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動画コンテンツをフル活用!サイバーエージェント採用人事が語る、採用広報で成果を出すためのオウンドメディア運営とは

オウンドメディアを立ち上げた目的や、運営を続けていくための成功ポイントについて、企業担当者にインタビューをするイベント「実践企業に学ぶ オウンドメディア成功の秘訣」。

今回は株式会社サイバーエージェント 新卒採用広報の責任者・田内たうち貴大たかひろさんがゲストです。現在、採用オウンドメディアの運用をはじめ、自社YouTubeチャンネルのコンテンツをメインに、採用成果を最大化させるための「採用コンテンツDX」プロジェクトに挑戦中だと話す田内さん。

採用広報で成果を出すためには、オウンドメディアをどのように位置づけ、運営していくべきなのか。具体例を交えながら、採用広報で成果を出すためのオウンドメディアの活用法について詳しくお話を伺いました。


自発的なインプットを促し、働くワクワクを最大化する採用広報

——サイバーエージェントさんは幅広い事業を手掛けているイメージです。新卒採用では、どのような職種を採用していますか?

田内さん(以下、田内) サイバーエージェントの新卒採用領域には、3つの採用コースがあります。営業や企画、人事、広報等といった幅広く活躍するフィールドがあるビジネスコース、多岐にわたる開発業務を担うエンジニアコース、そしてデザイン、映像等を手掛けるクリエイターコースの3種類。現在私が担当しているのは、最初に挙げたビジネスコースです。

——ビジネスコースでは、具体的にどのような取り組みをしていますか?

田内 「採用コンテンツを通して、採用成果を上げる取り組み」を強化しています。

成し遂げたいこと:採用コンテンツDX。【採用広報の成果】学生の自発的なインプットを醸成し、自社で働くワクワクを最大化する

田内 サイバーエージェント内にはたくさんの事業が存在するため、一度の会社説明会や社員面談では会社全体の魅力を伝え切ることが難しいんです。

そのため、採用コンテンツを通して事業領域の広さや仕事のやりがい、具体的な業務内容といった「サイバーエージェントという会社の幅と深さ」をまずは伝えていきたいと考えています。

——サイバーエージェントさんは事業や社員の数が多い分、それらの情報を漏れなく伝えるためのコンテンツ作りが必要であると。

田内 そうですね。それに最近の学生の視聴態度は、事前に指定されたコンテンツだけを見るのではなく、自分で興味を持ったコンテンツを回遊しながら視聴するスタイルに変化してきているため、学生の自発的なインプットを「動機づけ」するようなコンテンツも作成しています。

また、基本的には学生向けに発信しているコンテンツではあるのですが、事業やカルチャー、ナレッジを動画化することは「資産の蓄積」にも繋がるため、社員にもぜひ見てほしいんです。

特にサイバーエージェントには社員総出で採用をするというカルチャーがあるため、人事だけではなく社員全員が事業・カルチャーなどの会社について紹介できることが重要であり、そのような人材を育成するためにも採用コンテンツは一役を担っているといえます。

——なるほど。採用コンテンツ作りを強化して、学生だけでなく、社員にも情報を届けていると。

田内 おっしゃるとおりです。そしてそのような狙いで作った採用コンテンツは、採用HP内で、「Video Library」と「People」の2つのページに集約させています。

「Video Library」と「People」のページ

田内 「Video Library」のページには、学生の視聴習慣から考えて、平均10分程で見られる動画コンテンツを掲載。互いにミスマッチなく採用を進めるためにも、サイバーエージェントの大きな柱である「広告・メディア・ゲーム」の事業についてしっかりと理解してもらい、私たちの会社に魅力を感じてもらえるようなコンテンツを作成するようにしています。

また、もうひとつの「People」のページには、サイバーエージェントで働く社員のインタビュー記事を掲載しており、入社年度やガクチカ(学生時代に力を入れたこと)といったキーワードで自分に近い人を探せるようになっています。

活躍社員のガクチカや志望動機が載っているので、人事側は採用イベントなどで「サイバーエージェントを受ける前にぜひ見てみてね」と案内することができますし、学生側も自分に似た志向性の社員が活躍しているのを知ることで、入社後の自分をイメージすることができる。

採用広報としてこれらの取り組みがうまく機能していけば、学生の自発的なインプットを醸成しながら、サイバーエージェントで働くワクワクを最大化することができるはずだと考えています。

