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会社の目指す姿を起点に、社会のトレンドを絡めた記事づくりでファンを増やす、マクロミルの戦略

株式会社マクロミル(以下、マクロミル)は、2000年にスタートしたマーケティングリサーチ会社です。現在は21カ国50拠点で事業を展開。主力事業であるリサーチサービスに加え、データベース事業やマーケティング支援、データ利活用支援などさまざまな事業を手がけています。

同社は、自社のノウハウを見える形でアウトプットしていこうと、2020年よりnoteをはじめました。顧客が必要とする情報を発信するだけでなく、社内のナレッジを共有する場としてもnoteを活用しています。

ここでは2022年11月18日に開催された「ミートアップ」の内容をもとに、マクロミルのnoteの運営方法について紹介します。

note pro ミートアップとは?
note proを活用する法人クリエイターのみなさんに向けて毎月開催しているイベント。法人クリエイター同士がnoteを運用する上での学びや悩みを共有したり、社外での横のつながりをつくることで、よりnoteを活用いただくことを目的にnote proユーザー限定で開催しています。


社員が気軽に発信できる場としてnoteを開設

マクロミルがnoteを開設したのは、新型コロナウイルスが広がりリモートワークが導入された2020年。社内外でのコミュニケーション量や外との接点が減るなか、自社ならではの強みを社外に発信する必要を感じたことがきっかけでした。広報が扱う公式情報だけではなく、社員が発信したい情報をカジュアルに発信できるプラットフォームが必要になり、noteの開設を決めました。

同社はいま、「リサーチ会社」から「マーケティング総合支援企業」になることを目標に掲げています。

広報担当の度會わたらい早苗さなえさんは、「そうしたパーセプションチェンジ(顧客からの企業イメージの変化)につながるようなブランディングのための情報発信サイトとしてnoteを位置づけています。そのため、各部門の現場のメンバーがお客様に届けたい情報があった場合、ブランディングにつながる要素を持たせるよう、広報のなかで調整をかけながら情報発信を行っています」と話します。

情報やデータを扱う企業ということもあり、SNSでのビジネス発信にあたってセキュリティ面での制約があったというマクロミル。そのため、社員がより情報を自由に発信できるよう、ソーシャルメディアポリシーを改定するなどベースを整えた上でnoteを開設しました。

みんなに興味を持ってもらえる
記事づくりを目指して日々工夫

マクロミルのnoteは、幅広い層の読者を抱えています。

「お客様や採用対象の方だけではなく、さまざまな方に読んでもらい、マクロミルのファンになってもらうという視点で情報を発信しています。そのため、一般の方にも伝わるよう、難しいマーケティング用語はみくだいて説明するなど、表現を工夫しています」(度會さん)

現在は、社外広報チームの社員3名と、社外&社内広報チームを兼務する社員1名が運営。月に1度編集会議を実施し、コンテンツの企画や数値の振り返りをしています。

運営の方針としては、大きく2つあるといいます。

1つ目は、会社の目指す方向性に沿ったテーマ設定にすること。限られたリソースのなかでなるべく質の高い記事を出すために、会社として自信を持って伝えられるテーマに絞って情報発信をしています。

2つ目は、できるだけ社会の潮流やトレンドに絡めた記事づくりをすること。身近な話題を扱うことで、業界外の方にも興味を持ってもらえる、読みやすい記事になります。具体例としては「VTuber」や「コロナとインフルエンザの同時流行」などの時事性の高い話題を起点に、データ分析をして読み解いた生活者意識を、わかりやすく記事にするなどです。

マクロミルの基盤事業はBtoBですが、BtoCの視点も大切にしているといいます。たとえば、同社はアンケートに答えてくれるモニターを全国で約1,100万人抱えていますが、そういったモニターの方に、「アンケートに協力した結果が記事になっている」ことを知ってもらい、アンケート回答へのやりがいを感じてもらうことも意識しています。

また、マクロミルはデータという無形商材を扱う企業のため、それだけをテキストにすると無機質な印象を与えてしまいがちです。そのため、記事のなかでできるだけ社員の顔を出すようにしているとのこと。執筆した社員の顔写真を入れた紹介文を末尾に入れたり、社員のインタビューをする際は必ず写真を撮って掲載したりしているといいます。

度會さんは「社員にインタビューする際は、部門が偏らないよう意識しています。役員のインタビューにおいても、さまざまな管轄の役員に声をかけるなど、バランスを見ながら運営しています」と言います。

魅力的なナレッジを持つ社員を発掘し、
伴走しながら社外に発信

当初の目的である社員自らによる発信を最大化するため、マクロミルでは、noteを開設したタイミングで社内イベントを2回開催しました。

1回目は、社員がSNSをビジネス活用しやすい環境を提供していくというメッセージを発信するため、ソーシャルメディアポリシーの改定について説明。そのベースの上で、社員が自由に情報発信できる場所としてnoteを開設したことをアナウンスしました。

そして2回目は、実際にnoteで記事を書いてくれた社員に登壇してもらい、noteを通じてナレッジ等を発信することでどんな成果があったかなどを書き手の視点で語ってもらいました。ほかの社員にも「noteを書いてみようかな」と思ってもらう狙いがあったといいます。

1回目のイベントではnoteの書き手を公募。そのとき応募してくれた社員のなかには、自身のアカウントをつくって記事を執筆しているメンバーもいます。

「しっかりとした期待どおりの記事を書いてくれるメンバーに関しては、広報の事前チェックを通さなくても大丈夫だと判断し、スポークスパーソン(代弁者)として自由に記事を書いてもらっています。記事を公開したら共有してもらい、マクロミルの公式noteのタイムラインに表示する設定をしています」(度會さん)

