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これからの図書館は、来てもらうだけでなく、情報を投げかけることも必要——稲城市立図書館の”にぎやかな”note #noteクリエイターファイル

東京都にある稲城市立図書館は、2020年5月からnoteを開始しました。きっかけはコロナ禍の影響で休館を余儀なくされたためです。公立図書館の役割として、利用者に、自宅で楽しめる内容を発信していく必要がある——そんな使命感のもと、紙芝居の動画やぬりえ、図書館の仕事の裏側や「音」を配信するなど、ユニークな情報を伝えています。

今回は、市の職員で、直営の分館、指定管理など6つの図書館の調整や連絡を行なっている石井美砂(写真・右)さんと、稲城市立中央図書館の運営受託をしているNTTデータの渡部輝(写真・左)さんに、お話を伺いました。


図書館との親和性を感じた

ーーまずはnoteを始めた経緯を教えてください。

渡部 稲城市立図書館は、公式ホームページ、Twitter、Facebookをはじめて3、4年たちます。ちょうど、さらに情報をもっと広い層に広げられないかと考えていたころに、noteの記事がTwitterで流れてくるようになりました。そこでnoteって何かな、と思い調べてみたところ、多くの作家の方が投稿していることなどを知り、図書館との親和性を感じました

同時に、noteを使ってる方は図書館についてあまり知らないのでは、とも思い、これまでの利用者とは別の、新たな層に触れられるきっかけになると考えました。

石井 公式ホームページ、Twitter、Facebookで情報を伝えていたのですが、「新たな層にアピールできるnoteというサービスがある」と提案してもらいました。確かに、noteは字数制限がなく、写真が載せやすい。それに読者層が今までと違うので面白そうだ、と始めてみることにしました。

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決裁のための企画書づくりが難しかった

ーー実際に、図書館でnoteを始めるための具体的なアクションは、どんなものでしたか。

渡部 公的機関なので、利用にあたって決裁をとる必要がありました。まずは稲城市に企画書を提出し、説明・提案しました。「TwitterやFacebookと何が違うの?」とおっしゃる市の方々に、noteが何かを説明することに工夫が必要でした。まずは、Facebookとは読者層が異なるという点。また、音声や画像の扱いが容易なため、情報が伝えやすいのも利点だ、ということをお伝えしました。

note開設後、一番ありがたかったのは、文藝春秋digitalの編集・運営担当者の村井 弦さんが、Twitterで公式noteのリンクとともに、稲城市立図書館で勉強していたことを書いてくださり、それが広がったことです。実際に市の方々も見てくれました。

ーーnote proを正式に申し込む前に、問い合わせをいただきましたね。

渡部 図書館でnoteを利用してるところがなく、ちょっと不安になり、問い合わせしてみました。すぐさま、親身にお答えいただいて、これならいけるかも、と思いました。

ーーTwitterやFacebookなど、ほかのツールとの使い分けはどうしていますか。

渡部 Twitterは全国的に「稲城市立図書館」に興味ある方が、Facebookは図書館を実際に使っている市民の方にご覧いただくことが多いです。一方、ホームページでは開催イベントなどを掲載しており、それぞれが補完し合っています。

noteは掲載したあとの編集も容易なため、スタートダッシュがしやすいですね。ホームページより作りやすく、Twitterの引用もしやすくて、使い勝手がいいです。

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石井 それまで、Twitterでバラバラに発信していたシリーズ物の読み物がまとめられるのがすごくいいですね。長文を載せられ、記事として読めるのはnoteならではです。1本の記事で、そのテーマがおおよそわかります。

また、ほかのSNSと違い、見出しが並ぶことで、自分の好きな分野のものから読めるようになっているのが面白いなと思います。過去の記事を振り返って読みやすいのもいいですね。

図書館の「音」(ASMR)で新しい世界を見せる

ーー音声コンテンツの「図書館の「音」(ASMR)シリーズ」がユニークです。この企画が生まれた経緯を教えてください。

ASMR(エーエスエムアール。アスマー、アズマーと読むことも)とは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、聴覚などによる反応を意識した音による感覚のこと。

渡部 静かなイメージがある図書館での作業の「音」をあえて掲載することで、図書館を感じてもらうのがコンセプトです。かねてから、ラジオなどの音声コンテンツをやりたかったんです。他のスタッフからも、「図書館の音という切り口が面白いのでは」という声があり、いけるかもと思って始めてみました。

ーー面白いですね。こういったアイデアがどうやって生まれたのでしょう?

渡部 きっかけとして一番大きいのは4、5月にコロナ禍で臨時休館になり、スタッフからアイデアを募ったことです。ASMRもそこで出てきたアイデアでした。中央図書館では現場で本のコーティング作業や、修理作業をしています。すると、作業の中で面白い音が出る場面が、けっこうあるのです。

「音シリーズ」noteの1本目への反響で、「普段は静かな図書館にまつわる『音』というのはかなり貴重じゃないか」というコメントがあり、手応えを感じました。

今までは興味の赴くままにとってたのですが、ふだん意識していない音もふくめ、これからも発掘していきたいです。

ーー「おうちでどうぞ」シリーズもユニークです。これが生まれたきっかけは?