動画コンテンツを活用することで「仕事・カルチャー・人」を伝える

——実際に手応えを感じた企画について教えてください。

田内 主に2つ挙げられるのですが、まず1つ目は「CAMON!LIVE」という公開OBOG訪問の企画ですね。

内定者が皆さまからの質問にリアルタイムでお答えする公開OBOG訪問

田内 これはMC役の1年目の人事と現場の活躍社員や内定者の2人が、YouTubeのコメント欄に来る学生からの質問にリアルタイムでどんどん答えていく企画で、月に2〜3回お昼の時間に開催しています。

この企画の面白い点は、今学生が知りたい情報がリアルタイムで質問として届くので、採用広報は今後何を発信すべきかが明確になること。それをチェックするためにも使える手法であるなと感じています。

——双方向的なコンテンツとして採用にダイレクトに作用しながら、今後の採用コンテンツを作るためのネタ探しにもなるという意味では一石二鳥ですね。

田内 そうですね。手応えを感じた企画の2つ目は、私たち人事が選考対策を説明する動画で、これを見ることでグループディスカッションや面接の対策ができるというものです。

①選考への動機づけ(選考遷移率UP)、②選考基準からカルチャーを伝える

——このような選考対策の動画を、採用する企業側が出すのはかなり珍しいことですよね。

田内 実はこれには狙いがありまして、1人の学生が並行して複数企業の選考を受けている前提だからこそ、自社への応募を躊躇されるぐらいならば、自分たちから先に情報を出すことで、どんどん選考に進んでもらいたいという意図があるんです。

「面接の準備をしてから臨もう」と優秀な学生が応募を踏み止まってしまうほうがむしろマイナスで、「サイバーエージェントの面接ではこんなことを聞かれそうだからさっそく受けてみよう」という、応募するまでのスムーズさが採用においてはすごく重要だと思っています。

やはり今の学生を見ていると、気になる企業に対しては情報量を増やすために、YouTubeなどをかなり積極的に見ているんですよね。

なので私たちもできる限りコンテンツを増やして、彼らが取りに行ける情報を蓄えておかなくてはならない。先ほどもお伝えしたとおり、学生が自発的にインプットすることでサイバーエージェントで働くワクワクを最大化してほしいという想いから、今年は特にコンテンツ作りの優先順位を高めています。

また選考基準を伝えることは自社のカルチャーを伝えることだとも思っていて、選考対策の動画などで「ありのままのあなたを私たちは見たいからね」というメッセージを伝えることによって、互いのミスマッチをなくしていきたい想いもあるんです。

——人事の仕事と並行して動画コンテンツを作るのは大変だと思うのですが、これは“時代が変わった”ということなんでしょうね。

田内 昔に比べて今はインターネットでの情報が溢れていますし、学生の就活期間も長くなっている。つまりその分、学生はインプットする時間も悩む時間も以前よりも長くなったといえるでしょう。

私たちは、人が仕事を選ぶ上では「何を・どんな環境で・誰と」やるかという3つの条件がマッチすると入社する確率も入社後の定着率も上がると考えています。

そのため、どの企業に入社すべきか悩んでいる学生たちの背中を押せるように、「仕事・カルチャー・人」の3つの軸に沿って情報量を増やすようにしていますね。

アンケートとツールによる分析で、量より質の効果測定を

——効果測定はどのように行なっていますか?

田内 まずはSaaS系のツールを導入することで、採用HP内での回遊率や、学生がどのような順番でコンテンツを見て回っているかなどの定量的な情報を追えるようにしています。

例えば「People」のページでは、1人の学生が1回の訪問で平均11人の記事を読んでいるデータも取れているんですよ。

それに加えて、内定承諾者に対してアンケートを行なうことで、採用コンテンツの活用度や、実際にどのような情報が収集できたかといった定性的なデータも取るようにしています。

——オウンドメディアの効果測定では、動画の再生数や記事の閲覧数といった数字に目が向きがちですが、田内さんのお話からは学生一人ひとりに目を向け、彼らの思考や行動を深く観察している印象を受けますね。

田内 私たちは1つのコンテンツ配信によって「サイバーエージェントを知る学生が1.5倍に増えました」というような成果は求めていないんです。

それよりも、採用コンテンツを増やしたことで就活中の学生がより意思決定しやすくなったり、サイバーエージェントについての理解がより深められたりといった、あくまで「入社」に目線を合わせた採用広報を行なっています。

数字だけを追ってコンテンツをバズらせたとしても、一時的に応募者はプラスになるかもしれませんが、おそらく入社後のミスマッチに繋がるはず。なので効果測定をするのであれば、量ではなく質にエネルギーをかけたほうが良いと考えています。

採用コンテンツを発信する際には、デジタルとアナログの使い分けも重要だと思っているんです。求職者に必ず伝えたいことは採用HPやSNSといったデジタルを組み合わせながら全員に届けたほうが良いですが、パーソナライズ化した情報や動機づけなどはリアルな面談でするようにしています。

目指すはパーソナライズ化した採用コンテンツの提案

——今後の課題として、どのようなことが挙げられますか?