マクロミルがいま公開しているnote記事のほとんどは社員から寄せられたものです。

社内の協力を得るため、広報メンバーはそれぞれの事業部のすべての本部会に参加し、記事のネタを探しているそうです。また、社内ヒアリングの会話のなかで、「noteに書いてみませんか?」と声がけも行っています。「情報は料理の仕方次第。『それ、社外のひとにとってはTIPSになるかもよ?』とこちらが気づいて、本人に伝えてみることが大事」と度會さんは言います。

こうした活動をすることで、現在では社内各所から多数の記事ネタの提案がくるようになったとのこと。ネタ出しに困ることはあまりなく、むしろ会社として目指すメッセージのもと、どのネタをピックアップするかを注視しています。

「社員起点のアイデアはできるだけ大切にしつつ、広報メンバーで記事の内容や本数の調整をしながら運営しています」(度會さん)

noteで投稿した記事は、社員が見るイントラサイトで紹介しています。そうすることで、記事づくりに携わった社員のモチベーションの向上につながったり、ほかの社員の「自分も記事を書いてみたい」という意識づくりにつながります。このように、社員のエンゲージメントの向上に寄与できるような運用を心がけているといいます。

テーマごとに届け方を変え、
社内・社外からさまざまな反響を得る

マクロミルでは、テーマに応じて、大きく2パターンの手段で記事を届けています。

データやリサーチのノウハウ、セミナー情報など、事業に関するテーマの記事は、マーケティング部門が配信しているメルマガで既存顧客や潜在顧客に配信しています。

社内の取り組みや社員インタビューなど、「ひと」を切り口にしたテーマの記事は、社内広報チームと連携し、社内メディアに掲載して社員に届けています。

また、TwitterとFacebookも活用しています。データ分析したトレンドの情報などは生活者にも興味を持ってもらいやすいので、Twitterで拡散。一方、Facebookは多くのファンにフォローされているため、マクロミルの取り組みや社員の登壇情報などを投稿しています。

同社のnoteには、社内・社外ともにさまざまな反響があるといいます。社内では、イントラサイトからのリアクションが多くあります。

社外の場合は、営業など外部との接点を持っているメンバー経由で反応がもらえるそうです。とくにリサーチに関するTIPSや課題解決系の記事に対しては、「役に立ちました」「データがほしい」といった声をもらえるとのこと。

具体的な例として、度會さんは「従業員リサーチナレッジのマガジン」を挙げました。

「コロナでリモートワークを導入して、社内向けに社内満足度調査を実施する企業が増えました。大企業であれば社内調査のナレッジがありますが、中小企業はそうした蓄積がない場合がほとんどです。そこでマクロミルは、従業員リサーチに関するノウハウを伝える『従業員リサーチナレッジ』マガジンをはじめました。『どうやって調査や分析を行うか』を解説したnoteがよろこばれ、そこからいままで接点のなかった企業の担当者ともつながることができました」(度會さん)

改善点を見極めて社内にフィードバックするのが大切

マクロミルでは、記事のPV数、スキ数、読了率を定量指標として設定しています。記事の特性によってPVの傾向は変わってくるため、記事のテーマごとに目標の数値を設定し、月2回開催している企画会議の場で振り返りながら次に生かしています。

さらに連載形式のコンテンツは、PDCAを回すため、その都度報告書を作成しているといいます。運営チームでの振り返りだけでなく、協力してくれた社員に対してフィードバックとして伝えるためです。

「PV数やスキ数、読了率などの数値のほか、似たようなテーマの記事のなかでどのくらいの位置にいるか、前回の記事と比べてどう変わったかといったことを報告しています。その上で、よりよくするための改善点を抽出し、フィードバックするようにしています」(度會さん)

マクロミルでは、noteを読んでくれている顧客に向けて定期的に顧客満足度調査を行っています。自社のアンケートを自社で分析し、いま読者のニーズがどういう傾向にあるのか、どのサービスの認知が広がったかなど、自社のイメージの変遷をウォッチしているのです。それによってPDCAを回し、顧客とのよりよいコミュニケーションを図っています。

接点がないひとにも読んでもらえるメディアを

マクロミルの今後の展望は、まだ接点がないさまざまなひとに読んでもらえるメディアづくりです。

その1つのステップとして、noteコンテストを開催しました。テーマは「#誰かの役に立てたこと」。

度會さんは「直接のお客様である企業だけではなく、一般の消費者に対しても、マクロミルがアンケート活動を通してよりよい社会づくりに貢献するということを伝えたかった」と語ります。

広いステークホルダーに向けて発信しているマクロミルのnote。だからこそ届け方を工夫し、社員の顔を出すなど、読むひとの心に残る記事づくりを行っています。

マクロミルのnote運営において、参考になるポイントを以下にまとめました。

ポイント

・全社の広報ブランディング活動に、社員も自由に参加できる場所がnote
・会社の目指す姿を起点にしつつ、世の中の関心ごとをいち早くとらえて記事の切り口をつくる
・社外の反応を得るために社内の仲間の協力は不可欠。発信の価値を理解してもらうためには、運営が積極的にコミュニケーションを取りにいくことが大事

みなさんもぜひ、noteを活用したブランディングの参考にしてみてください。

interviewed by 野口 郁弥 text by 渡邊 敏恵

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