見出し画像

内定承諾率アップの鍵は「伝える相手」を意識した地道な発信

企業の情報発信は、情報の受け取り手である読者にとってよい影響をもたらします。例えばnoteを活用して人事の思いを伝えることで内定承諾率が上がったり、求職者だけでなく社員も会社への理解度が深まるなど、情報発信は採用活動にとって重要な意味を持つのです。

10月21日に開催された「発信はじめの一歩」シリーズ第14回目は、ITに強みを持つコンサルティング会社のフューチャー株式会社の岡田美佳子さんにご登壇いただきました。フューチャーがITやコンサルティングに興味がある人にとってよい環境であり、社内にいる魅力的な人やカルチャーをもっとアピールしたいと願う岡田さんが、情報発信において大切にしていることや、事業を前進させるための発信とは何か? ぜひ参考にしてください。

​カルチャーや社員の魅力をいつでも読める「記事」で発信

——情報発信を始めた背景を教えてください。
フューチャーの魅力をもっと伝える必要があると思っていました。採用担当はフューチャーにマッチする方に入社を決めてもらう、選んでもらうことがひとつの役割です。入社を決めていただく方がいる一方でやはり辞退される方もいます。理由を伺うと、働いている様子やフューチャーのカルチャーを求職者に伝えきれていないと感じることもありました。もっと理解してもらえていたら、選んでいただけたのではと思うことがあり、発信量を増やすことをチームに提案したことがはじまりです。

情報発信をしていくことは、社員のリアルな姿や社内のコンテンツをストックすることにもなります。情報を知りたいと思っている人に届きやすくなり、採用活動でも記事に助けられることが増えてきました。

——note proを選んだ理由は何ですか。
タイムリーかつ個々のニーズにあわせた多種多様な情報を伝えたいと思ったことがきっかけです。採用ホームページはリソースの関係もあり1年に一度の見直しとコンテンツ刷新をするので精一杯でした。オウンドメディアを別に作った方が、もっとフレキシブルに発信できるのではないかと考えました。

その際にいくつかのプラットフォームを検討して、最終的にnote proで「未来報」をはじめることにしました。自社で全部構築することも考えたのですが、noteを活用する方が予算面で小さく始めることができ、操作も直感的でわかりやすいことも魅力でした。

また、「未来報」ではフューチャーの選考中の学生・社会人に向けての発信であるとともに、社員も「伝える相手」として考えています。noteであれば、社員にとってもさまざまな情報やコンテンツの読み物として楽しんでもらいやすいと考えました。

最もよかったと感じるのは「目的」をはじめに決めたこと

——社内でnote proを使うまでのステップはどのようなものでしたか。
まずはチームで話し合い、「伝える相手」と「メッセージ」を決めていきました。はじめる前に他社でオウンドメディア運営をしている編集長の方にお話を聞きに行きました。その時に「伝える相手」と「メッセージ」はぶれやすいから立ち返れるように決めておくといいとアドバイスいただいたことを実践しました。

情報を受け取った人のその後を想像したときに、フューチャーのファンになってもらいたいと考えました。オウンドメディアという性質を考えても、当社を知らない人に見てもらうのは難しいですよね。興味関心が強い層のほうが届きやすく、行動変容につながると考えて「伝える相手」を決めていきました。

「選考中の学生や社会人」、「社員」を伝える相手と決めた段階で、PVはウォッチしつつも目標としないことも合意をとりました。伝える対象が少ないのでどうしてもPVは伸びにくいと考えたためです。採用としては当社に合う方に「フューチャーで働きたい」と入社を決意していただけることも大切ですが、人事の目線では社員に「フューチャーはいい会社だな。ここでこれからも働きたい」と思っていただけることも重要です。「伝える相手」は決して多くはない人数かもしれませんが、思いを込めた記事をきちんと「手渡し」していきたいという方針をチームで共有して始めることができました。もちろん、結果的に多くの方に広がっていくことは期待したいところではありますけどね。

運営を続けていくと、目の前の状況にばかり目が向き、ぶれそうになる時がありました。そんなときにも目的に立ち返り、コンテンツを見直す軸となっているのでこの2つを最初に決めておいてよかったと感じます。

——よく使うnote proの機能は何ですか。
アナリティクス機能をよく閲覧しています。日々の状況把握に活用していて、記事の反応をもとに定例会議で改善を目指します。読了率やスキ率の高い記事などの理由をさぐることで次の記事のヒントにもつながっています。

機能ではありませんが、開始するときにはnote pro利用企業向けのサポートサービスである「カウンセリング」を利用しました。担当のカスタマーサクセスの方が、考えていた方針に対して「いいと思います」と後押しをしてくださったことは、正解のないオウンドメディア運営をはじめるにあたり自信になりました。

——運用体制とフローを教えてください。
現在は、毎週30分の会議を実施し、ネタ出しや進捗確認を行ないます。他社のnote記事を拝見して感想を言い合うことで、自分たちの目を鍛えるトレーニングもしています。