田内 例えばこの動画のあとに別のこの動画を見ると、よりサイバーエージェントについての理解が深まり、内定承諾に繋がりやすいというようなデータが今後取れれば、将来的にはパーソナライズ化した採用コンテンツが実現可能になるのではないかと考えています。

また、先ほどお伝えしたとおり私たちは「仕事・カルチャー・人」のマッチがキャリアへの期待に繋がると考えているため、今後もその3つの情報量を採用コンテンツとして増やすことで、着実にクロージングに繋げていきたいとも思っています。

採用コンテンツDX-Closing:意向度上げ

——ちなみに採用コンテンツにおいて、動画と記事などのテキストはどのように組み合わせるのが理想的でしょうか?

田内 私たちの採用HPでいうと、入口は動画コンテンツをおくのが良いと考えています。動画であれば、社員の空気感や会話の温度感なども伝わりやすいためです。

それらが伝わるような動画を軸にしつつ、会社への理解をより深めたい学生に向けて、「People」のようなテキストの情報を用意する。実際に会社への関心が高い学生は、「People」のページを読み込んでくれる傾向があります。

特にオンライン就活になってからは、私たちからも学生からも “オフ” の瞬間が見られないという課題があります。対面であれば、会社で働く社員同士がどういうコミュニケーションを取っているかが見えたのですが、オンラインの時代になるとそれが見えない。

なので動画を通して、実際に社員が話している空気感や会社の雰囲気が見えることはすごく大事なことなんですよね。私たちサイバーエージェントも4次選考まではオンラインで面接なので、そのような “オフ” の情報は動画でカバーするようにしています。

——なるほど。サイバーエージェントさんにおいて、採用コンテンツで顔出しを嫌がる社員はあまりいらっしゃらない?

田内 サイバーエージェントでは活躍している社員が採用に関わるカルチャーがあるため、採用に関わることがある種の誉れなんですよね。

なので私たちから社員に対してオウンドメディアへの出演を依頼したときには、みなさん「ぜひやらせてください」と快く受けてくださる方がほとんどです。これに関しては、このようなカルチャーを根付かせてくれた過去の社員たちに感謝しているところではありますね。

ということはつまり、オウンドメディアを始めるならば、同時に社内での文化作りも始めていく必要がある。学生からだけではなく社員からも「私もオウンドメディアに載りたい」「採用に関わりたい」と思ってもらえるように、社員一人ひとりがスターになれるような仕組みを作っていくことが大切なんでしょうね。

——最後に採用広報を担当する方々に向けて、明日からすぐにできそうなことを1つ教えてください。

田内 採用広報においては、人事や広報だけでなく、現場の社員も採用広報の発信に前向きになってもらうことが重要であると考えます。ですので私たちは日頃から、内定承諾者や若手へのアンケートで「入社の決め手になった社員」という項目を聞くようにしており、さらにそれを社員本人に必ずフィードバックするようにしています。

そのフィードバックによって、その社員の採用広報に対するモチベーションは上がりますし、それこそ活躍している若手社員と入社の決め手になった社員の対談で、そのエピソードをそのまま記事として採用コンテンツにすることもできると思うんですよね。

入社の決め手になった社員は、要は採用広報で前に打ち出すべき人材であり、求職者に対して届けるべき情報であると思うので、まずは実際にアンケートを取ってみて、その結果から着想を得てみるのはいかがでしょうか。

——これなら明日からすぐにできそうですね。田内さん、本日はお話ありがとうございました。

(敬称略)
▼この記事のもとになったイベントのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。

登壇者プロフィール

田内 貴大さん
株式会社サイバーエージェント採用戦略室 母集団広報責任者 

株式会社サイバーエージェント 田内さんのプロフィール画像

1996年7月生まれ。東京都出身。新卒でサイバーエージェントに入社、1年目から新卒採用に従事。母集団形成、クロージング、内定者育成業務を経験後、現職。入社3年目にバーチャル空間での入社セレモニーを責任者として担当。現在は、母集団形成領域では、自社・他社イベントの企画・登壇。広報領域では、採用オウンドメディアの運用をはじめ、自社YouTubeチャンネルのコンテンツをメインに、採用成果を最大化させるための「採用コンテンツDX」プロジェクトに挑戦中。

モデレーター
徳力 基彦
noteプロデューサー

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Interviewed by 徳力基彦 text by 風間夏実