渡部 4、5月の休館時に「自宅で楽しめる内容を発信していく必要がある」ということで、「稲城の昔ばなし紙しばい動画」「キャラぬりえ」などをホームページで配信していました。これをまとめれば、市の資料としても使いやすいのでnoteにあげてみたんです。

石井 これは良い取り組みでした。行政の関係者へ、休館中にどんな取り組みをしていたのかを伝える際に、noteでまとめたものを見てもらえました。noteを始めてよかったことのひとつでした。

ーーほかにもnoteを開設してよかったことや、反響とかお聞きしたいです。

渡部 業務中などに、何人かの利用者の方が「noteを見てます」などと声をかけてくださったりと、すぐに反応してくれました。メールなどでも、思った以上に反響がありました。

また、図書館内部で、それぞれの「音シリーズ」で「音声」を取ったり、記事を集めたりしているので、スタッフの間で記事を前提に自分たちの仕事を意識するケースも出てきました。

ーーnoteの運営体制・運営ペースについて教えてください

渡部 これまで、2名で記事を更新していました。10月からはさらに何名かに記事を書いてもらっています。個別の記事に決裁は必要なく、私がいいかどうか判断しています。今後は図書館の仕事の、具体的に踏み込んだところも書いていこうと思っています。

今後は、週1〜2回のペースで公開したいと思っています。音もですが、文章も充実させていく予定です。図書館の仕事はいろいろあるので、中の人が何をしているのかを紹介したいですね。

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電子的な媒体と、紙媒体の両方を使っていく

ーー図書館のページとして、課題はありますか? また、今後はどこを伸ばしたいと考えますか? 

石井 図書館にとって情報を伝えることは重要なことです。かつて図書館は、ポスターや、広報誌などの紙媒体を中心にしてきました。しかしだんだんと世間の人々の、情報を収集する流れが変わってきています。高齢の利用者も多いので、紙媒体も大切にしつつ、電子的な媒体も利用して、さまざまな情報を伝えていく予定です。

渡部 コロナ禍のため、図書館の利用者が少なくなりました。そこで、直接図書館に来てもらうだけではなく、こちらからも情報を投げかける必要を感じています。

図書館はサービス業でもあると考えています。ありがとうと言われたときや、必要としているものを提示できたときがうれしいですね

例えば、「誰々の○○という本をみたい」と言われても、ないときがある。
ときに、利用者さんご自身もあいまいなケースもあるのですが、それをたどって、お探しの本を見つけてあげられたとき、ご本人でも心に浮かんでいないことを、図書館で駆使して提示できたときが嬉しいですね。

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ーーどんな人たちに届くことを目的にしていますか?

石井 公式ホームページを見ていない、新たな層に届くと嬉しいなと思います。逆に、既存の利用者にも、noteを読むと稲城の図書館のことがわかるようにしたいです。

渡部 これまでnoteを見ていただいた人は、ウェブに興味がある方が多いのですが、今後は来館者でインターネットを使うような方にも声がけしたりして、もっとみていただけるように掲示したり、認知を広めていきたいです。

ーー今後の予定や、やりたいことなどはありますか。

石井 新しい媒体を手に入れたので、今までとは違った切り口で図書館を紹介していく試みは続けていきたいと思います。新たな企画も考えていますから、乞うご期待です。

渡部 今後は図書館という「箱」にこだわらない動きもしていきたいと考えてます。図書館には喫茶コーナーがあり、コーヒーのテイスティングイベントなども行ってきました。もみの木があるので電飾したり……さまざまな活動をつたえ、広げていく媒体として、noteを使っていきたいと思います。

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■プロフィール

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石井美砂(右) 稲城市教育委員会教育部図書館課奉仕係長
稲城市に入庁後、図書館課に配属され、「いつでも、だれでも、どこでも」利用できる図書館を目指して、稲城の図書館とともに歩んできた。愛読書は「赤毛のアン」。

渡部 輝(左) 株式会社NTTデータ デジタルコミュニティ事業部 PFI推進担当、稲城市立中央図書館統括管理者
2017年より現職。「民間の図書館員としてできることは何か」が日々のテーマ。最近の愛読書は太田靖久著「ののの」。

■企業アカウント紹介

稲城市立図書館【公式】
東京都稲城市立図書館のnote公式アカウントです。ご案内から図書館の中の様子まで、第一・第二・第三・第四・iプラザ・中央の全6館の”今”を発信します! 図書館ホームページはこちら→http://www.library.inagi.tokyo.jp/
note:https://inagi-city-library.note.jp/

interview by 水野圭輔 text by 野本響子

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