当社の記事は本人が書く「執筆形式」と「インタビュー形式」のふたつに分けられます。採用チームのメンバーはいわゆるリクルーター業務がメインで、オウンドメディア専任の担当はいません。そのためチームを越えて多くの社員の協力を仰ぎ、地道に記事を作り上げています。

色々な方に記事作成をお願いしているので、スムーズに進められるようフローと承認ステップを決めています。必ず企画書を作成して、採用チームが編集者となってやりとりをかさね、最終的には別のメンバーが校正を担当します。また、誰でも書きやすいようにガイドラインを作成しました。書く時にはガイドラインだけ見れば、目的や注意事項なども理解できるようにまとめています。

会社からの発信として、公開できない情報がないか、誰かを傷つける情報がないかなどは特に注意して確認しています。そのため作成フローの後半では校正と承認ステップを設け、複眼的にチェックすることで質を高めます。公開までの体制とフローを確立しておくことで、誰でも執筆できる環境をつくっています。

定量的な効果測定をしつつ、定性としての「声」も大事に

——note運営の目標は何ですか。
選考中の学生・社会人の方の内定承諾率をアップさせることと、社員のエンゲージメントを向上させることです。

状況を把握する取り組みのひとつとして内定者アンケートに未来報の内容も盛り込んでいます。2020年1月に「未来報」をスタートさせているので、21卒、22卒の2年分のデータを比較できるようになり、認知度の高まりや効果を明示的に表すことができました。定性的には印象に残った記事から、「新人研修」に関連する記事や若手のリアルな声が反映されている記事が印象に残っていることもわかりました。

キャリア採用においては、人事が大切にしている考え方をまとめた記事がきっかけで内定を決めた方も出ました。情報発信を積極的に行っていなかったら、その方は内定承諾に至ってなかったのでは……と思います。

社員もリモートワーク中心となり、社内のことが体感としてわかりづらくなっている部分もあると思います。未来報の記事を通して、社員であっても新たな発見や気づきがあり、ますますフューチャーを好きになるきっかけを作っていきたいです。そのため、記事を投稿したら必ず「未来報Letter」と題したメールを全社配信し記事を社内にもアピールをしています。ここで制作秘話をお伝えすることもありますし、社内だから伝えられる+αの情報を執筆者からも伝えてもらっています。地道な活動によって社内においても「未来報」は定着し、あるときは採用の面接官から未来報の内容が面接で役に立ったとコメントをもらった時は、励みになりました。

内定承諾率アップにつながる様々なコンテンツづくり

 ——noteを使ってどんな効果を感じていますか。
新卒採用では内定承諾率があがり、50%を超えました。いろいろな施策の結果ではありますが、その中のひとつが「未来報」です。ひとつの目標だった承諾率50%を達成することができました。

そのほかには記事を出し続けたことでアーカイブが増え、選考を受けている学生や社会人が欲している情報に沿うものに出会いやすくなったと思います。人によって価値観は異なるので、さまざまな観点の記事をつくることが大切です。面接に来た求職者の自社への理解度が深まるのはもちろん、社員にとっても発見があったり、面接時に共有いただいたりと双方にとって良い状況になっていると感じています。

——今後、未来報でやりたいことを教えてください。
記事の幅や本数をさらに増やし、フューチャーの魅力やITコンサルタントの面白さを発信していきたいです。特に、働き方についてはまだまだ伝えきれていないと感じています。「個人の事情に応じてフレキシブルな働き方が実現できること」ひとつでも、さまざまな切り口から伝えていくことで、弊社の魅力を理解してもらいたいと思います。優秀な方に選んでいただけるように今後もコツコツと情報発信をしていきたいです。

——安心してnoteを書くことができる社内フローやガイドラインを提示することで、社員が未来報を作成しやすい環境となっていることがインタビューからわかりました。noteを活用した情報発信を通じて、社員に活動報告を伝える機会ができたり、採用活動のマッチング率が向上したり良い影響が出ているようです。本日はありがとうございました。

岡田 美佳子おかだ みかこさん
フューチャー株式会社
HR戦略グループ 採用チーム 採用広報担当
「未来報」編集長
2011年に人材アセスメント企業へ新卒入社。HRコンサルタントとして企業の選考プロセス改善に従事したのち、総務・人事担当に異動。2016年にフューチャーに転職し、新卒採用をメインに担当する。採用広報やコミュニケーションデザインの興味と外部ゼミ(さとなおオープンラボ)での学びも活かし、2020年1月より採用オウンドメディア「未来報」を立ち上げ、編集長として推進中。趣味はスノボ、登山、ライブ。「ひげだん」推し。
note:未来報|フューチャー株式会社

フューチャー株式会社
1989年に設立したITに強みを持つコンサルティングファーム。お客様の抱える経営上の課題を経営者の視点で共有し、お客様のビジネスの本質を理解した上で、実践的なノウハウをもとに先進ITを駆使した情報システムを構築することで課題を解決するITコンサルティングを提供。近年では、コンサルティング知見を活かして自らビジネスを行っており、グループ会社には、インターネット・メディア運営事業や、テクノロジー人材の育成事業などを手掛ける企業がある。

interviewed by 長橋輝 text by 村松美紀