベの交流も生まれました。事前に希望したカタリベには、メーカー担当者と直接話せる機会をオンラインでセッティング。商品や産地の理解を深めてから、記事を書いてもらいました。」
「直接話していただくことで商品や作り手への理解が深まるだけでなく、メーカーさんへの指摘や改善点などものづくりに生かせる意見もいただきました。カタリベの投稿でも、単なる不満ではなく改善や改良につながる意見はぜひ素直に書いてくださいとお願いしました。メーカーさんたちも今回の企画をよりよいものづくりに役立てようとされています」と岡本さん。
メーカーにとっては作ったものを使ってもらえていることを実感でき、カタリベにとっては商品を作った人と直接交流できる機会があったことで、ポジティブな相乗効果を生みました。
カタリベの記事をきっかけに、展示会開催前から話題になり欠品が発生するほど売れた商品もあります。
「Narumiさんの記事だけで2万5300円もするスニーカーが7足も売れたり、鳥羽さんが書いてくれたホットパンや竹の箸は、展示会開始前に欠品になってしまいました」
今までで最もTwitterが盛り上がった
今回はSNSでも、同規模で過去6回開催された大日本市の中で一番の盛り上がりを見せました。主催の岡本さんが事前にメーカーやカタリベのnoteやTwitterをSlackで紹介し、関係者どうしの面識をつくっていたのも功を奏したようです。
「メーカーとカタリベがSNS上で直接コミュニケーションをとれると、そのまわりにいるフォロワーなどにしっかりした認知が広まっている実感がある」と岡本さん。
「2019年の展示会でのツイートは少なく、僕くらいしかツイートしていませんでした。今回は、来場したバイヤーさん、カタリベさん、メーカーさんがみんなツイートしてくれてうれしかったです。『プロのカタリベ』に選ばせていただいたスープ作家の有賀薫さんなんて、6時間くらい会場にいらして、すべてのブースを回って熱い感想をツイートに書いてくれました」
展示会当日に投稿されたみんなのSNSを通して、より多くの方に存在が知られ、フォロワーが倍増したメーカーもいました。展示会での一時的な効果ではなく、継続する好影響につながったのも、今企画の成果のひとつです。
今後の展望としては、関係者ひとりひとりのよさを、さらに伝えられるような設計にしたいそうです。カタリベも「プロ」「アマチュア」と分けず、ユーザーであるカタリベとメーカー、そして大日本市が同じ目線で工芸について語る場所を目指します。
「今回をきっかけにフォロワーが増えたカタリベもいましたが、これからはよりいっそう、参加してくれた人に明確なメリット、成功体験を作っていきたいと思います」と岡本さん。
クリエイター共創企画を成功させるには
最後に、今回の大日本市さんの取り組みをふまえて、noteのクリエイターと共創する企画の効果と、大切なポイントをまとめてみました。くわしくは最後のGoogleスライドにもまとめていますので、ぜひごらんください。
note共創企画のうむ効果3つ
企業とユーザーが直接対話できる
企業とユーザーが継続的な関係を構築できる
ユーザーが活躍できる場を企業を起点につくることができる
noteで共創企画をやってみるときの準備ポイント3つ
①文脈をつくる
どんなクリエイターに集まってほしいか? を具体的に想像してみましょう。そしてその人たちに、自分がどう見えていたいか、どんな関係性を築きたいかを考え、行動に反映しましょう。
<アクションの一例>
・自社記事にスキしてくれたクリエイターのnoteを読んでみる
・つながりたいクリエイターのnoteにスキをつけたり、マガジンでピックアップしてみる
・企画をおこなう背景・意義・想いを記事でまっすぐ伝えてみる
②信頼をつみあげる
共創企画をおこなう前に、しっかり自社アカウントを認知してもらいましょう。記事を地道に書きつづけ、読者との信頼関係を築いておくことで、企画に参加するハードルが下がったり、期待以上のすてきなクリエイターが集まったりするかもしれません。
<アクションの一例>
・自社アカウントの所信表明記事を書く/書きなおす
・自社や事業のビジョン・展望・存在意義・社員の想いを継続的に伝える
・note以外のSNSでもユーザー(顧客)との接点をもつ
③参加したくなる動機を用意する
クリエイターが「参加したくなる動機」をつくることがだいじです。物品・お金だけではなく、創作活動にプラスになるインセンティブを用意すると、noteクリエイターはよりいっそう魅力を感じてくれます。
<インセンティブの一例>
・自分のnoteがより多くのひとに読んでもらえる
・自分のnoteが、あこがれの人に届く
・新しい仲間や情報と出会える
・自分のnoteが書籍になったり、実物になって世に出る
noteで共創企画を実行するときのポイント3つ
①周知を徹底する
作品募集要項を告知記事にまとめてみましょう。告知記事を公開したら、他の記事やSNSなどでくり返しお知らせしましょう。社内への共有、拡散の協力依頼も大切です。
②関係性をつくり、継続する
参加してくれたクリエイターに対し、「参加ありがとう」「すてきな作品が読めてうれしい」という率直な気持ちを伝えましょう。募集期間中、審査前でも何度でも伝え、彼らの作品をnoteやSNSでどんどん紹介するのがおすすめです。
③自分たちの文脈に沿って企画全体をデザインする
普段の発信やブランドイメージと乖離しないよう、自分たちの文脈に沿って企画をデザインしましょう。期間中もファンのノリや空気感にあわせたコミュニケーションが大切です。
<資料>
【共創企画のポイントまとめ】note proミートアップ (大日本市さま)2021/8/5
noteの法人向けプラン note proの詳細はこちら
note proでの情報発信、活用方法に疑問や不安はありませんか?
担当者が、貴社の課題とnote proの特性を踏まえて、活用方法や参考事例をご提案いたします。下記からお気軽にオンライン個別相談をお申し込みください。
※note proご利用中の方は、運営サポートページよりお問い合わせいただけます